中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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買収防衛策の導入・継続に向けて④ - 国内機関投資家が賛成するためのポイント

前回は第3回目として買収防衛策について株主総会で国内機関投資家の賛成を得るための手続について、次のとおり紹介いたしました。

本日は第4回目として、買収防衛策議案が機関投資家の賛成を得るための買収防衛策スキームの留意点について大きな観点から説明いたします。

国内機関投資家が賛成するためのポイントとしては、買収防衛策のスキームが経営陣の保身のためのスキームでないことが明確になっている必要があります。企業価値を高める敵対的買収であるにもかかわらず、対象会社の経営陣が買収後にクビを切られるのを恐れ、つまり経営陣の保身のために取締役会の判断で対抗措置が発動されることを機関投資家はとても嫌がります。当然かと思います。

この「保身目的ではない」というためには、買収防衛策のスキームの入り口から対抗措置の発動までの各段階において、取締役会の恣意的な取り扱いが排除される設計になっている必要があります。

では、どういうスキームである必要があるかというと、それは各機関投資家が公表している買収防衛策に関する議決権行使基準を見る必要があるのですが、概ね次のようなことがポイントになります。

  1. 大量買付者に情報提供を求める期間が会社の都合により何度でも延長できる建付けになっていないこと
  2. 取締役会評価期間が会社の都合で何度も延長できる建付けになっていないこと
  3. 取締役会の発動で対抗措置を発動する場合、買収防衛策のルール不遵守の場合、または高裁4類型・強圧的二段階買付の場合に限定されること
  4. 独立委員会の委員は社外取締役又は社外監査役で構成することが好ましい
  5. 対抗措置は新株予約権の無償割当に限定されていること
  6. 取締役会における独立社外取締役の比率が高いこと など

以上は多くの機関投資家が賛成の条件とするものです。繰り返しますが、機関投資家によって詳細な基準は異なるので、上記の全てを必ずしも求めていない機関投資家もいれば、上記以外にも賛成の条件を設けている機関投資家もいるのでこれが全てというわけではありません。

以上の6つの事項の中で最近一番効果が高いのは、「6」の取締役会に占める独立社外取取締役の比率です。この比率が「過半数」(例えば取締役の員数が10名とすると社外取締役が6名以上であること。5名ではダメです)ということを賛成の前提条件にする機関投資家がこの1、2年で多くなっています。3~4年前まではここまで厳しくはなかったのですが、三菱UFJ信託銀行、りそなアセットマネジメントなどはこれを条件にしています。

過半数社外取締役が存在すれば買収防衛策の発動に至る各過程で外部の視点から公正にかつ合理的に種々判断されるということで賛成の条件にしているのです(実際には社外取締役も会社からお金を貰って生計をたてている以上、その会社から委任契約を切られるとお金が減るわけであり、また短期間で社外取締役をクビになったとなると世間体もあるので、真の意味で公正かつ中立な意見を期待することはなかなか期待はできないのだと思いますが)。

とここまでは知っている企業の経営者や実務責任者は多いと思いますが、買収防衛策の賛成を得る上で議決権行使基準で明示されていない重要なポイントがあります。

前述の形式的要件を満たしていなければ、それだけで「反対」という機関投資家も勿論存在しますが、形式的要件以外にあることを重視する機関投資家もいます。意外に知られていないというか、軽視されているところかと思いますが、これについては、次回説明したいと思います。