多くの企業において、剰余金の配当は株主総会の決議事項となっていますが、先日の日経新聞によれば、東芝はこれまで取締役会決議としているところ、7月31日の定時株主総会において、総会でも決議できるよう定款変更する予定とのことです。
東芝は指名委員会等設置会社であり、この機関設計の会社の多くは、剰余金の配当は取締役会で決議できるとしています。詳しくいいますと、会社法で次のような規定があり、指名委員会等設置会社は、取締役の任期が1年と会社法で決まっているので、定款で規定することで取締役会で剰余金の配当を決定できるのです。
「会社法第459条第1項 会計監査人設置会社(取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役以外の取締役)の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日後の日であるもの及び監査役設置会社であって監査役会設置会社でないものを除く。)は、次に掲げる事項を取締役会が定めることができる旨を定款で定めることができる。(「次に掲げる事項の1つが「剰余金の配当」)」
取締役会で配当が決定できるのは、取締役の任期が1年の場合、株主は毎年の定時株主総会で取締役の選任を行うことが出来るので、配当に不満があれば、毎年の取締役選任の際に否決できるので、取締役会決議にしても不都合ないということかと思います。しかし、あらためて良く考えると、たしかに取締役は1年毎に選任されるのですが、そもそも会社提案の取締役選任議案が否決されるなど現実には考えにくく、また、取締役会の決議は、出席取締役の過半数の決議で行うところ、取締役会の過半数を入れ替えることなど現実にはできません。
そんなことを考えると、取締役会決議とした趣旨は必ずしも合理的でなく、剰余金の配当はやはり株主総会で決議すべき事項のようにも思ったりしています。株主が株式投資をするのは、株式の値上がりによる株式売却益(キャピタルゲイン)と配当(インカムゲイン)を得るためです。配当を得るというのは、株主にとって投資の根本に関わる重要な権利であるのです。であれば、配当については、株主総会で直接株主の判断に委ねるべき事項のような気がします。
会社財産のどれだけを株主に分配し、どれだけを内部留保するかは高度な経営マターであり、経営の専門知識のない株主より取締役会の判断に委ねるべしという意見も分かります。しかし、会社のオーナーは株主であり、オーナーの利益に直結する事項については、オーナーが直接判断するのが筋かなと思ったりしています。
なお、指名委員会等設置会社の中でも、東京電力、三菱UFJフィナンシャルグループ、ブリヂストン、三菱地所、ヤマハなどは株主総会で剰余金の配当を決議しています。