中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

イギリスが外資規制を強化 ー 海外の外資規制に比べて日本の外資規制はざる法

ここ数日、ストラテジックによる文化シャッターに対する株主提案の記事を書いてきましたが、本日は話題を変えたいと思います。

5月28日の日経新聞に「英、外資の買収規制強化」との見出しの記事がありました。イギリスが中国企業を念頭に通信などの重要分野への投資規制を強化するという内容です。新聞報道ですので、法制の詳細までは不明ですが、報道の限りですと、人口知能、防衛、通信といった17分野に海外企業が投資する場合に事前の届け出を要し、違反した場合、グローバルの売上高5%か1,000万ポンドのいずれか大きい金額を課すようです。

外資規制は、ブログでも何度か取り上げていますが、日本では昨年に外資規制が強化され、コア業種の企業の株式を純投資目的以外で1%以上取得するなどの一定の場合、事前に財務省等への届出が必要になっています。CVCキャピタルによる東芝の買収報道があった時に本件がどう扱われるか話題になりましたが、案件が穏座したので判断の機会がなくなりました。現在、世界では外資規制の強化の動きにあります。

一方、日本の外資規制はどうかというと、効力が弱く、事前の届け出が必要にもかかわらず海外投資家が市場で株式を取得した場合、その取得の効力を無効にしたり、取り消すことはできず、わずかな金額の罰金刑があるのみです。欧米の外資規制に比べて非常に規制の効力が弱いという欠点があります。

最近の報道では、中国のネット大手のテンセントが楽天の株式3.5%を取得するに当たり、それが純投資目的ではなく、事前審査を経ずに取得されたということで政府が「大変だ」と騒いでいる旨の報道がありました。日本の外資規制は、ある意味「ざる法」とも言えます。米国の場合、審査を違反した株式取得行為を取り消す等の強い効力を持つと言われています。

もっとも、このような騒ぎに対して、楽天三木谷社長は「何をそんなに大騒ぎしているのか全く意味が分からない」ということです。政府が3%を取得されてオロオロするのであれば、もう少し規制を強化することを考えた方がよいでしょう。しかし、規制を強化したい経産省と規制を強化して海外マネーが日本市場から離れることを懸念する金融庁との間で綱引きがあり、難しいようです。

いずにせよ海外の機関投資家の方々にアドバイス出来ることは、「日本の外資規制はたいした規制効力はないので、純投資目的以外で1%以上の株式を市場で取得することは、レピュテーションリスクとわずかな罰金リスクを気にしないのであれば、何ら躊躇することはない」ということです。

ところで、コア業種に認定された日本企業は、自社の営む事業の全てがコア業種という認定を受けているわけではないということは理解しているのでしょうか。