中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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リース取引の会計基準の変更

3月8日の日本経済新聞で、リース取引に関する会計基準が変わり、リース取引が資産計上される方向との記事がありましたので、今回は、これについて少し触れてみたいと思います。

 リース取引とは、貸手(レッサー)が借手(レッシー)に対し、合意されたリース期間にわたりリース物件を使用収益する権利を与え、合意されたリース料を貸手に支払う取引をいいます。

リース取引には2つあります。①ファイナンス・リース取引と②オペレーティング・リース取引です。

①は通常の売買取引にかかる方法に準じた会計処理が行われ、バランスシート(BS)に資産計上されます。仕訳でいうと次のとおりです。

リース資産 XXX / リース債務 XXX

資産と負債にそれぞれ計上されます。また、自己の固定資産と同様に決算時に減価償却を行うことになります。

 一方、②は通常の賃貸取引にかかる方法に準じた会計処理がなされ、資産計上はされません。仕訳ですと次のとおりです。

支払リース料 XXX / 現金預金 XXX

 では、①と②の区別基準はどこにあるのでしょうか?

これは、ノンキャンセラブルとフルペイアウトの2要件を充足するか否かが基準になります。つまり、リース期間の中途において、リース契約を解除できず、かつ、経済的利益を実質的に享受できる、かつ、使用に伴うコストを実質的に負担するような場合には、自社で所有していることと同様ですので、①のファイナンス・リース取引になります。そして、これ以外がオペレーティング・リース取引になります。

 ②は、資産計上されていませんでしたが、今後は、BSに資産計上されるというのが今回の報道です。オペレーティング・リースは船舶、飛行機、倉庫などの耐用年数の長いものが多いようです。

次にこれにより、どういう影響があるでしょうか?

BS上の資産が増えることになるので、ROA(= 利益 ÷ 総資産)が低下することになります。ROAとは、資産を効率よく活用して利益をあげているか否かの指標になります。リース取引額の大きな会社は資産が大きく膨らむので、ROAが低下します。 このため、ROAを指標の1つにしている会社で、オペレーティング・リース取引の金額の大きい企業は、ROAの説明に今後は注釈をつけるなどの説明が必要になるかも知れません。

今回はリース取引の会計基準について簡単ではありますが、紹介させて頂きました。