コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IRなどに関する実務ニュース

コーポレートガバナンス、M&A、企業価値、IR等の新聞記事について、投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

日本製鉄が東京製綱に敵対的TOB実施を公表 - 敵対的買収は今後確実に増えるのでは?

昨日報道のとおりですが、日本製鉄が東京製綱に株式公開買付(TOB)をすることを公表しました。

公表された「東京製綱株式会社に対する公開買付け開始に関するご説明資料」を読むとTOBの目的と背景として、「東京製綱の自律的な企業価値回復・向上の支援」とあり次のことが記載されています。

  • 東京製綱株式会社は、1887年創業のワイヤロープ製造における国内トップメーカー。コア事業であるワイヤロープ製造において、極めて高い技術力とブランド力を有しております。
  •  当社は、前身である富士製鐵当時の1970年より東京製綱に資本参加し、その後2001年に東京製綱から出資拡大の要請を受けて株式を追加取得し、現在は東京製綱の株式9.9%を保有する筆頭株主です。
  • こうした経緯から、当社は、東京製綱の原料メーカー・開発パートナーとして、長年にわたり協力関係を構築してまいりました。
  • 東京製綱は、近年、現在の経営方針に起因してその業績は悪化の一途を辿っております。当社は長年に亘る株主かつ事業上のパートナーとしての立場から対話を継続しつつ、現状の問題点を率直に指摘し、直近数年間の定時株主総会においては取締役の選任に反対を投じるなど、可能な限り警鐘を鳴らしてまいりました。
  • しかしながら、東京製綱は、本来の高い技術力とブランド力を十分に発揮すれば自律的な経営改善が可能であるにもかかわらず、これまで経営上の問題点に対して対応策を講じることができず、また企業価値の回復・向上策についての具体的な協議が進展しない状況に陥っています。
  • この状況をこれ以上放置し続ければ、東京製綱の株主、取引先、従業員を始めとするステークホルダーの利益をさらに害する恐れがあることから、当社は、東京製綱の株式追加取得を通じて株主としてのコミットメントを高め、企業価値の回復・向上に寄与することを目的として、本公開買付け(上限19.9%)の実施を決議いたしました。
  • 今後、当社は、東京製綱が独立した上場会社として適切なガバナンス体制を再整備し、東京製綱社内の人材により経営を再建することが望ましいと考えており、その実現に向けて、東京製綱との間でより踏み込んだ協議を行ってまいります。

東京製綱の競争力の源泉が毀損される可能性として、「東京製綱の業績不振及び財務健全性の悪化を招いた現経営方針及び業績悪化に対し経営方針の見直しを促さない現ガバナンス体制のままでは、当社は東京製綱を信頼に足る事業パートナーとみなすことが難しく、共同研究開発を継続することに支障をきたしかねない」との記載もあります。

1株当たり1,500円でTOB代理人大和証券となっています。東京製綱のプレスリリースには次のとおりです。

 本公開買付けの公表は、当社に対して何らの連絡もなく一方的かつ突然に行われたものです。当社といたしましては、今後、本公開買付けに係る公開買付届出書等の内容その他の関連情報を精査した上で、速やかに当社の見解を公表する予定です。株主の皆様におかれましては、当社から開示される情報に十分ご留意いただき、慎重に行動していただきますようお願い申し上げます。なお、本開示資料は、本公開買付けに関する意見を表明するものではありません。本公開買付けに関する当社の意見は、決定次第改めてお知らせいたします。

 日本製鉄と言えば、10年以上前にアルセロールミタルによる敵対的買収のリスクにより買収防衛策を導入した経緯(2年ほど前に廃止)がありますが、国内の同業を敵対的に買収するとは驚きです。

最近は、文具メーカー、外食や家具業界での敵対的買収も増えていますが、いずれもマイナーな業界ですが、日本製製鉄という日本を代表する業界での敵対的場買収が起こるとは、今後は敵対的買収は普通になるのだと思います。