中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

上場子会社の社員は自社の上場廃止に備えて自分のキャリアを真剣に考える必要あり

11月29日に東証が「上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備について」を公表しました。主な内容は次の点です。

  • 独立役員の独立性に関する判断基準に、過去10年以内に親会社または兄弟会社に所属していた者でない旨を追加する
  • 上場子会社を有する上場会社は、グループ経営に関する考え方及び方針を踏まえた上場子会社を有する意義及び上場子会社のガバナンス体制の実効性確保に関する方策などを、コーポレート・ガバナンスに関する報告書において開示すること

また、同日、東証は「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」を設置したことを公表しました。今後、検討が開始されますが、これも上場子会社の在り方を巡る検討会と思います。

上場子会社を削減するのが今のコーポレートガバナンスの課題ですので、今後、上場子会社を持つ上場親会社は色々と対応を迫られそうです。

ここで、私が思うのは、上場子会社の社員は自分の身の振り方を今の段階で真剣に考えるべきということです。

日立製作所が日立化成を売却する報道がありましたが、あれなどは日立製作所本体と日立化成の事業シナジーが薄いことのほかに、上場子会社を持つことの今後の批判も想定して動いたのであろうと容易に想像されます。日立化成は昭和電工に売却された後は、100%子会社になり上場廃止になるのでしょう。

とすると考えるべきは、日立化成の社員です。上場廃止により、IR、決算開示、株主総会コーポレートガバナンスといった上場しているがゆえに必要な仕事が完全にゼロになります。

結果、これらの業務に関わっていた方は余剰人員になるのです。特に日立化成のように外に売られて、100%子会社になったような場合には、普通に考えると、今後は結構つらい状況が待っていることが想像されます。

したがって、上場子会社で勤務する方は、自社が上場廃止になる可能性が今後相当程度高いということを念頭において、自分の業務が上場廃止によりどうなるのかを考え、上場廃止により消える業務であれば、他の業務に早い段階から異動するか、転職するのがが自分の将来を考える上でとても大事だと思います。上場して間もない企業などで活躍する場は沢山あるはずです。

ところで、上場子会社の銘柄は、今後の投資先として考えられると思います。というのも、上場廃止では、公開買付が手法の1つとしてありますが、この場合には、市場株価にプレミアムを付けた価格が公開買付価格となるので、高い価格で売却してキャピタルゲインが得られるということです。

上場子会社を洗い出し、親会社の中期経営計画をみて、シナジーが薄いようであれば、将来の上場廃止を視野に入れて、株式を買っておくということもあるかも知れません。ただ、上場子会社の数は結構多いので、調べるのが結構大変ではありますが。