中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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サンセイ(6307)と光通信の攻防(5) - 今後は光通信は遠慮なくサンセイ株を最大500,000株まで取得可能

サンセイと光通信の件でブログで掲載し、前回は次のとおりサンセイが買収防衛策のルールに基づき取締役会評価期間に入ったことを紹介しました。

今回、12月18日にサンセイは同社の独立委員会から、大規模買付行為に関する勧告書を受領し、取締役会の評価・検討結果が確定したことを公表しました。結論としては、サンセイの取締役会は、光通信によるサンセイ株の取得行為は、サンセイグループの企業価値及び株主共同の利益を著しく毀損する行為ではないと認め、対抗措置である新株予約権の無償割当は実施しないということになりました(サンセイは2020年3月末時点でサンセイ株式を19.80%保有)。サンセイのプレスリリースの該当する箇所を抜粋すると次のとおりです。

2. 当社取締役会における評価・検討結果
当社取締役会は、本プラン及び光通信株式会社から提出された大規模買付情報に基づいて、光通信株式会社による大規模買付行為の評価・検討を重ねてまいりましたが、光通信株式会社から提出された大規模買付情報が真実であることを前提とする限りにおいて、光通信株式会社による大規模買付行為が、当社及び当社グループの企業価値及び株主共同の利益を著しく毀損するものであると認められず、光通信株式会社による当社株式の大規模買付の目的が、基本的に長期保有を目的とした純投資のみであり、また、当社の経営方針を評価し、友好的な関係を維持する方針であることから、当社取締役会は勧告書に記載された独立委員会の見解を最大限に尊重し、光通信株式会社による大規模買付行為に対する対抗措置を不発動とすることを決定いたしました。当社は、今後光通信株式会社の投資動向及び事態の推移を注視してまいる所存であります。なお、上記1.(1)に基づき、当社取締役会において、光通信株式会社による大規模買付行為に関して独立委員会に対し再度諮問する旨を決定した場合には、適時かつ適切にその旨を開示いたします。

さて、これはどういうことを意味するのでしょうか?サンセイは買収防衛策を有しており、光通信がサンセイ株を市場内外で20%以上取得する場合には、サンセイに情報を提供するなどサンセイの買収防衛策ルールに従うこと、そして、光通信の株式取得がサンセイの企業価値を損なう場合には、サンセイは対抗措置(光通信保有株式比率の希釈化)を発動するとされています。

今回、サンセイが対抗措置を発動しないという判断をしたことで、光通信は20%を超えて、サンセイの株式を取得することができることになります。光通信は、サンセイ株式を最大500,000株取得することを予定しており、結果、持株比率は26.23%となるようです。今回のサンセイの決定を受け、光通信はサンセイ株式を今後買い増しを行うのだと思いますが、サンセイの12月18日の終値は476円でしたが、明日月曜日の値動きはどうなるでしょうか。

なお、今回のプレスリリースでは、最大26.23%までの光通信による株式取得を認めたのであって、経営権の支配までをサンセイは認めたとはどこにも記載されていないので、33.3%を超えてサンセイ株を取得するといったような事態になった場合には、対抗措置の発動の議論も出てくるかも知れません。