中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ゼネコンの2020年3月期1Qの業績-西松建設、清水建設

ゼネコンはアクティビストが最近狙っている業界の1つで(政策保有株式を含めたキャッシュリッチ業界のため)、アクティビストの強い攻撃により、ゼネコン各社が政策保有株式を売却して、株主還元を増やすであろうことが投資家から期待されています。

さて、今回はアクティビストの目線ではなく、ゼネコンの決算について紹介します。現時点では西松建設清水建設が2020年3月期の第1四半期の決算を開示しています。

< 西松建設

  • FY19.1Q(対FY18.1Q) 売上高 +20%、営業利益 △2.3%
  • FY19通期予想(対FY18通期)売上高 +7.4%、営業利益 +16%、経常利益 +17%
  • 現時点の進捗率 営業利益 16%、経常利益 16%

 <清水建設

  • FY19.1Q(対FY18.1Q)  売上高+15.1%、営業利益 +39.8%
  • FY19通期予想(対FY18通期) 売上高 +5.7%、営業利益 +1.8%、経常利益 +0.8%
  • 現時点の進捗率 営業利益 21%、経常利益 22%

 この2社の2020年3月期の通期予想を見る限りですと、増収となっています。といっても、これは2019年3月末の決算の際の見通しであり、通常は4-6月期で下方修正をすることはあまりないので、今後どうなるかは不明です。

ゼネコン業界は、東京オリンピック後も数年は好調が続くとの大手ゼネコン数社のトップは発言しています。しかし、ゼネコンは「3K職場」の典型業界でもあり、職人の人材不足が言われています。

また、そもそも事業領域が国内中心のドメスティック業界であるところ、国内は少子化のため、今後は海外市場に目を向けたM&Aや、コスト削減のための高い技術獲得のM&Aを各社考えているようです。

大手国内ゼネコン同士の経営統合だと規模が大きくなるが、入札が1社になるのでメリットがないと言われております。今後は、海外企業のM&Aや技術獲得を目指したM&Aに積極的に取り組んでいくのかも知れません。

ゼネコン各社の決算発表スケジュールは次のとおりです。

8月8日で大手ゼネコンの決算が出揃うので、8月9日以降にゼネコン各社の決算概況を紹介したいと思います。

ところで、戸田建設が買収防衛策の対抗措置を発動しないのかと私は関心を持ってみていますが、現時点では、発動はしていないようですね。

そもそも、冷静に考えると、シルチェスター(戸田建設に投資しているアクティビスト)はオアシスマネジメントやエリオットのように攻撃的なアクティビストではないため、そもそも20%以上の買い占めを進めて戸田建設と全面的に争うところまではいかないのかも知れません。

戸田建設の経営権を支配する意向がなければ、20%以上を買い占めて、買収防衛策の対抗措置が発動され、議決権が希釈化するとシルチェスターにはデメリットになります。

もし、20%以上を取得したいのであれば、来年の株主総会で買収防衛策の廃止の株主提案をして、廃止した上で、株式の買い占めを進めるのかも知れません。もっともシルチェスターの背後に海外のゼネコンなどの事業会社がいて、戸田建設を手中に収めたいというのであれば別ですが、日本の複雑な建設市場に手を出したいと思う海外の建設会社がいるのか私は良く分かりません。