本日の日経新聞で物言う株主が大きく増加していることが報道されていました。
物言う株主であるサードポイントのソニーに対する半導体事業の分離・上場の提案に対して、ソニーが拒否したことが9月18日の日経新聞に掲載されていました。
ソニーは、半導体は、今後の成長の中核と位置付け、他事業との相乗効果も大きいと判断したのが理由とのことのようですが、そもそもアクティビストに「事業を分離せよ」と言われて、「はい。そうします」とは当然ながら言えないと思います。
9月17日付の「株主そして多様なステークホルダーの皆様へ向けたCEOレターの発信について」がソニーの正式なレターですので、その内容をざっと読んでみました。何点か抜粋しますと、次のような内容が書かれています。
- ソニーの取締役会は、全会一致で半導体事業はソニーの成長を牽引する重要な事業の1つで、他の事業や人材との協業により今後大きな価値創出が期待でき、また、同事業の競争力の維持・強化の観点からも、今後もソニーが保有し続けることがソニーの長期的な企業価値向上に資するとの結論に至った
- 半導体事業は、今後大きく発展するであろうIoTや自動運転などの新しい市場の開拓で成長を続けるとともに、技術イノベーションによって社会の安心や安全の提供にも貢献できる
- 今後も事業ポートフォリオの精査、各事業における資本効率の追求、情報開示の充実等に積極的に取り組む
- 半導体事業をソニーから独立させ上場企業として運営する場合には、上場にかかる時間に加え、特許ライセンス費用の負担増、人材採用面でのマイナス、上場企業としてのコストとマネジメントリソース、税務面での機会損失など、相当規模のディスシナジーが生じると試算される
要は、保有することは他の事業とのシナジーがあり、これは経営陣全員が同じ理解であるということが書かれています。なお、書簡には、一切の数値は記載されていませんでした。
サードポイントの提案を読んでいないので全体が分からないところもありますが、数値の裏付けがない資料は説得力が乏しいので、ソニーは資本市場関係者の賛同を得るには、半導体事業を持つことで他事業とどの程度のシナジーがあるのかを定量的に分析することが必要になるのだろうと想像します。
今回のサードポイントの主張もそうですが、今後は、このように事業ポートフォリオの分離を求めるアクティビストは増加するように思います。
不採算事業を営むことにより、経営資源の一部がその不採算事業につぎ込まれ、収益を生む事業に十分な経営資源を投入できずに、結果、強い事業も弱くなるが故に不採算事業の分離を求めるというのが事業分離の基本的な考え方かと思います。
少し前に、日本の大手総合電機メーカー(時価総額は数兆円規模)の財務部門を総括するかなり上のクラスの役員の方が東証のセミナーでそのような発言をしてました。
複数の事業セグメントを抱える上場企業は、その事業を抱える合理的な説明理由を準備しておくことが今後必要になります。