コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

複数の事業セグメントを持つ上場企業は理論株価を定期的に分析することが必要 ~投資銀行でなくても出来る株価算定(バリュエーション)

有価証券報告書の改正の中、役員報酬について記載する予定でしたが、今回は簡単に別ネタについて紹介したいと思います。

5月8日の日本経済新聞朝刊で「最高益も市場は低評価」とのタイトルの記事で、ソニーの事業は8つに分かれているところ、事業別の収益力をもとにソニー企業価値を測り株式価値を算定したところ、市場株価よりだいぶ低いとのことでした。コングロマリットディスカウントとのことです。

株式価値算定の手法は、8つの各事業について、各事業の競合会社のEV/EVITDA倍率の平均値をベースにして算出した各事業価値を合算して、ネットデットを控除して株式価値を算出するというサム・オブ・ザ・パーツ(SOTP)の手法です。

以前にブログで紹介したこともありますが、複数の事業セグメントのある企業で企業価値、株式価値を算出する際に使う手法です。

証券会社の投資銀行に依頼して企業価値、株式価値を算定する際にも良く使わる手法です。以前にもSOTPの手法はブログで書きましたが、再度簡単に紹介します。

  • A会社は甲事業と乙事業の2つの事業セグメントがあります
  •  甲事業のEBITDA(営業利益+減価償却費)が30億円、乙事業のEBITDAが10億円とします
  • 甲事業の競合会社(上場会社)の平均EV/EBITDA倍率が10倍、乙事業の競合会社(上場会社)の平均EV/EBITDA倍率は8倍とします(EV=株式時価総額+ネットデットです。これをEBITDAで割るとEV/EBITDA倍率が算出されます)
  •  この競合会社の数値から甲事業、乙事業のあるべきEVを算出します。甲事業のEV=30億円×10倍=300億円 / 乙事業のEV=10億円×8倍=80億円
  •  この2つの数値からA会社の全体のEVは380億円になります。これにA社のネットデットを引くと理論上の株式価値になり、これを発行済株式総数で割り、理論株価が算定できます。

以上により算定された理論株価が市場株価と比べて大きいか小さいかを比較することになります。

市場株価の方が低いと、「低収益事業を抱えているためコングロマリットディスカウントの状況にある」、「株価向上のためEBITDAの低い事業を売却せよ」という方向になります。いかがでしょうか。簡単に出来ると思います。

投資家と企業の対話ガイドライン経産省で議論中のグループガバナンスガイドラインにおいても、事業ポートフォリオの果断な見直しが求められております。

複数の事業セグメントを持つ企業は、半期、年度末頃に各セグメントの競合企業のEV/EVITDA倍率を算出して、自社の理論株価を把握しておくことが大切です。

機関投資家も簡易的には、この手法も使用していますので、この方法で算出しておけば、大きな目線はすりあうと思います。他にDCF法でバリュエーションすることも重要ですが、まずは、このSOTPの手法で理論株価を算出して、自社のCEOはじめ関係するマネジメント層と共有しておくことをお薦めします。