中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

GMOインターネットに対する香港投資ファンドのオアシスからの株主提案(3/21に株主総会開催)

GMOインターネツト㈱(以下「GMO」)の本年3月21日に開催される定時株主総会(12月決算期)において、香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメント・カンパニーが株主提案を出していましたが、3月6日付でGMO株主総会の招集通知を発送しており、その中で株主提案に対するGMOの取締役会の回答が公表されていました。

株主提案に対しては、取締役会は全て反対するという内容です。株主提案はいくつかありますが、買収防衛策に限定しますと、次のような内容です。

<オアシスによる株主提案の内容>
1 GMOの持つ買収防衛策の廃止
2 GMOが買収防衛策を継続するとしても、買収防衛策の導入継続については株主総会の決議を条件とするスキームに変更する定款の一部変更

それぞれに対するGMOの回答は、インターネットで招集通知をご覧頂ければと思いますが、簡単に1と2についてのみポイントのみを記載します。

GMOの取締役会の回答サマリー>

1について
・買収防衛策があることで、買収者が出現した場合、取締役会の意見が適切に株主に提供できるので株主の共同利益に資する
・買収防衛策の発動にあたっては、取締役会は独立委員会の勧告を最大限尊重し、取締役全員の賛成を発動条件としており、恣意的発動ができない設計
・金商法による手続きだけでは、株主の判断に資する十分な情報の収集・提供は不十分
上記理由から、買収防衛策の廃止の提案には反対
2について
上記1と同じような理由

いずれも反論としては一般的に良く言われていることで、何ら目新しいものではなく、個人的にはこの程度の理由付けで、機関投資家を十分に説得するのは難しいように感じました。

GMOの1の回答に関していいますと、機関投資家などからは、買収への応募の是非は自分たちで判断できるので、いちいち会社から情報を提供してもらう必要などないということは良く言われます。これは買収防衛策を不要とする機関投資家の多くの意見であり、もっともな指摘かと思います。

また、2については、ただでさえ買収防衛策に対する機関投資家の判断が厳しくなる中、取締役会の決議で導入・継続できるというスキームでは機関投資家の納得は得られないのではないでしょうか。

買収防衛策を廃止する上場企業が増える中、廃止提案に対して機関投資家を論理的に説得するということ自体が今や非常に難しいので、今回のような理由にならざるを得ないことは十分に理解します。しかし、理由付けは極めて一般的かつ形式的なものとの印象を持ちます。

このように会社側の理由が非常に説得性の乏しいものですが、ポイントは、安定株主がどの程度存在し、GMO側に立ってくれるかにつきます。

GMO株主総会招集通知に記載の株主構成比率を見ますと、外国人株主比率は32%となっております。

外国人とは海外機関投資家と考えますが、海外機関投資家は、ISS、グラスルイスの議決権行使推奨に従うことが多いところ、ISS、グラスルイスとも買収防衛策議案は反対を推奨することから、外国人株主の多くはオアシス側にまわると推測されます。

また金融機関は13.87%となっています。これはいわゆる都銀、地銀等の普通銀行とともに国内機関投資家が含まれているかと推測しますが、国内機関投資家は、今や買収防衛策には反対が大勢です。したがって、オアシス側に立つと推測します。

とすると、残りの国内法人31.51%と個人・その他の20.74%のどの程度がGMO側に立つかにかかってきます。

ここで大株主をみると、筆頭株主に「株式会社 熊谷正寿事務所 31.03%」となっております。これが国内法人に分類されているとすると、国内法人の31%はGMO側になります。

あとは個人ですが、熊谷正寿 氏が第2位の大株主で9.94%をもっていることを考えると、国内法人の31%とこの約9%をあわせて40%近くはGMO側に立つということになります。

買収防衛策の廃止は、会社法で特別決議事項と規定されてはいませんので、普通決議事項として50%の賛成が必要になることを考えると、GMOはあと10%程度のGMOに賛同する株主を確保すれば足ることになります。

有報等を詳細に見ていないので、正確な数値に誤りがあるかも知れませんが、もし、あと10%程度の賛成を確保することで足るのであれば会社側に分があるかも知れません。

いずれにせよ、議決権の個別結果開示の環境下、買収防衛策に対して厳しい目を向ける国内機関投資家がどういう判断をし、結果、どうなるのか関心のあるところです。

万一、株主提案が通ると、それが上場企業に対する買収防衛策の実務に与える影響も大きく、これを契機に日本企業に買収防衛策廃止の株主提案をしてくるアクティビストも増えるのではないかと想像します。

3月21日開催のGMO株主総会の結果を待ちたいと思います。