中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

書評:「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門」

本日は久しぶりに書籍の紹介をしたいと思います。講談社+α新書から出た「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい- 人生100年時代の個人M&A入門」という本です。

タイトルが面白かったので購入して読んでみました。著者は、元SBIインベスメントなどでの勤務経験のある三戸政和という方です。専門書でもなく、じっくり勉強するような書籍でもないので、2時間半程度でさっと読むことが出来ました。

本の内容は、一言でいうと、大手企業で役員になれないサラリーマン(部長・課長などの一般従業員)が役職定年後に余裕のある暮らしをするには、40代半ば頃から準備をはじめ50代半ば以降に個人M&Aを行い、資本家を目指しなさいというものです。

さらに少しだけ纏めますと次のような内容です。

1.大手企業で役員になれずに50代後半で役職定年を迎えた部長・課長の一般従業員の年収は、役職定年後は400万円から500万円がほとんど。役員になったサラリーマンとの格差が激しい
2.ゆとりある老後を送るには、資本家になる道を探す必要があり。つまり自らが資本家となること
3.資本家となるには、自ら事業を1から立ち上げることもあるが、これは99%借金を背負って失敗するからやめなさい。そもそもサラリーマンは、事業を1から立ち上げた経験もなければ能力もない。事業をゼロから立ち上げて成功する人間は、サラリーマン社長を含めたサラリーマンとは住んでいる世界が違う
4.一方、既に存在する企業を買収することは成功の可能性あり。大手企業のサラリーマンは管理能力もあり、また、大手企業での経験を活かして、対象企業の業績改善を図ることが可能であり、自分の経験を活かすことができる
5.40代半ばを過ぎたら50代後半で個人M&Aを行い、投資家になることを目指すべし。業績改善によりオーナーとして配当収入を得ることができほか、会社の売却によりキャッシュを得ることも出来る

簡単に纏めると上記のような内容かと思います。

先日、役職定年を迎えた大手企業の部長は、役職定年後の年収の低さから、中小企業(上場企業)の社外取締役になる道を探ることをブログで書かせて頂きましたが、同じことが本書のベースにあります。

50代後半以降の残りの人生を低収入のまま元の勤務先で惨めに過ごすよりも、個人M&Aをして資本家になりなさいという趣旨は良く分かります。

しかし、あたり前ですが、会社を買っても、必ずしもうまく経営がいくことがないのも事実です。中小企業のオーナーが高齢で自分の子供が事業を継承しないため廃業する、または、日本M&Aセンターといった国内の未上場専門のM&A仲介会社を使って会社を売却することが多いのはご存知かと思います。

儲かるビジネスであれば、オーナーは息子に継がせるのであり、息子は親父の会社を継ぐより、サラリーマンをやった方が稼げると判断して後をつがないのであり、そのような会社を個人M&Aで買収して資本家となっても大きな収入を得るのは難しいことでしょう。特に300万円程度でオーナーが株式を手放すような会社の営業利益、純利益などはたいしたものではないことは容易に想像できます。

ただ、著者のいうように、大手企業の部長などの一般従業員はそれなりの管理能力や専門知識があり、それをうまく活かせば、大きな収入も得られる可能性もあるのかも知れません。

著者によれば、未上場の中小企業は大手企業の方がびっくりするくらい当たり前のことが出来ていないことが本当に多く、普通に大手企業で業務をしてきたという経験自体が、中小企業では1つの財産になり得るというようなことが書いてありました。

書籍の内容は全く深いものでもなく、じっくり真面目に腰をそえて読むようなものでは全くないのですが、自己啓発の類の書籍として面白いと思いました。