コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

買収防衛策の導入・継続に向けて⑥ - 非継続とする場合の重要なポイント

本日は約20日ぶりにテレワークでしたので、定時で仕事を切り上げました。コロナワクチンの海外での承認を背景に日経平均株価が上昇し、本日の終値は26,809円で、来年半ばにかけ30,000円台に向かうという声も聞こえています。

過熱感もあるので、24,000円程度に下げる可能性もありますが、世界での金融緩和政策も続くので、盛り返すであろうというのが一般的な見方のように思います。企業の業績が下期から回復することを考えるとバリュー銘柄は沢山あるので、今は絶好の買いチャンスでもあるので、業種を広げて週末に株価がコロナで大きく下げた銘柄の分析・投資をして行きたいと思っています。

さて、前置きが長くなりましたが、本日は買収防衛策の導入・継続について最終回の第6回目になります。買収防衛策の継続のための取組みはこれまで紹介したとおりですが、やはり海外機関投資家や国内機関投資家の賛同を得るのはなかなか難しいのが現実です。独立社外取締役の取締役会に占める比率が過半数(例えば10名中、6名ということです)であれば、賛成の確率は高くなりますが、ベストなスキームや役員体制にしたところで、買収防衛策には反対票しか投じないという機関投資家も一定数存在します。議決権行使結果の個別開示を見ると賛成件数がゼロという機関投資家がいます。

とすると、株主総会での可決が期待できない以上は非継続(廃止)ということになります。この場合に非継続の東証への適時開示をする必要がありますが、この際の開示のポイントがあります。芝浦機械が2019年に非継続とした時のプレスリリース(2019年5月16日)の一部を以下抜粋します。

国内外の機関投資家をはじめとする株主の皆様のご意見や、買収防衛策を巡る近時の動向、およびコーポレートガバナンス・コードの浸透など、当社を取り巻く環境の変化を注視し、本プランの継続の必要性について慎重に検討を重ねた結果、2019年6月21日開催の第96回定時株主総会終結時の有効期間満了をもって本プランを継続せず、廃止することを決議いたしました。なお、当社は、本プランの廃止後も、引き続き当社の企業価値ひいては株主共同の利益の向上に向けた取り組みを進めるとともに、当社株式の大量買付行為を行なおうとする者に対しては、大量買付行為の是非を株主の皆様が適切に判断するための必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて取締役会の意見等を開示し、株主の皆様が検討するために必要な時間の確保に努める等、金融商品取引法会社法その他関連法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。

上のプレスリリースの中で太字の箇所がポイントです。4~5年前には廃止する企業のプレスリリースにこの文言はあまり見られませんでしたが、最近、非継続とする企業のほとんどがこのような文言を入れています。この趣旨は何かというと、買収防衛策は株主総会に議案としては上程しないが、今後も有事の場合には、買収防衛策で定めているのと同様の対抗措置をとりますということを公言しているのです。

2005年頃に経済産業省法務省が共同で作成した「買収防衛策ガイドライン」において、買収防衛策は「事前開示」が要件とされており、これを意識して、廃止はしますが、有事の時には現行の買収防衛策と同様の手続きを踏んで対抗措置をとりますよということを予め開示するのです。芝浦機械と旧村上ファンドの攻防の中で、芝浦機械はプレスリリースで波線まで引いて、たしかこのようなことを明確に主張していました。

これにより、後日、買収者より対抗措置の法的有効性を巡り裁判が提起された場合、会社は対抗措置はガイドラインの趣旨を踏まえた有効なものであると主張していくのです。もちろんこの文言が本当に裁判になった時に効力があるのかは不明です。判例がないからです。つまり裁判になった時にどの程度まで有効かは不明ですが、少しでも有効にするための材料にするということかと思います。

なお、1点注意すべきは、買収防衛策を非継続とした後に、このスキームを取締役会で決議してはいけません。決議すると開示義務が発生し、総会の承認を得ない買収防衛策を有するということで、これは機関投資家がもっとも批判するスキームとなります。エーザイの買収防衛策は取締役会決議で導入するタイプですが、エーザイでは社長以下の役員の賛成率が低いですが、これと同様の状況になります。

ということで買収防衛策について、本日を含め6回紹介してきましたが、これで終わりたいと思います。買収防衛策は今後、新聞報道などがあればまた取り上げていきます。次回からは株式投資関係や今週の日経新聞で興味深い記事がありましたので、これについて紹介したいと思います。