本日は、企業の理論株価分析として、サム・オブ・ザ・パーツについて説明します。
複数の事業セグメントを持つ企業の理論株価を分析するバリューエーション方法になります。具体例をあげて説明します。
甲会社という上場企業があり(株価800円、発行済株式数 7,000万株)、甲会社は電子部品事業と診断薬事業の2つの事業セグメントがあり、各事業のEBITDAは次のとおりとします。
電子部品事業 EBITDA 100億円(=営業利益60億円+減価償却費40億円)
診断薬事業 EBITDA 40 億円 (=営業利益30億円 +減価償却費10億円)
複数の事業セグメントを持つ企業は、有価証券報告書において、事業別の売上高、営業利益、減価償却費が開示されていることが多いと思います。
ここで、電子部品事業と診断薬事業のそれぞれのくくりでマルチプル法でそれぞれの事業価値を算出します。電子部品事業の業界には、競合他社が5社存在、一方、診断薬事業には、競合他社が7社存在するとします。
EV / EBITDA倍率が、電子部品事業の5社平均では7倍、診断薬事業は10倍とします。EV=株式時価総額+ネットデットで、EV / EBITDA倍率 = EV ÷ EBITDAの算式より算出します。次のとおりになります。
電子部品事業 EV= 100億円 × 7倍=700億円
診断薬事業 EV= 40億円 × 10倍=400億円
よって、甲会社のEVは合計して1,100億円となります。
そして、ここから理論株式価値を算出します。EV=株式時価総額(株式価値)+ネットデットより、株式価値=EV-ネットデットになります。
ここで、甲会社のネットデット(=有利子負債-現預金)が仮に400億円とすると、株式価値=1,100億円-400億円=700億円になります。
そして、発行済株式数7,000万株であるため、1株当たりの株式価値=1,000円(700億円÷7,000万株)となります。とすると、甲会社の市場株価は、現在800円で、理論株価より200円低いことになります。これがサム・オブ・ザ・パーツによる理論株価算出の考え方になります。
この方法によると、複数の事業セグメントを持つ企業の理論株価が比較的簡単に算出できることになります。ただし、よく言われることですが、次のような課題(欠点)もあると思います。
1.競合会社の株価が全体的に低くても、将来業績への市場の期待から株価が非常に高い企業が1社含まれるような場合、倍率(マルチプル)が異常値になる
2.同じ業界の上場企業が少ないと評価が難しい
上記のような欠点があると甲会社の理論株価の説得度が低くなりますので、サム・オブ
・ザ・パーツによって理論株価を算出するには、異常値の競合他社の数値は除くなどの作業が必要になります。
そうしないと、理論株価と市場株価の乖離を投資先企業に指摘しても、反論を受けることになります。