中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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経産省のコーポレートガバナンス改革と脱藩浪士組のCEO

LIXLが前CEOの解任を巡ってもめています。機関投資家はオーナー家の社長より、いわゆる雇われ社長の方の方が手腕があると評価しているのだと思います。

先日の「週刊ダイヤモンド」にLIXIL最高経営責任者である潮田氏のインタビュー記事が掲載されており、それを見ると、解任された社長は赤字続きで能力不足であったから解任したと書かれております。これが本当であれば、機関投資家が、無能なCEOを呼び戻し続投を求める理由は何であるのか、など色々と疑問が出てきます。

さて、これと直接の関係はないのですが、数日前の日本経済新聞に「社長たちの群像」として社長をいくつかのタイプに分けた簡単な記事がありましたので、紹介します。

社長のタイプとして4つあり、「純粋培養組」、「派遣社長組」、「脱藩浪士組」、「起業家社長組」の4つです。なかなか面白い言葉です。言葉の意味は記事によれば、次のとおりです。

純粋培養組とは、日本の大手上場会社の圧倒的多数のケースで、男性・日本人・60代・転職経験ゼロのプロパー社員上がりの社長です。派遣社長組とは、新しく社長が選任されることにより、その期や前後の年齢層の役員がグループ会社に出され、そこで決定権のない社長をする社長のことをいいます。

起業家社長組はその名のとおりでリスクをとって事業を成功させた本物の経営者です。興味深い言葉は、脱藩浪士組です。

これは所属企業のくびきから離れ、自らの意思でかつて所属して藩(会社)を離れ、活躍する経営者です。かっこよくいうと「プロ経営者」ですが、プロといえるには数社の経営を経験していなければプロとは呼べないと思いますので、クラブの雇われママと本質は同じですので、「雇われ社長」といったところでしょうか。

さて、経産省は、従来の純粋培養型の社長を選定してきたことが日本企業の稼ぐ力の長引く低迷の1つの要因でもあり、だからこそ社外取締役を増やして社外の目線を経営に入れろと指摘しているわけですが、最近、自分の子供たちが新学期を迎え、新しい環境で成長していく姿を見て、経産省の指摘することも「なるほどな」と実感しています。

子供は小学校、中学校と進学していきますが、その都度、それまでの慣れ親しんだ環境から離れ、新しい環境を迎えます。そこで色々と刺激を受け、気付き成長していくことになります。このように子供は単に年齢を重ねるだではなく、環境が変わることにより、大きく成長していくのだと思います。

もし、幼稚園や小学校の入学から大学卒業までの長い期間、全くまわりの友人・先生が変わらないとしたら、どうでしょうか。何でも分かりあえる「あうん」の呼吸で通じ合える友人関係が出来ますが、一方で、それは、他人を寄せつけない、また他人の意見を聞かない極めて閉鎖的な関係であり、世間を知らない人間に必ずなるはずです。

これを社会人に当てはめると、大学を出てから30年、40年と入社した時と同じ会社でサラリーマン人生を送るというのは、幼稚園入学から大学卒業まで同じ友人・先生と毎日過ごすことと全く同じことになります。

社会人は、子供ではないので人格が出来上がっていますので、子供ほどの大きな成長はありません。しかし、20代、30代、40代、50代と各年代で考えることは大きく違うので、つまり、社会人になっても日々、少しずつではあるにせよ人は成長しているのだと思います。

こういうことを考えると、社会人がその成長をより実りあるものにするには、子供がいくどかの環境の変化を経て成長するのと同様に他社の経験が有用なのかも知ません。

特に、社長のような経営トップについては、脱藩浪士組のようなタイプが、企業によっては、強く求められるようにも思います。

経産省は企業経営の舵取り行うのはCEO・社長であると明確に言っていますが、こういう脱藩浪士組のCEOが、日本企業にはまだまだ極めて少数ですが、今後は少しずつ増えていくのかも知れません。