中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

買収防衛策の考え方のポイント

1年ほど前に切り取った新聞記事の整理をしていたところ、買収防衛策に関する記事の切り抜きを見つけました。

3月期決算企業は総会の議案等を機関決定する時期にそろそろ入るかと思いますので、本日は、今後廃止する企業も増えることが予想される買収防衛策の考え方について紹介したいと思います。

買収防衛策のスキームなどの詳細は省略し、継続の是非を検討するに当たって留意すべきと考えるポイントとなる事項について2点のみ触れたいと思います。

<株価への影響>
これが昨年の3月25日の日本経済新聞に掲載されていました。2017年度に買収防衛策を廃止した43社の株価パフォーマンスを見たところ、廃止企業の株価上昇率は30%で、日経平均銘柄の平均所上昇率を15ポイント上回るようです。

買収防衛策があると企業価値向上に真剣に取り組んでいないと解され、それが株価の低迷の要因となっていると解されるところです。

この記事において、ある外資系証券会社のコメントとして、買収防衛策を有する企業は企業価値向上に対する意識が乏しく、継続企業のROEは約7%で他の企業より2%程度低いということです。

たしかに、ROEが7%台の企業が買収防衛策を持つのであれば、印象は悪いと思います。どこかに買収をされ、経営陣を総入れ替えをして、株主目線の経営を行って欲しいということを希望するかと思います。

しかし、反対に、ROEが10%以上あるような企業は株主に目を向けた経営をしているのですから、買収防衛策を有していても大きな批判は受けないで済むように思います。現状の好調なROEを今後も維持するため、企業価値を損う敵対的買収者による買収リスクを低減するために買収防衛策を導入しているという説明が成り立つかと思います。これを書面で開示したり、機関投資家に説明していくことになるのだと思います。

保有の意義>
で、問題はここまで時間とリソースを割いてまで買収防衛策を継続する必要が本当にあるのかということです。この点は、ポイントは2つあると思います。自社のリソースを魅力に感じる国内外の企業の存在の有無、自社の株価の水準です。もっとも買収防衛策があって、裁判になった場合、会社が100%勝てるかは分かりません。その理由は極めてシンプルで「判例がない」からです。

しかし、私は買収防衛策のポイントは、裁判上の有効性云々ではなく、買収者にこの会社に手を出すと面倒だという認識を持たせることであると考えます。つまり、株式を大量に買付けたら買収防衛策を行使してもめてやるぞということをアピールすることで買収者の買収意欲をそぐという点が買収防衛策のポイントであるようにも思います。

株主総会で買収防衛策の更新期限を迎える企業は、継続・非継続のいずれであっても4月又は5月の取締役会で決議し、開示することになります。

ちなみに買収防衛策は会社法上、総会の決議事項とされているものではないため、取締役会の決議だけで導入可能ですが、多くの導入企業では、株主の同意を得ておくのが法的安定度を高めるということから、株主総会の決議事項として決議しているところです。

本年更新期限を迎える企業は、既に機関投資家を訪問して票読みを実施済みであり開示文を検討している最中かと思いますが、来年に買収防衛策の継続をする上場企業は、自社がどのような開示をすべきか4月、5月の他社開示例を注意深く見る必要があるかと思います。