コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

ROEやROIC等の経営指標の目標値の有報での開示が一般的になりつつあります

本日は買収防衛策の導入・継続についての第4回目を書く予定にしていたのですが、新聞を整理する中で他に書きたい事項が出てきたので、買収防衛策は週明け前半に書きたいと思います。

11月26日の日経新聞有価証券報告書(有報)でROEやROICの実績や目標について開示する企業が増えており、3年前に比べて4割増という記事がありました。ROEやROICをアニュアルレポートや中期経営計画に記載する企業は従来から一定数ありましたが、有報という法定書類で開示するということは意味合いが異なります。有報に開示するということは経営トップとしてもそれなりの覚悟をもって開示しているのだと思います。

背景には、本年の有報から、記述情報の開示の充実が求められたことがあります。これまで有報で開示していなかった企業は、ROEやROICの開示について機関投資家からの要請が今後は強まると思います。

ROEの算出式は決まっていますが(厳密には分母の株主資本について、前期末と当期末の平均を使うか否かなどの細かい違いはありますが)、ROICは算出基準が企業によってまちまちです。ROICは企業全体ではなく、事業別に算出するものであり、当該事業の営業利益を当該事業の投下資本(=現金+有形固定資産+運転資本)で割ることで求めることになるのだろうと思いますが、各社ばらばらです。ROICについては、以前にブログでも何度か紹介したことがありますので、過去記事を次のとおり紹介させていただきます。

 

今回の新聞記事では、日本ガイシの有報が紹介されていましたが、同社の有報を見ると次のような開示となっております。

当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、これと関連性の高い投下資本利益率(ROIC)を社内管理指標に採用して、資本効率を重視した経営を推進しております。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。株主・投資家との適切なコミュニケーションで資本コストの引き下げに努めるとともに、資本コストを上回る収益性確保に向けて事業計画の立案や設備投資の意思決定プロセスにROICを活用し、経営資源をコア事業の拡大・コストダウンや開発・新規事業に効率的に投入してまいります。また、配当性向及び純資産配当率等を参照して積極的な株主還元に努めます。これらにより財務健全性との両立を図りつつ、ROEを構成する利益率、資本回転率、財務レバレッジを事業戦略と整合した健全な水準に維持することを目指します。

ROEの数値があるだけで、ROICは定性的な記述にとどまりそれほどたいした内容の開示ではないのですが、世の中にはこれすら触れていない企業が多いのです。

開示で留意すべきはROEの目標値です。伊藤レポートでROEは8%以上を目指すべきということが言われたので、「うちは8%は難しいな」という企業も多いかと思います。しかし、全ての企業が8%を目指す必要はないのです。伊藤レポートがいっているのは、株主資本コスト(株主が求めるリターン)の日本企業の平均が約7%少しであるので、ROEはこの7%を超える8%に設定しただけです。従い、自社の株主資本コストを算出して、仮に5%であれば、ROEは6%もあれば十分と言えます。この場合には、自社が考える株主資本コストを明記することが重要になります。