中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

アルファレオがクックパッド(2193)の株式を保有 ー クックパッドは事前警告型の買収防衛策を導入済

本日はツイッターでの諸々の情報収集・整理をしていました。私はフェイスブックはやっていないのですが(本名が出てしまうため)、ツイッターは、毎日の昼休み時間などでちょこちょこ見ているのですが、情報収集ツールとして便利だなとあらためて感じています。ということで、本日ツイッターを見ていたら、クックパットに関する情報がありましたので紹介します。

アルファレオが料理レシピサイト大手のクックパッドの株式を約9%保有しているようです。四季報オンラインでクックパッドを見たところ、直近では2022年3月29日にアルファレオらが変更報告書を提出しており、それによれば9.17%となっているようです。

アルファレオと言えばこれまで数年にわたり乾汽船との攻防がありましたが、クックパッドに標的を変えたのかも知れませんね。クックパッドの方はと言えば、本年3月25日開催の定時株主総会で事前警告型の買収防衛策を導入していました。以下は定時株主総会の招集通知になります。

https://pdf.irpocket.com/C2193/urNP/ib50/l6eM.pdf

買収防衛策の発動要件は20%以上の市場内外でのクックパッド株式の取得となっています。アルファレオの保有目的は「純投資」となっているようですが、今後、アルファレオの買い増しが進んだ場合、買収防衛策の発動を巡る争いに発展する可能性もあるかも知れません。

アルファレオは乾汽船との間で買収防衛策を巡る紛争が過去にありましたので、アルファレオは事前警告型の買収防衛策の意義を熟知しているかと思いますので、万一、争うに発展した場合にはクックパッドをどう攻めるのでしょうか。引き続き注視したいと思います。

ストラテジックキャピタルの株式会社ワキタへの株主提案の特設サイト ー 「政策保有株式に関する対話内容」が面白い

アクティビストであるストラテジックキャピタルが株式会社ワキタに対する株主提案について特設サイトを次のとおり開設しています。

株式会社ワキタ〜ワキタの株主価値向上に向けて〜 株式会社ストラテジックキャピタル

株主提案は、取締役の選任、配当性向100%、加重資本コストの開示、代表取締役社長の報酬の開示、政策保有株式の縮減に向けて行動することです。

タイトルだけ見ると、コーポレートガバナンス改革の最近の動きに照らして、いずれも一定の合理性がある株主提案のような印象を受けます。この中で、面白いのは政策保有株式で、次のURLにある「政策保有株式に関する対話内容」です。

https://proposal-for-wakita-from-sc-2022.com/task02

次の記述です(強調箇所は私が太字にしました)。

当社は2021年2月現在、約31億円もの政策保有株式を保有しており、これには株式会社横河ブリッジ(以下「横河ブリッジ」といいます。)、極東開発工業株式会社(以下「極東開発」といいます。)の株式も含まれます。ワキタ有価証券報告書において、「取引関係の維持・強化」を目的に両社の株式を保有していると主張していますが、横河ブリッジの髙田社長、極東開発の藤本総務課長はこれを否定しています。しかし、ワキタの成山執行役員はこのような両社長の発言を知ってなお、「取引関係の維持・強化を目的として株式を保有している」と主張しています。弊社としては、政策保有株式は一切保有するべきではないと考えております。しかし、ワキタの開示に則り、あえて「取引関係の維持・強化」の観点から政策保有株式の効用を検討しました。そして、「取引関係の維持・強化」が取引先の代表者に否定されてなお期待できるものとは到底考えられず、ワキタ経営陣は政策保有株式について適切に判断することができていないと考えております。そのため、一定の基準に沿った政策保有株式の売却を提案します。 

面白いですね。ストラテジックキャピタルの主張によれば、株式を保有されている企業が「取引関係の維持の目的がない」と言っているわけですね。政策保有株式を保有する場合には、保有の合理性を取締役会で検証して、開示することがコーポレートガバナンス・コードでは求められています。

