中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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「ぺんてるの執行役員が敵対的買収へ反対」の意見表明の意味するところ

ぺんてる敵対的買収について、自社の株主宛に12月1日に次のようなメッセージを公表しました。

「株主の皆様へ(12月1日) 私たちは執行役員として当社の子会社化に強く反対いたします。私たちは、この度のコクヨ株式会社による当社の子会社化に、ぺんてる株式会社執行役員として強く反対いたします。 当社の独立性を守り、今後も全世界のお客様にぺんてる製品をお届けするため、皆様のご理解・ご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。   ぺんてる執行役員一同」(以下執行役員の名前が列挙されていますが省略します)

執行役員全員の意見で、株式は売らないでくださいという最後のお願いです。

この文書のポイントは、従業員である執行役員が反対の意を表明している点です。執行役員というのは、役員という名称がついていますが、本当の役員(会社法上の役員)ではありません。

会社法上の役員とは、取締役であり、指名委員会等設置会社においては執行役です。執行役と執行役員は大きく異なり、執行役員は単なる「上位クラスの従業員」に過ぎないのです。ぺんてるの経営陣が敵対的買収に反対しているのは周知ですが、一般従業員の代表(執行役員)も反対ですという意思の表明です。

ぺんてる執行役員も本心は各人思うところはあるのでしょうが、敵対的買収に反対のスタンスを示さないと、ぺんてるでのサラリーマン人生が終わってしまうので、反対を表明しているのです。

コクヨぺんてるの経営陣はクビにするが、従業員は抜擢しますといっていますが、その従業員が「反対ですよ」とぺんてるは言っているのです。

この最後のメッセージが、ぺんてるの株主の株式の売却を思いとどまらせることになるのか分かりまえんが、このようなお願いを出すということは、ぺんてるとしては4,200円の買収価格に応募する株主が結構存在しているという証拠かと思います。

一連の激しいぺんてるの抵抗を見ると、仮にコクヨTOBに成功したとしても、ぺんてるは何らかの裁判を提起するような気がします。

この事案は、日本であまりない敵対的買収事例としてとても勉強になる案件です。ところで、いまさらですが、ぺんてるは、未上場会社ですが、買収防衛策を導入しておけばよかったような気もします。次回少し触れたいと思います。