中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

中長期投資としての銘柄分析:ベントナイト大手のクニミネ工業(5388)- FY20.Q3決算

クニミネ工業が1月29日にQ3決算を公表をしました。既に上方修正を公表していたので29日の発表による市場へのインパクトはあまりなかったかと思います。直近でのブログ記事は次のとおりです。

Q1~Q3の3ヵ月毎の数値を分析すると次のとおりです(単位は億円)。<売上高> Q1:31.2、Q2:31.6、Q3:43.1、<営業利益> Q1:3.0、Q2:4.1、Q3:8.9、<営業利益率>  Q1:9.7%、Q2:12.9%、Q3:20.7%と順調に回復しています。

同社は3つの事業セグメントに分かれていますが、主力事業であるベントナイトの内訳の売上高構成はFY19ですと、鋳造部門が35.0%、土木建築が31.3%、ペット関係が5.0%となっています。鋳造部門の構成比は3年前は40.8%ありましたが、最近は土木建築に比重をおいているようです。

鋳物関係でのリスクはやはり自動車のEV化です。昨日の日経新聞でも米ゼネラルモーターズが2035年にガソリン車を全廃し、ハイブリッドも手掛けず、全車種EV車にすることを発表しました。

日本勢はハイブリッドを頑張っていますが、どうも世の中はEV化の潮流にあるようで、これで市場が形成されると日本勢もEV車に舵をきるかも知れません。トヨタがハイブリットで世界トップですので、欧米勢がこれを追い落とすためにEV車を今後の主力にしようとしているようにしか思えないのですが、何とかハイブリッドも今後主力になれるよう日本の自動車メーカには頑張って欲しいところですが、もはや難しい気もします。

EV車となると、ガソリン車に必要なエンジンや吸排気系の部品が不要になるので、3万点の部品が1~2万点に減ります。当然鋳造品も減少し、クニミネ工業の鋳造部門にも大きなマイナス影響になると思います。ここはクニミネ工業も、(当たり前ですが)大きなリスクと感じている模様です(IR部門にメールで質問し交信)。

一方、クニミネ工業の扱うベントナイトは「千の用途」を持つと言われており、現在、同社は将来の事業化に向けていくつかの新規の取組みをしています。ガスバリア材料もそうですが、2年ほど前に日刊工業新聞が取り上げた電池材料の開発もあります。2019年11月4日の日刊工業新聞の記事は次のとおりです。。

【いわき】クニミネ工業は山形大学工学部C1ラボラトリーの伊藤智博准教授らと共同で、粘土鉱物「ベントナイト」の粒子自体が電気を通したり、電気をためたりする特性を解明した。新たな蓄電デバイスの材料になることが期待できる。今後、詳細なメカニズムの解明を進めていくとともに、2023年にも実用化へ向けた開発に乗り出す。ベントナイトは分子が規則的に並ぶ性質を持つ。研究グループはベントナイトの結晶の向きがそろうこと(配向)によって電気が流れる現象を見つけ出した。電圧をかけることによって配向状態に変化が生じ、止めれば再び元と同様な配向状態に戻る。こうした一連の作用が、粘土鉱物が電気を通し、ためることに寄与していると想定している。これまで粘土鉱物が電気を通すことは知られていなかった。これまでの実験で、粘土鉱物を分散液の状態にしたところ、一つのセルで1ボルト程度の電気を流すことができた。電解液としての価値が見込まれる。自然乾燥状態では電気をためる傾向があるため、誘電体としての価値があることも解明した。誘電率はチタン酸バリウムの倍以上という。今後は協力企業と一体となって電池材料として実用化を進める。「電池では電解液代替での利用、コンデンサーでは誘電体での利用など、既存の電池材料をしのぐ性能の実現が期待される」(クニミネ工業いわき研究所)粘土の構造特性が、新しいタイプの蓄電デバイスの実現につながる可能性を示している同社はベントナイトの採掘から加工、販売までを手がけ、土木・建築や化成品、農業などさまざまな分野へ製品を供給している。

その後、詳細な公表はありませんが、数ヵ月前に特許出願も公表され、開発は進んでいる模様ではあります。勿論成果になるかどうかは何とも言えません。山形大学の記事も注視しています。

クニミネ工業は時価総額が130億円程度でアナリストがほとんどカバレッジしていない銘柄ですが、個人的には注目している銘柄です。再生可能性エネルギーでは、風力発電が注目されていますが、地熱発電も今後進むと、ボーリング関連で土木関係でベントナイトの需要も伸びると思います。ベントナイト自体が環境と非常に親和性があるので、ESGという点でも潮流にのっている印象を持ちます。

ということで、今後の新規用途開発、再生可能エネルギー地熱発電原子力関係が同社の今後の成長のキーというところかと思います。