2018年3月1日に日本ペイントホールディングス(以下「日本ペイント」)が、シンガポール大手塗料メーカーであり、日本ペイントの筆頭株主であるウットラムからの株主提案に対して、取締役会は賛成する旨のプレスリリースを出しました。
株主提案が出された場合、これに反対する場合には、株主総会の招集通知に取締役会は反対するということで取締役会は反対の理由を記載して、株主提案への賛同を株主総会での株主の判断に委ねることになります。
日本ペイントのプレスリリースによれば、日本ペイントは、株主提案に記載されている取締役候補者を会社提案の取締役に含めて取締役議案として株主総会の招集通知を発送することになります。
ウットラムの推す取締役は、日本ペイントの取締役10名の中、日本ペイントの取締役であるゴー・ハップジン氏を含め6名を占めることになります。
ウットラムの日本ペイントへの出資比率は39%ですので、株主総会での議決権を通じて日本ペイントを支配することはできませんでしたが、取締役会の決議は、出席取締役の過半数で決議されるので取締役会の過半数を自社サイドの取締役が占めることで、ウットラムは取締役会、つまり経営を支配することができます。
日本経済新聞におけるゴー氏の記者会見でのコメントが、「(取締役候補者の)5人は自分の言いなりになる人物ではない」と強調したようです。普通であれば、半数以上の取締役を派遣すれば支配しているのと等しいのですが、あえてそうではないと強調しています。「乗っ取りではないのか?」との風評を気にしてのことと容易に想像します。
あらためて5名の経歴を見ますと、大手法律律事務所の弁護士などもおり、たしかにゴー氏のコメントも一理あるかも知れませんが、ウットラムが推す取締役が、ウットラムの総帥であるゴー氏に反対や異議を述べるということは通常は考えにくいように思えます。
新聞報道によれば、日本ペイントは社外取締役5名のうち、3~4名にとどめる方向を摸索していたようですので、その後の交渉でやむなくこの人数の取締役を受け入れたこになります。
今回の株主提案に対しては、法的には日本ペイントの取締役会は反対するということも可能でした。しかし、既にウットラムが39%の株式を保有しており、ウットラムが残り11%超の賛成票を獲得するには、委任状争奪戦に発展することになりますが、日本ペイントは勝算も低く、争った場合の世間からの印象も考えるとメリットはないと判断したことによるのではないでしょうか。
先日、村上ファンドが社外取締役を送り込んだ黒田電気はその後、上場廃止となりましたが、日本ペイントの今後の行方も気になります。
ROEは約7%ですが、このあたりが今後株主還元を増やして、向上するのか経営指標を時々見て行きたいと思います。