中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

改訂コーポレートガバナンス・コードを踏まえた個人株主のアクティビズムの可能性(1)

4月17日に改訂コーポレートガバナンス・コード案(改訂CGコード)に対する経済団体連合会経団連)の意見が経団連のホームページで公表されました。

改訂CGコードは、4月下旬締め切りでパブリックコメントを募集していますので、これに基づく意見になります。

経団連の意見の内容を見ますと、政策保有株式、企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮、CEOの選解任などについて変更を求める提案をしております。

経団連のホームページで一度見て頂ければと思いますが、企業で実務を行う私としては、いずれの意見も実務に即した合理的な意見と感じています。

今回のフォローアップ会議のメンバー構成についても意見が出ており、フォローアップ会議の討議が、コンサルや大学教授等が中心になっており、上場企業の実務メンバーが入っていないことが課題であるので、企業サイドの委員も入れるようにとの内容です。少し乱暴な言い方をすると、企業実務を知らないメンバーだけで議論して、方向違いの方針を決定することは非常に問題であるいう不満かと思います。

しかし、経団連の意見は出されてはおりますが、改訂CGコードは東証から3月30日に公表された案で決定するように思えます。パブリックコメントが4月末までの募集とされていますが、その一方で、既に改訂CGコードで東証による企業向けの説明会が開始されているからです。

企業の実態に即していないという経団連の意見があるにせよ、上場企業は改訂CGコードに向けた対応が今後必要になります。

ここから本題に入るのですが、今回の改訂CGコードは、個人株主にとっても企業に対するアクティビズム活動をする大きな材料になっていくかと思います。

株主アクティビズムとは、企業に直接働きかけて改革を促すことで、株主リターンの向上を狙うことをいいます。より端的にいうと、企業に不採算事業の分離を迫り利益率改善による株価向上や政策保有株式の解消によるキャッシュの株主還元を提案してインカムゲインの向上を目指すといったようなことです。

今回の改訂CGコードでは、企業の配当性向を「〇〇パーセントにせよ」といったようにそれ自体が直ちに株主リターン向上に直結する改訂は入っていませんが、いずれの改訂事項も株主リターンに間接的には結びついていく内容と思います。そもそも改訂CGコードの前提として、上場企業の約700社がPBR1倍割れという現状の課題の改善があるかと思います。つまり企業の時価総額向上(=株価向上)を目指したものです。

改訂コードの十分な対応が出来ていない企業に対しては、個人株主も、有価証券報告書コーポレートガバナンス報告書、事業報告書などの開示書類から対応不十分な点を洗い出し、対応改善と企業価値向上を絡めて論理的に整理して株主提案をすれば、他の株主の賛同を得て、株主リターンの向上も期待し得ると言えます。

株主提案には、300単位の株式(1単位100株の企業の場合、30,000株です)が必要ですが、時価総額の小さい中小型銘柄企業の株式は、個人株主も複数名でお金を出し合えば、300単位を取得することもそれほど高いハードルではないと思います。

これらの企業は、必ずしもガバナンス体制に関する意識が高いわけでもないので、コーポレートガバナンス体制の整備も今後必ずしも十分には出来ないものと予想します。結果、政策保有株式なども特段の意識なく従来どおり保有継続する、または、意識はあるが対応の取り組みを行わないなどの結果、株主アクティビズムの材料を抱えることになります。

株主の立場の目線から、今回の改訂コードをもとに改訂コードの主な項目と株主リターンの向上の提案をどう結びつけることが出来るかの大まかな考え方を今週末を目途に、ブログで掲載してみたいと思います。

逆に上場企業サイドからいうと、特に中小型銘柄企業にとっては、このようなリスクが現実のものとしてあるということを認識して、しっかりとした対応を考える必要があると思います。