中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

書籍紹介「ピーターリンチの株で勝つ」(ダイヤモンド社) - 株式投資の初心者にお薦め

本日は休みのため自宅で諸々作業をしています。法律上、年間最低の年収取得が企業には義務付けられているようで、私の場合、その期限である10月末までに残り1日休みをとる必要があり、本日はお休みです。

さて、本日は1冊書籍を紹介したいと思います。中長期での株式投資をする方の多くは知っているかも知れませんが「ピーターリンチの株で勝つ」です。

ピーターリンチは、米国のファンドマネジャーです。1944年生まれで、ボストン大学を出て、ペンシルべニア大学ウォートン校でMBAを取得、1977年に1,800万ドルにすぎなかったフィデリティ・マゼラン・ファンドの運用資産を1990年には140億ドルに育てあげた凄腕のファンドマネジャーです。米国のタイム誌は「全米1のマネー・マネジャー」と評しています。高齢ですが存命です。

この本は、2001年に出版され、プロの機関投資家個人投資家の方が読んでいるかと思いますが、個人投資家株式投資をする上での心得が書かれています。

1980年代にはプロでないと得られない企業情報が沢山あり、個人投資家は不利な立場にありましたが、今や企業の開示情報は非常に細かいものとなり、個人投資家はアナリストレポートも手にすることも出来、また、インターネット取引で株価の動きも瞬時に分かるので、プロと個人の間に大きな差はないということが書かれています。だからこそ、個人投資家も頭を使えばプロに負けない運用成績をあげることが出来るということをピーターリンチは言っています。

ここ数年を見る限りでも、企業の開示資料のレベルは年々向上しており、決算説明会資料も大変に詳細で分かりやすく(ただし、たいていは企業がお化粧をしているので少し注意は必要)、統合報告書、アニュアルレポートなどもかなり洗練されてきました。有価証券報告書の記載内容も充実してきています。

機関投資家は企業の経営トップと面談できるという利点はありますが、フェア・ディスクロージャー・ルールの下、企業の経営トップも機関投資家のみに限られた情報を語ることは今はできなくなっており、結果として、機関投資家個人投資家がアクセスできる情報に差はなくなっています。

また、個人投資家は不明点があれば何ら遠慮せずに、投資先企業のIR部門に電話をすればよいのです。私の場合、買い増しをして、その銘柄に対する投資金額が数百万となる場合には、気になる事項があれば、投資先企業の代表番号に電話をしてIR部門に質問をするようにしています。その際には、「株主として当社を大変評価しており、今後更なる買い増しをして、中長期で保有したいのですが、それに先立ち、開示情報を見て1、2点どうしても不明な点があるので、差し支えない範囲で教えてください」というスタンスで電話をすればよいかと思います(株価の動向などを聞く方もたまにいるようですが、聞いたところで誰も回答できないので「ど素人」と思われ馬鹿にされるだけですので、そのような質問はやめましょう。)。

ということで、経営トップに個人株主が質問するのは難しいですが、IR部門に電話で質問すれば、開示されていない情報を探ることも可能であり、機関投資家が得る情報と大差はないとも言えます。

ピーターリンチは個人投資家は投資をする上で、個人ならではの視点を生かし、身近な銘柄に注目すること、機関投資家保有せずアナリストがフォローしない会社であること、ニッチ産業であることなどをあげています。中長期投資を志向する日本のファンドマネジャーで同じようなことを本で書いている方もいますが、ピーターリンチなどの投資方針がベースにあるのだと思います。

この本は細かい株式指標の見方などは書かれていませんが、株式投資をする上での基本的な考えがしっかりと書かれている良書かと思います。