先日の新聞報道で、上場企業のサクセッションプラン(後継者計画)を開示した企業が17社あるということでした。企業を見ますと、東京エレクトロン、コニカミノルタ、キヤノン、日本ユニシスなどの会社が開示しているようです。
背景は、東証の企業統治方針において、「取締役会は後継者の計画について適切に監督すべき」と定めていることによるもので、機関投資家の中には後継者計画の詳細について要望があるようです。東証の上場企業3500社のうち17社しか開示していないということは、まだまだ開示している企業数はかなり低いようです。
上場企業といってもオーナー社長の企業とサラリーマン社長の企業に分かれますが、オーナー社長の企業は自分の子供、親戚が社長を継承するので、このタイプの企業が後継者計画をどこまで作成する必要があるかは疑問ですが、これ以外の多くの企業では、何らかの基準は内規としては保有しているのではないでしょうか。
新聞記事によると次のような内容のようです。
<2017年9月17日 日本経済新聞より抜粋>
コニカミノルタ
社長が後継者候補を推薦。指名委員会が仕事うぶりを評価し判断
日本ユニシス
「真摯さ」「先見性」「洞察力」など7項目で評価
ネットで詳細を検索したところ出てきませんでしたが、新聞報道での記載を読む限りは、特に驚くような内容ではないように思えます。具体的にこの程度の基準であれば、明文化しているか否かは別として、オーナ系企業は別として、通常の企業であればこうった基準は内規として、または、明文化されていなくとも当然の前提として考えているかと思います。そういう意味では、あえてこの程度の抽象的な内容のものを開示することの意味はないと考える方もいるかも知れません。
しかし、ここで考えなければならないのは、機関投資家は、企業が考えるより、企業の状況がなかなか分からないということです。抽象的な内容であっても、明文化され、開示されていないと、機関投資家は判断のしようがないのです。
先日、ある海外機関投資家のセミナーに参加したところ、まずは開示をしないと対話のきっかけがつかめないといっていました。このように、例え抽象的であっても明文化してそれを開示することにより、機関投資家との対話のきっかけになるのではないでしょうか。少なくとも何らからの基準があるということを資本市場にアピールできることにはなります。
とはいっても、個人的には、後継者計画を機関投資家はどのようにして評価するのかそもそもの疑問があります。
企業の役割は収益をあげて、利益をステークホルダーに還元することにあります。とすれば、いくら精緻な後継者計画を作成しようが、結果ありきで、選定された経営トップが業績を上げられず、結局配当も増やせない、株価も上げられないということになれば、機関投資家は十分なリターンを得ることが出来ず、結局はその経営トップは不適格であったと評価されることになります。
これを考えると、後継者計画を作成しても、どこまで意味があるのか疑問があります。
それとも、経営トップの選任基準ととともに、退任の基準も計画書で明確に定めておけば、機関投資家も納得するようにも思えるのですが、機関投資家が後継者計画に何を期待するのか少し分からないところがあります。