コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

個人投資家の有価証券報告書の読み方① - 役員報酬制度の改正

株主総会も終わり、3月期決算企業では、第1四半期決算発表が相次いでいるところですが、2019年度の有価証券報告書(以下「有報」)の開示は各社済んでいるので、個人投資家の方は、投資先銘柄の有報をじっくりと読む良い機会かと思います(ちなみに四半期報告書は、定性情報が極めて貧弱なため、基本的に読むべき価値はなく、決算数値について四半期決算短信を読めば足ると思います)。

私も投資先銘柄の2019年度の有報について、数日前からじっくり読みはじめましたが、昨年、本年と有報の記載内容に改正がされています。投資家への情報拡充を目的とした開示の改正です。私の場合、業務上、有報の作成・分析をすることもあり、20代の頃から有報は慣れ親しんでいるのですが(20代の頃は有報は紙で発行されていました)、有報の「肝」は定性情報です。決算情報は決算短信を読めば、大きいところは足ります(勿論、設備投資の詳細、研究開発費、政策保有株式の状況など有報でしか見れない重要情報もあります)。

個人投資家の方にとっては、今後の投資継続を検討したり、また、株価が上がらず不満がある場合、投資銘柄にアクティビスト活動をする上でとても有用な情報が記載されているので有報は熟読する価値ありです。本日から数回に分けて、私の投資先銘柄の記載例なども紹介して、最近の改正事項を中心に有報で見るべきポイントを簡潔に説明したいと思います。

ところで、話はそれますが、個人投資家で投資先銘柄にアクティビスト活動をするなら、最低でも10,000株は保有する必要があると私は理解しています。10,000株を持つ株主の発言・提案には、会社側もかなり敏感になるというのが、これまで事業会社や証券会社での実務経験からの私の感覚です(さらに株主提案には30,000株必要)。

さて、本題に戻りますが、「企業内容等に開示に関する内閣府令」が改正され、2019年6月提出の有報から改正された事項として、役員報酬があります。開示項目の充実が求められましたが、その内容は次のとおりです。観点としては、報酬プログラム、報酬実績と業績との関連性、報酬決定プロセスです。

  • 業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬の支給割合の決定方針(方針を定めているとき)の開示
  • 業績連動報酬にかかる指標と当該指標の選定理由、支給額の決定方法の開示
  • 最近事業年度の業績連動報酬にかかる指標(KPI)の目標及び実績
  • 「報酬の決定に関する方針」の決定権限を有する者の氏名・名称、権限の内容・裁量範囲
  • 「報酬の決定に関する方針」の決定に関与する任意の報酬委員会等が存在する場合における手続の概要

ここ数年、役員の報酬は業績連動報酬の割合を増やすことが資本市場から強く求められています。役員は従業員よりも業績向上への強い責任を負うことが求められていることが背景です(といっても、サラリーマンに過ぎないので、その実態や意識においては、経営トップ、副社長、専務クラスでない限り、一般従業員と何ら変わりはないところですが)。

従って、固定報酬制度しか導入していない企業は世の中の動きについていけていないということが確実に言えます。投資先銘柄の有報で役員報酬を見て、業績連動報酬を導入していない理由、導入している場合にはその指標と指標の実績、指標実績と具体的な報酬の連動の妥当性を個人株主は理解する必要があると思います。