中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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京阪ホールディングス(9045)が買収防衛策を非継続 ー 独立社外取締役が過半数いない企業は継続は厳しいのが現状

京阪ホールディング(株式時価総額約4,000億円)の買収防衛策が本年の定時株主総会終結の時をもって更新期限を迎えますが、京阪ホールディングは5月7日に廃止することを公表しました。

https://www.keihan-holdings.co.jp/ir/upload/2021-05-07_bouei.pdf

同社の昨年の有価証券報告書で株主構成を見ますと、外国人が16%、金融機関29%となっています。金融機関の内訳は、都銀・地銀、国内機関投資家等に分かれるところ、その詳細は開示されておりませんが、大株主10位にあるのは、三井住友銀行2%、三菱UFJ銀行1%だけですので、国内機関投資家保有比率は20%以上はあるのだと想像します。

京阪ホールディングスの社外取締役比率は過半数ではないので、仮に本年継続更新するとした場合、かなりの数の機関投資家が反対することになるのだと思います。国内機関投資家が買収防衛策に賛成するための形式要件として、社外取締役比率過半数としているところが最近とても多いです。京阪ホールディングスの2021年3月末の株主構成は分かりませんが、仮に昨年と同じ手程度と想定した場合、継続更新した場合、株主総会で50%を少し超える程度の賛成を得られるかも知れませんが、微妙なラインかと思います。

なお、買収防衛策議案に対して機関投資家が賛同するポイントは前に次の記事で紹介させ頂きました。

ところで、京阪ホールディングスのプレスリリースの中で、次の記述が興味深いです。

当社は、社内に常設組織として「コーポレート・コミュニケーション委員会」を設け機関投資家の皆様との日常的な対話を促進する一方、当社株式の大量買付行為をおこなおうとする者に対しては、その是非を株主の皆様が適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見等を開示し、株主の皆様の検討のための時間の確保に努めるなど、金融商品取引法会社法、およびその他関係法令の許容する範囲内において適切な措置を講じ、引き続き当社の企業価値・株主の皆様の共同の利益の確保に努めてまいります。

買収防衛策は廃止するが、コーポレート・コミュニケーション委員会という組織を設けて、そこで買収防衛にかかる方策などを議論するようです。最近は、サステナビリティ委員会というようなESGを社内横断的に議論する委員会を設置する会社も増えているように聞いていますので、それも視野に入れた委員会の位置付けなのかも知れません。

買収防衛策は機関投資家の賛同を得るのが難しいので廃止はするが、その一方で、敵対的買収リスクや数パーセントの株式を取得して会社に物申す株主は確実に増加していることから、やむなく買収防衛策を廃止する企業はこのような委員会を設置して、今後も継続的に買収防衛策の施策を議論していくことが大事になるのだと思います。