中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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英文開示強化の動き~今後、有価証券報告書の英訳の動きも進むか?

先日の日経新聞東証の上場基準の再編の記事がありましたが、この中で東証1部企業には英文開示を求めることを検討する方向とのことが書かれていました。

JPX日経400の銘柄登録には英文の決算短信が必要ということになっており、本年からは、英文のコーポレートガバナンス報告書の開示が求められているところですが、東証1部全体では、英文開示をしているのは約30%程度ということも以前に新聞で書かれていた気もします。

先日、東証の担当者による英文開示のセミナーがあり参加したのですが海外の機関投資家から日本企業の開示を求める声が強いとのことでした(セミナー自体は、あまりに内容が薄く期待はずれのセミナーではありました)。

 あるコンサル会社の調査結果によれば、海外機関投資家は日本企業の開示にして次のような結果のようです。

  • 日本企業の英文開示に対して不満を持つ投資家が50%超
  • 海外投資家はベンダーから英訳を入手できるが、情報の正確性と迅速性の観点からは、企業の英訳を望んでいる
  • 英文開示情報の有無や内容が海外投資家にとっての差別化になっている

 この中で、3つの目の点を企業は気にする必要があると思います。英文開示がないということは海外機関投資家の投資対象にならないため、株式の需要が増えないため、結局PBRも1倍を下回る状況が改善しないことになります。

ちなみに、3月8日に金融庁が英訳した有価証券報告書を自社ウェブサイトに掲載している会社を公表しています。

日清製粉、太陽ホールディングス、コマツ楽天TDKなど16社ですが、今後も定期的に取り纏め掲載する予定のようです。

これは金融庁のディスクロジャーワーキンググループ報告で、日経25銘柄企業の約9割で英語版のアニュアルレポートがある一方、有価証券報告書の英語版はほとんどないためといった報告があり、公表されたものです。

 なお、英文開示はそれなりに大変です。日本文の開示も、開示にあたっては社内のしかるべき会議体で議論する会社も多いと思いますが、実務者は、開示直前や有価証券報告書などが最終原稿を外部業者に提出するぎりぎります文章内容を考えることも多いかと思います。

そういう中、日本文と同時に英訳を準備するのは、担当者が相当に英語に精通していない限り難しいとは思います。その点では、開示書類の迅速な英訳が出来る外部業者のニーズや自動翻訳を行う会社のニーズは益々高まるような気がします。