中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

伊藤忠商事はファミマへのTOB価格を引き上げず - 伊藤忠のプレスリリースより

伊藤忠商事がファミマに対してTOBによる友好的買収の提案をしており、これに対してファミマは応募推奨しておらず、伊藤忠商事TOB価格を引き上げるのではという予測もありましたが、伊藤忠商事は引き上げは行わないことを決定しました。8月13日に伊藤忠商事がプレスリリースを出しており、一部抜粋すると次のとおりです。

「昨今のファミリーマートを取り巻く経営環境は、特に飽和する国内市場において、他のコンビニエンス事業間の競争に加え、プラットフォーマーやドラッグストア等の台頭もあり、年々厳しさを増しています。更に追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、これらの企業間・業態間格差は拡大する傾向にあり、都市部での店舗展開を強みとしてきたファミリーマートは、残念ながら業績面で苦戦を強いられている状況が続いています。また、新型コロナウイルスの一定の収束後も「新常態」が継続するという考え方が一般化する中、既存のビジネスモデルの延長線上で、ファミリーマートの急激な業績回復を見込むことは相当に困難であると言わざるを得ません。このようなファミリーマートの将来業績への懸念は、本公開買付けの公表時点で、新型コロナウイルスの感染拡大前の 9 割程度の水準まで回復していた日経平均株価に対して、同社の株価が大幅に下回って推移していた点にも顕著に表れていたと分析しております。更に、当社の株主の皆様等に対する説明責任を勘案すれば、当社が妥当であると考える評価額を超えたプレミアムを付加することは不可能であり、1株 2,300 円という本公開買付けの買付価格の変更を検討する余地はないと考えております。」

要するにファミマはじめとしたコンビニ業界の先行きはとても暗いので、ファミマの将来の予想フリーキャッシュフローをベースに算定した価格は妥当ということを言っています。

ファミマの独立委員会は、DCF法で2,472円を算出し、ファミマはこれを尊重して2,300円の価格でのTOBには応募推奨はしていませんでしたが、結局、価格は引き上げずという判断を伊藤忠商事はしました。

また、本日の新聞報道によれば、アクティビストであるオアシスマネジメントがファミマに1株当たり最大1,062円の配当実施を求めていたところ、この要求をファミマは拒絶したようです。アクティビストの保有株式比率の詳細等まで見ておりませんので、良く分からないところがありますが、今後が気になるところです。

今後はMBO目的でのTOBが増えると思いますが、アクティビストが株式を保有している企業は、より慎重な対応が必要になると思います。勿論、対象銘柄の個人株主にとっては、アクティビストが活躍してくれる、「漁夫の利」となりますので、とても有難い話と言えます。