中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

中長期での株式投資のポイント - 個人投資家は投資先企業の参入障壁をどう分析するか

今年は、コロナの影響から、年内の仕事は残すところ来週いっぱいで終わりという方も多いと思います。証券会社に勤務の方は12月30日まで仕事だと思いますが、それ以外の業種では年末は年休取得を奨励する企業も多く、最終日の納会もないのではないでしょうか。

私は、先週はこれまで集中投資をしているある中小型株(株式時価総額120億円)の株式を買増ししたのですが、この企業の製品の用途がとても幅広く、高レベルの放射性廃棄物関連にもなるので、長期投資の観点から高レベルの放射性廃棄物について、新聞記事や関西電力のホームページ(たまたまです)で調べ、短期間でだいぶ詳しくなりました。12月18日の日経新聞でも核燃料について青森の中間貯蔵施設の記事がありましたので、近いうちにブログでも紹介したいと思います。

さて、本日は年末が近いこともあり、切りためた記事の読み直し、株式投資関連情報ノートの整理、銘柄の財務分析などをしていますが、過去に整理したノートで中長期での株式投資のポイントを纏めていましたが、これを紹介したいと思います。紹介といっても私が考えたものではなく、農林中金バリューインベストメントの奥野一成氏が「教養としての投資」で書いていることではあります。

奥野氏によれば、中長期投資での投資先企業は構造的に強靭な企業である必要があり、このためには、①付加価値の高い産業 ②圧倒的な競争優位性 ③長期的な潮流の3つを備えることが重要と言っています。同じようなことは米国の伝説的なファンドマネジャーであるピーター・リンチも指摘しているところです。

奥野氏のあげるこの3つの中で、特に強調しているが、②の競争優位性に関して「高い参入障壁」を築いていることです。参入障壁は、マイケル・ポーターの「ファイブフォース」でもあげられているところですが、次のようなことが参入障壁になるのだと思います。

  • 専門的な技術が必要
  • 事業に必要な初期投資が大きい
  • 規模の経済が働く
  • 法規制が厳しい
  • 参入に対して報復が予想される など

しかし、奥野氏のこの本の良くないところは、機関投資家であれば投資先企業のマネジメント層と面談をして経営陣に参入障壁を質問することが容易ですが、一般の個人投資家ではこれが難しいという点です。本では個人の株式投資を勧め、参入障壁の重要性を説きながら、個人投資家がどうやって参入障壁を把握するのか一切書かれていないのです。商売のために本を書いているので、奥野氏は「だから投資は当社にお任せください」ということ言いたいのだと想像をしますが。

では、個人投資家としては参入障壁をどう確認するかですが、私は投資先企業のみなららず、その同業他社を含めて四半期決算短信ニュースリリースに細心の注意を払い、特に財務数値を分析することにつきると思います。売上高、粗利益率、営業利益率には要注意です。参入障壁が崩れ、新規参入者が出てくるということは、売上高が減るという結果になり、また、広告宣伝費を増やすなど利益にも影響が出てくるかと思います。また、設備投資金額、研究開発費にも注意を払う必要があると思います。

このように四半期決算発表の都度、投資先企業及びその同業他社の財務数値をエクセルに纏め、細かく分析し、必要に応じてIR部門にポイントを絞り電話で鋭い質問をするということが個人投資家ができる参入障壁のチェックであると考えます。