出光興産が昭和シェル石油との合併による経営統合を目指している件に関して、出光の創業家が反対していることは、だいぶ以前から新聞報道されていますが、先日の報道で、出光の経営陣が公募増資を決定し、これに対して出光の発行済株式の約33%を持つ創業家が、公募増資は創業家の保有する持分の議決権の稀釈化となり、合併を容易にするものであるため反対しているとの報道がありました。
この件に関して、公募増資の意味と併せて説明をしたいと思います。
上場企業が資本市場から資金調達を行う手法としては、公募増資、第三者割当増資、株主割当増資の3つがあります。最初の2つが一般的で、簡単に違いを説明しますと次のとおりです。
<公募増資>
現在の株主や特定の第三者に限らず、広く一般の投資家を対象に株主を募集し、新株の割り当てを受ける権利を与えて行う増資
<第三者割当増資>
発行会社と関係のある特定の第三者に限定して新株の割当を行う方法
第三者割当増資は、業務提携先との関係強化や資本提携を行う場合、また、発行会社の経営状態が悪く株価が低いため普通の増資ができない場合の事業支援や会社再建の際に利用されることが多いです。
要するにひらたく言いますと、公募増資は不特定多数を相手に増資するケースで、第三者割当増資は、特定の第三者相手に増資をするケースです。いずれの場合にも既存の株主の持株比率は低下をすることになります。
第三者割当増資は、業務提携先との関係強化や資本提携を行う場合、また、発行会社の経営状態が悪く株価が低いため普通の増資ができない場合の事業支援や会社再建の際に利用されることが多いです。
要するにひらたく言いますと、公募増資は不特定多数を相手に増資するケースで、第三者割当増資は、特定の第三者相手に増資をするケースです。いずれの場合にも既存の株主の持株比率は低下をすることになります。
ちなみに株主割当増資は、全ての株主に保有比率に応じて均等に新株を発行するものであり、株主の持分比率の稀釈化は生じません。既存の株主に不利益を与えずに資金調達が出来る増資です。
今回、出光が公募増資を行いますと、新株があらたに発行され、発行済株式数が増えますので、創業家の持株比率は稀釈化(比率が低下する)することになります。
出光は昭和シェルと合併するに当たっては、出光の株主総会で合併議案の承認を得る必要があり、これは会社法上の特別決議事項になりますので、2/3以上(=66.7%)以上の賛成が必要になります。つまり、創業家の33%の反対があると株主総会で合併承認の議案は否決され、合併はできないことになります。そこで、出光の創業家と対立関係にある経営陣は、創業家が株主総会で議案に反対して合併が阻止されないよう、創業家の保有比率を低下させようとして公募増資を決定したということのようです。
ただし、問題は、特定の株主の持分を稀釈化するための増資は法的に課題がある点です。
出光は昭和シェルと合併するに当たっては、出光の株主総会で合併議案の承認を得る必要があり、これは会社法上の特別決議事項になりますので、2/3以上(=66.7%)以上の賛成が必要になります。つまり、創業家の33%の反対があると株主総会で合併承認の議案は否決され、合併はできないことになります。そこで、出光の創業家と対立関係にある経営陣は、創業家が株主総会で議案に反対して合併が阻止されないよう、創業家の保有比率を低下させようとして公募増資を決定したということのようです。
ただし、問題は、特定の株主の持分を稀釈化するための増資は法的に課題がある点です。
増資には、あくまで資金の使途(例:設備投資など)が必要であり、これがない場合、例えば特定の株主の持分比率の低下を主目的とする増資であるといった場合には、会社法上、新株の発行について差止請求が提起され、裁判で会社側が敗訴する可能性があります。過去(たしか2005年頃)のニッポン放送のフジテレビに対する新株予約権の発行のケースで、これはライブドアによる買収の防衛策として持株の希釈化を目的としたものですが、裁判所はこの新株予約権の支配権維持が主目的としたものであり、不公正発行に当たると判断しています。
ちなみに、新株予約権とは、新株を取得できる権利で、新株予約権を持つ者はその権利を行使することにより、会社の株式の交付を受けることができます。従って、最終的に新株の交付を受けることができるという点では、最初から新株を交付する第三割当増資と同じような効果を持つことになります。
この点、今後どのように進んでいくのか、または裁判になった時に興味深いところでありますが、一方で、仮にも上場会社でありながら、裁判沙汰に発展する可能性があるほどまでにサラリーマン経営陣とオーナーである創業家との関係がこじれているのも不思議なところです。