ワキタが「取引関係の維持・強化あり」といっても肝心の相手先にそういう意識がないとなると、ワキタの主張はどうなるのでしょうか。ワキタの取締役会ではどのように政策保有株式の保有の合理性を検証したのか興味深いところではあります。

松屋が事前警告型の買収防衛策を継続更新する方向

名門百貨店である松屋(8237)の事前警告型の買収防衛策が本年の定時株主総会終結の時をもって更新期限満了となりますが、本日、継続更新する予定であることを公表しました。次のプレスリリースになります。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/82370/afdab33c/6690/4911/b764/2a2505fe9d6d/140120220412520223.pdf

本年の定時株主総会で株主の賛同が得られることを条件に継続更新です。中期経営計画も同時に発表していますね。

敵対的買収が当たり前になってきた時代ですので、「有事導入型の買収防衛策」も有効ですが、株主総会で買収者とガチンコの勝負になりますので、やはり経営陣がクビにされるリスクを出来る限り少なくしておくには、事前警告型の買収防衛策を導入・継続できるにこしたことはないですね。

外資規制でのコア業種に認定されても、東芝の買収問題で国の担当官が外資規制を逸脱する疑いのある行動をしたというような報道も前にあり、外資規制で国に庇護して貰うことはまず期待できないので、自分の身は自分で守る上で事前警告型の買収防衛策はあった方がよいです。

けど、アクティビスト、物言う株主から見たら事前警告型の買収防衛策は課題が沢山あることも事実です。物言う株主の立場から買収防衛策を有する企業をどう攻めることが出来るかのポイントは、後日、「物言う株主視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方」で解説をしたいと思います。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第3回)ー 政策保有株式の縮減

本日は物言う株主視点のコーポレートガバナンス・コードの読み方の第3回目を書きます。第2回からしばらく日が空いてしまいましたが(第2回の記事は最後に再掲しております)、第2回ではコーポレートガバナンス・コードの5原則を紹介しましたが、この5つの基本原則のうち、第1原則から、物言う株主の視点から企業に何を主張したり提案できるかということを書いていきます。

まず第1原則の「株主の権利・平等性の確保」ですが、次のとおり規定されています。

上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。

ここで言っていることは要するに、少数株主を保護せよということですね。この第1原則では、「資本政策の基本的な方針」「政策保有株式」「買収防衛策」あたりが物言う株主にとっての武器・材料になるかと思います。まず政策保有株式についてポイントを説明したいと思います。

これは物言う株主にとって格好の材料ですね。政策保有株式は2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂の時に大きく加筆されましたが、ここでのポイントをあげますと、第1に「政策保有株式を縮減せよ」、第2に「保有する場合には保有の合理性あることを開示せよ」、第3に「保有に合理性ある場合でも、議決権行使基準を策定して、その基準に即した適切な議決権行使をせよ」ということです。

まず第1の「政策保有株式は削減せよ」ということが企業には求められています。ではどこまで縮減すればよいのでしょうか?コーポレートガバナンス・コードでは縮減の限度は規定されていませんので、基本的にはゼロまで縮減が求められていると考えるべきでしょうか。これは多くの機関投資家に聞いても同じ回答かと思います。

しかしながら、ゼロまで縮減が出来ている企業は非常に少ないと思います。ゼロまで縮減せよと求めても、今のところは、他の株主の賛同を求めるのは実際には難しいところもあります。そこで、政策保有株式の保有金額の大きい企業が物言う株主の標的になってきます。ではどの程度の政策保有株式を持つ企業が標的になるでしょうか?目安はあるでしょうか?

