テレビ東京のビジネスオンデマンドを有料視聴しており(月額500円)、昨夜のワールドビジネスサテライトでジャパンディスプレイ(5740)の第3四半期決算説明会資料の紹介がありました。ジャパンディスプレイとは有名な中小型液晶パネル大手企業です。
この会社のホームページにも掲載されているのですが、2020年度第3四半期決算説明資料にある「戦略方向性」について、26ページの資料があるのですが、とても面白いことにA4枚のパワーポイント資料に1つの言葉しか書かれていないのです。決算説明会資料は次のURLのとおりですが、資料に書かれている言葉は次のとおりです。
https://www.j-display.com/ir/library/pdf/Presentation-Slide_20210210_01.pdf
- GAME CHANGE PersonalTech企業として 新たなJDIへ
- 当社の現状
- 世界トップクラスの技術
- 世界トップクラスの人材
- 世界トップクラスの顧客信頼
- にもかかわらず、長年の赤字体質
- この現状を打破するには何が必要か
- 1. 原点回帰 社会価値・顧客価値の創出は当社の存在意義
- 2 唯一無二
- 3 抜本改革
- 徹底的なコストコントロール
- 身の丈経営
- 「3倍」のスピード
- 販売価格の適正化と製品ミックスの改善
- これらの変革により、2021年度第4四半期のEBITDA黒字転換を図る
- 4 事業転換
- 当社が長年培ってきた世界トップクラスの技術を新事業の基盤に
- ディスプレイを超え
- 既存の事業モデルを超え
- 技術の進歩は人間に寄り添うものであるべき
- 人々の生き方をより豊かにするPersonalTech企業へ
- 今までにない発想と、限りない技術の追求をもって、人々が躍動する世界を創造し続ける
- 独自のキーデバイスを軸に、サービス、ソリューション、プラットフォーム等を2021年中に複数事業化小規模でスタートし、成功に応じて迅速に事業拡大
- ビッグデータを用いた事業展開も視野に
- 唯一無二の技術 唯一無二の顧客価値 唯一無二のPersonalTech企業
上の言葉が1枚に1つずつ資料のど真ん中に書かれているだけです。以前からこうなのか知りませんが、なかなか面白い説明会資料です。はじめてみました。
将来の事業戦略は投資家にとって投資のモノサシとして重要ですが、資料に細かいことを盛り込みすぎている資料も良く見かけます。それよりも、ずばっとシンプルに記載しているもよいように感じています。ジャパンディスプレスも資料はシンプルですが、説明会で社長が自分の言葉で語るのでしょう。勿論、この資料に書かれている言葉で説明が終わるとなると、さすがにこれではあまりに抽象的でまずいとは思いますが。
そもそも5年先の事業戦略など精緻に描いても、5年後のことなど誰も予想できないのであって、そんな先のことを鉛筆をなめて詳細に書く意味は正直乏しいと思います。私は仕事上、欧米の企業数社の四半期決算を定期的に分析していますが、欧米企業の将来見通しの記載は非常にシンプルでです。骨太の戦略の方向性がずばり書いてあるだけで、将来見通しに関する細かい具体的な数値はざっくりと書いてあるか、もしくは書いていないケースが多いような印象を持ちます。
サラリーマン社長の場合には任期が決まっているので、具体的な数値なり細かいことを開示したいインセンティブがあることは良く分かります。しかし、一方、任期のないオーナー社長の企業の場合には、社長は10年、15年と長期で事業戦略に責任を持つわけなので、あまりに詳細なことは語らずに定性的で結構ですので、大きな事業の方向性を語ることで足るように感じます。中計では大きな方向性を描き、それを説明会で社長の言葉で語ることで、投資家の心に響くかどうかがポイントだと思います。
ということで、このジャパンディスプレイの開示を1つの参考にしてみてはいかがでしょうか。