コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

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ESG投資に逆風ー米国のエリサ法の新規則案

8月19日の日経新聞に「米年金、ESG投資に逆風」という見出しの記事がありました。米国で企業年金の受託者責任については、エリサ法で定められているのですが、エリサ法の新規則案が、「年金運用では金銭的な利益のみを考慮すべき」として、ESG投資を採用しにくくなる変更をする予定ということです。

ESG投資は欧州の投資家が中心になり、最近では、米国・アジアでも広がり一般的な用語になっています。環境・社会・ガバナンスに優れた企業に投資する、または、これらで課題のある企業は投資対象から外すという動きです。日本のメガバンクが、石炭産業への融資を見送るといったこともESGを意識してのことです。

トランプ大統領は石炭業界の支持を得るために、環境規制に消極的と言われており、今回のエリサ法の新規則案もこれが背景ということかと思います。なお、記事を見てはじめて知ったのですが、米国ではブッシュ大統領が2008年にESG投資は他の投資手法と比べて優れていないという通知を出し、これが米国のESG投資を縛ってきたようです(その後、オバマ大統領がESG投資を容認する方向に転換)。

株式投資というものは、将来、株価が上がることを期待して、リスクマネーを供給するところ、ESGにフォーカスして投資をして株価は上がるのか、つまりESG投資が運用収益の向上につがかるかは、明確な結論は出ていないと言われています。

長期的に見ると、ESG投資は収益向上につながると言われたりしますが、それは業績のしっかりした企業体力の十分な企業がESGにしっかり取り組んでいるだけであり、決して、ESG自体との連動はないという意見もあります。赤字の企業が環境対策や社会問題解決に金をかけるはずは普通はないかと思います。

そして、ESG投資の更なる問題は、ESG投資ととともに、企業のESG評価をする評価業者が増え、業者の評価があまりにいい加減で、各社ばらばらという点です。ある業者がA評価をしているが、別の業者はC評価するなど評価がきわめていい加減ということです。

私は、今回のエリサ法の新規則案の企業利益重視をすることは非常に良いことであると思います。勿論、温暖化はいよいよ大きな社会問題となっていることはたしかであり、これには企業も積極的に取り組む必要はあるかと思いますが、これは投資とは切り話して考えるべきと思います。

日本のGPIFでは高橋理事長がESG投資に力を入れていましたが、女性問題でクビになってしまいましたが、今回のエリサ法を受けて、日本でもESG投資に何らかの動きがあるかも知れません。