欧州委員会が、域外企業による欧州企業の買収審査を強化するようです。背景としては、中国企業による欧州企業の買収が増える中、安全保障に関わるEU企業の情報の流出を防止するためです。
約半年前に欧州企業の買収規制の現状について、外資系証券会社の投資銀行部門に聞いて少し調べたことがあるのですが、中国企業の欧州企業の買収を受け、欧州委員会が規制を強化する方向で検討中ということは聞いていましたが、今回、それが具体的に発表されたようです。
欧州企業おいてば、ドイツのクーカ社が中国の美的集団に買収されたほか、ドイツのアイクストロンが中国の投資ファンドに買収されそうになったりして、「インダストリー4.0」を標榜するドイツなどのEU諸国が中国企業の買収の対象になっていました。これに対して、EUで共通の審査基準を設けて、インフラやハイテクなどのEU企業の買収の事前審査を強化するようです。
では、日本では外資企業による買収について法規制はあるのでしょうか。
日本では一応、外為法による規制があり、防衛、原子力等に関わる事業を営む日本企業の株式の10%以上を取得する場合には、取得しようとする外国法人は、国に事前届出をし、その認可を受ける必要があります。
しかし、外為法の規定は、業種が特定されているなど、規制がそれほど厳しくないのが現状です。最近、外為法が改正され、これに伴い外資による対内投資規制も一部変更がありましたが、実質的な強化にはなっていません。例えば、国の審査を得ずに、日本企業の株式10%超を取得してもその効力は無効とはならないことになります。
EUでの規制強化の具体的内容は見ていませんので良くは分かりませんが、米国企業の買収は米国の規制が従来から厳しく(このため中国による米国企業の買収は難しい)、今回、EUの規制も厳しくなるのであれば、中国企業等の新興国企業の関心は規制の緩い日本企業に流れるのではないでしょうか。
そうすると、日本企業は自社で自己防衛をする必要があり、買収防衛策などが必要になります。
しかし、問題は、その一方で、買収防衛策に対して海外機関投資家、国内機関投資家はますます反対する傾向にあり、買収防衛策の導入・更新が厳しくなっています。とすると、日本企業は、時価総額を上げて買収されるリスクを低くする、または有事に備えてホワイトナイトを事前に探しておくといった方策を講じることが、今後重要になるように思えます。