中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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書評「総会屋とバブル」(文藝春秋 / 尾島正洋)

「総会屋とバブル」というこの本の著者は、長年、産経新聞社で主に社会部を担当されてきた記者で、現在はフリーの方です。

総会屋という言葉は今の20代~30代の方は、イメージがつかめない人もかなり多いかも知れませんが、総会屋は1990年後半頃まで存在していました。「総会屋とは?」を簡単にいうと、企業のスキャンダル等の不祥事ネタをもとに、株主として企業に金銭の提供を求め、また株主総会で不規則な発言を繰りかえし、それをやめる代わりに金銭の提供を会社に求めるなどの輩です。

私が社会人になった頃は総会屋は下火になってきましたが、社会人になる時期の前後で大手都市銀行、大手証券会社のトップが総会屋に巨額の利益提供を行っていたことで東京地検特捜部が経営トップや役員を相次ぎ逮捕・起訴しました。その頃の当時の様子がこの本では詳しく書かれており、とても良く整理されていると思います。

小川薫、小池隆一などの大物総会屋の名前も出ており、当時は、私は大学生でしたが、法学部で会社法を勉強する中で興味を持って総会屋の当時の事件の新聞報道を読んだ記憶があります。総会屋対策として、当時は久保利英明弁護士がとても有名でした。

コンプライアンス重視の現在の世の中では、総会屋との付き合いを継続する上場企業もほとんどなく、現在は総会屋は存在していないと言われており、「総会屋」という言葉を最近聞くことはまずないと思います。ちなみに、総会屋は暴力団や右翼との繋がりが多かったといわれていました。

当時の時代背景が分からないとこの本を読んでも良くピンとこないところもあるかとは思いますが、1990年頃の日本の金融市場は総会屋問題で大変な時代であったということを知る上では非常にわかりやすく、かつ簡潔に書かれている本だと思います。