中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

生保「物言う株主」に一歩 - 銀行とは違います

明日は会社四季報2021年1集新春号の発売ですね。私の場合は四季報オンラインを利用していますので(月額1,000円)、分厚い四季報を購入する予定はないのですが、銘柄を新規に探す時にはあの分厚い書面の方が探しやすいという利点はあります。

さて、今回は本日の日経新聞に「生保『物言う株主』に一歩」という記事がありましたので、これについて触れたいと思います。新聞記者はうまい見出しをつけるなと思いますが、私の実務感覚でも全くこのタイトルどおりと認識しています。

生保(生命保険会社)は過去は物言わぬ株主であったのですが、ここ最近は議決権行使基準が厳しくなり、投資先企業の株主総会議案に反対票を投じるケースも増えています。記事では2020年4月~6月の期間における生保大手の投資先企業への議案反対率が記載されており、日本生命が4.1%、第一生命が17.0%、明治安田生命が4.0%、住友生命が6.3%となっています。第一生命の反対率の高さに驚きました。

そこで、第一生命の議決権行使結果を調べてみました(同社のホームページに掲載されています)。すると、議決権行使の対象企業数ベースでの反対率が17.0%となっていました。議案種類別ベースでみると反対率は5.7%です。議案数全体が3,951議案あり、このうち227議案に反対したというものです。議案数で見るとそれほど衝撃的な数値ではないものの、反対議案数は多いといえます。では、反対率の高い議案は何でしょうか?

これも議決権行使結果に記載されているのですが、退任役員の退職慰労金の支給議案が13.4%の反対率で、買収防衛策の導入・更新議案の反対率が20.4%、取締役の選解任議案は9.9%の反対率となっています。機関投資家と同じく生保も買収防衛策議案は厳しく見ているようです。

これまで生保とは対話をしてこなかったという企業も多いかと思いますが、私の実務感覚では、機関投資家に準じた投資家として生保と対話をする必要性が格段に高まっていると感じています。大手生保の議決権行使基準をしっかりと読み、その上で対話をすることが重要です。ちなみに第一生命の議決権行使の考え方及び具体的な行使基準は次のとおりです。

ssc_001.pdf (dai-ichi-life.co.jp)

銀行の議決権行使基準も従来と比べてると段々と厳しくはなってきていますが、投資先企業(=融資先企業)に反対票を投じるケースは極めてレアなように思います。融資先企業の多くは、銀行で役員になれなかった人、役員の定年を迎えた人の出向先でもあることから、銀行が融資先企業に反対票を投じるということは考えにくいのだと思います。