中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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大日本塗料(4611)が買収防衛策を継続更新ー買収のあった業界の企業は買収リスクを認識しているのでしょう

4月24日に大日本塗料(4611)が本年6月の定時株主総会終結の時をもって更新期限を迎える買収防衛策を継続更新することを公表しました。大日本塗料は塗料国内第4位で売上高は約730億円程度の中小型銘柄です。

塗料業界では、少し前に日本ペイントシンガポール塗料大手のウットラムとの間で買収を巡る攻防があったかと思います。たしか、ウットラムが株主提案をして、取締役を送り込むようなことであったかと思います。

このように塗料業界では買収合戦があったこともあり、大日本塗料は今回更新を決定したのだと思います。2020年3月末時点の株主構成はまだ開示されていないので不明ですが、2018年度の有価証券報告書を見ると外国人比率が16.49%となっております。国内機関投資家の比率は不明ですが、まあ株主総会で賛成をとることはさほど困難ではない株主構成です。

日本の塗料大手では関西ペイントがありますが、関西ペイントは2019年に買収防衛策を廃止しました。2018年度の有価証券報告書で株主構成を見ると28.83%となっています。この比率ですと株主総会での可決は難しいかも知れません。

塗料業界は日本にいると気づきにくのですが、グローバルで見た場合には成長産業と言われています。関西ペイントは、国内では首位級ですが、グローバルで見ると8位です(四季報2020年版業界地図)。関西ペイントは買収防衛策がないことで買収のリスクに晒されているといえます。もっとも時価総額が大きいので、買収できる企業も限定はされますが。

コロナの影響で株価が低迷する中、アクティビストが日本株を買っています。また、日本の外資規制改正においても、急遽、医薬品・医療機器を対象に入れることを政府は決めました。中国企業による日本企業への買収阻止が背景にあるという新聞報道でした。

①コロナの影響で株価が大幅に低下している ②このような状況下で中国企業が割安となった日本企業の買収を虎視眈々と狙っている ③国内外のアクティビストの日本株買いが増加している ④国内の機関投資家は議決権行使の公正性についてアセットオーナーから求められ(スチュワードシップコード)、株主提案に賛成するケースが増加している ⑤個人株主は株価低迷で大きな含み損を抱えて悩んでおり、株価上昇が期待できる買収や株主提案には賛成するインセンティブがとても強いという事実を考えると、買収防衛策の重要性が認識できると思います。