中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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日本の外資規制の強化の動き

先日の日経新聞で先端技術を巡る規制合戦ということで、対米外国投資委員会(CFIUS(「シフィウス」と読みます))について掲載がありましたが、日本の外資規制については、9月26日付で外為法で規定する対内直接投資等に該当する行為の見直しがされ、2019年10月26日から施行されることになっています。

少し前の日経新聞に日本の外資規制の基準を1%まで低下させることを政府は秋の臨時国会で審議し、2022年中の施行を目指すとの報道もあり、中国企業による買収を防ぐという背景の下、日本でも規制強化の動きにあります。

日本の外資規制とは、特定の業種に該当する日本企業の株式を10%以上、海外資本(企業・投資家)が取得しようとする場合、事業所管大臣等に届け出を行い、事前の許可を取得する必要があるというものです。

10月26日施行の改正内容について整理しましますとポイントは次の3点です。

  1.  規制対象の基準を「発行済株式数の10%」の基準から「総議決権の10%」の基準に変更
  2. 外国投資家による議決権の代理行使受任を対内直接投資規制に追加
  3. 議決権取得後に外国投資家の間で共同議決権行使に同意した場合(合算して総議決権の10%以上)を対内投資規制の類型に追加

2は、現行法では、他社保有の議決権の代理行使を受任する場合は規制対象外でしたが、代理行使を受任し、結果、これが議決権の10%を超える場合には規制対象となります。

3は、現行は海外投資家同士が共同して議決権行使を合意した上で、10%を超える取得をした場合(投資家A=4%、B=7%)には届出の対象となりますが、取得後に共同して議決権を行使する場合には対象外にならないところ、これが規制されることになったということになります。

今後の改正ですが、先ほど少し触れましたように大きな改正が検討されているようです。9月18日の日経新聞によれば、審査基準を10%から1%まで引き下げることを検討中というものです。つまり、対象業種の日本企業の株式を1%以上取得する場合には規制の対象とするという内容です。

1%まで基準が下がった場合には、外資規制の審査対象数が増えることになりますが、一方で、純投資は除くことを新聞報道によれば、政府は検討しているようです。

純投資が対象から除外されないと投資に躊躇する機関投資家が増え(「審査等の手続きで面倒だからこの会社への投資はやめよう」)、ひいては事前審査対象業種の株価が低迷します。

審査対象業種は、原子力、防衛産業、宇宙等に制限されることが良く言われますが、外為法を良くみると、文言上は対象業種が広く規定されているようにも読めます。1%以上の投資が事前審査となると対象となる業種はかなりの数に上るのではないでしょうか。であれば例外となるケースが重要になるように思います。改正案の内容は今後明らかになると思いますので、引き続きウォッチしていきたいと思います。