中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

アフターコロナでは不採算事業の売却を求めるM&Aアクティビズムの増加が予想されます

コロナ終息後はV字回復するという考えはもはや少数派となり、少なくとも年内、場合によっては来年以降も当分の間は景気は低迷する可能性が高いという報道が多くなってきました。コロナが終われば一気に景気は回復するはずですが、ひとえにワクチンの開発の見通しがまだたっていないことが原因と思います。

一方、株価の低迷を背景にアクティビストが日本株を爆買いしているという記事も目にしますが、今後、アクティビストは企業に何を求めてくるのでしょうか?

コロナ前は、いわゆるバランスシート・アクティビズムということで、余剰キャッシュの還元、政策保有株式の売却を企業に迫るケースがほとんどでした。しかし、キャッシュの還元を求めることに対し、他の機関投資家の賛同を得ることは難しいでしょう。

コロナが今後も再発することを考えると、万一に備えキャッシュを保有することの重要性は市場関係者の間で認識されてきましたし、そもそもコロナの影響で企業各社はキャッシュが激減するので、還元する余裕もないことになります。このため、従来のバランスシート・アクティビズムは今後は減少するはずです。

一方で、今後増えるのは、M&Aアクティビズムです。これは何かというと不採算事業の切り出しなどにより、株価の向上を求めるものです。これまでは不採算事業は、コア事業の利益でマイナスをカバー出来ていましたが、今後はコア事業の業績が悪化するので、カバーできなくなります。結果、不採算事業を保有しつづけることが出来なくなります。

そもそも不採算事業は、その事業を運営するに適切な他のプレーヤーに任せた方がよいという議論は、コロナ前より経済産業省などが指摘していることであり、アクティビストは自社の行動を正当化する理由にできます。機関投資家や個人株主は、アクティビストの提案が、低迷した株価の回復につながる可能性があれば、喜んでそれに賛同すると思います。アクティビストが外資の大手コンサルティング会社を起用して精緻な分析の提案をして来ることなども予想されます。

今後は、複数の事業セグメントを持つ上場企業は、不採算事業を抱えるような場合には、事業間のシナジーなど事業保有の意義をきちんと整理し、外部に説明することの準備が必要になるかと思います。