答えは、純資産の20%を超える政策保有株式を有する企業は、物言う株主の標的にしやすいと言えます。議決権行使助言会社であるISSは、純資産の20%を超える政策保有株式を有する企業の経営トップに反対推奨をしています。「純資産の20%を超える企業」の経営トップはトップとしてふさわしくないということを言っているわけです。日本の機関投資家と会話をしても、ISSの基準を意識して、20%を基準に経営トップに反対する方向で検討しているという声が良く聞かれます。

従い、純資産の20%を超える政策保有株式を有する企業に政策保有株式の縮減を求めることは、他の機関投資家の賛同が得られる可能性が高いということになります。20%を超える金額の政策保有株式を有する企業には、それだけで物言う株主にとって恰好の標的、つまり「政策保有株式を売却して換金して還元せよ」などを要求しやすいと言えます。

CGS(コーポレートガバナンスシステム)研究会(第3期) ー 第4回会議の事務局資料が公表

フィデリティ投信のテンバガーハンターの2022年2月21日現在の組入資産の明細一覧が公表されました。昨年末から保有増となった銘柄などを本日は時間を見つけて四季報で眺める予定です。ヒノキヤグループ、ミライト・ホールディングス、新日本建設、ベルテクスコーポレーションなどの株数を増やしているようです。

さて、コーポレートガバナンスシステム研究会(CGS研究会)の第4回会議が4月6日に開催され、第4回の事務局資料が次のとおり公表されていました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/pdf/3_004_03_00.pdf

監督側の機能強化として、①執行側の機能強化に対応した監督機能の強化 ②コーポレートガバナンス・コード改訂を踏まえた検討事項(任意の指名委員会・報酬委員会の構成 ③スキル・マトリックス ④ボードサクセッション ⑤取締役会の実効性評価 投資家からの取締役の選任 ⑥社外取締役の質と量の向上等が議論された模様です。社長・CEOの解任・不再任基準なども議論されているようですね。

CEOの解任基準は2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂の際にはじめて盛り込まれた事項ですが、結局、定性的な解任基準を設定する企業がほとんどで、明確な数値基準、例えばROE5%以下が3年続いた場合はCEOは退任する等までの踏み込んだ基準を設定する企業がほとんどないのが現状です。これでは、株価低迷の中でもCEOはその地位に居座り続け、それが課題ということも前から言われています。投資家からの取締役の選任も色々と細かく資料に記載されているようですので、この事務局資料はしっかりと読んでみたいと思います。

前回の第3回会議のブログ記事も参考までに再掲いたします。

有事導入型の買収防衛策

週刊東洋経済の4月2日号に「経済超入門2022」という特集が掲載されています。ウクライナ危機をはじめ、インフレ、経済指標の読み方等が分かり易く書かれており、マクロ経済に関心のある方にはお薦めな記事です。

さて、今回は有事導入型の買収防衛策の事例を1つ紹介します。キャブタイヤケーブルとプラスチック成形品(ポリマテック)などを製造している三ッ星(5820)が4月8日に有事導入型の買収防衛策の導入を公表しました。プレスリリースは次のとおりです。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/5820/tdnet/2104734/00.pdf

プレスリリースの全文が読めていませんが、有事導入型の買収防衛策では、この1年の有事導入型の買収防衛策の発動に係る差し止め請求の裁判事例を見ると、対抗措置発動に当たっては株主総会の決議を得ることがポイントですが、三ッ星の有事導入型の買収防衛策も同様のスキームになっているのでしょうか?後日、時間を見つけてプレスリリースを読んでみたいと思います。

有事導入型の買収防衛策の最近の事例ですと、日本アジアグループ、富士興産、東京機械製作所新生銀行のケースなどがあります。旬刊商事法務で「買収防衛策に関する裁判所の判断枠組みと実務からの示唆」という記事が3回にわたり連載されていますが、最近の事例の裁判例のポイントが整理されているので、買収防衛策に関心のある企業の実務のご担当の方は、是非ご一読をされると良いかと思います。

なお、ブログでも少し前に有事導入型の買収防衛策について記事を書いていますので、再掲いたします。

インフロニアによる東洋建設のTOB ー レノは株式保有比率が減少

本日は、最近のコーポレートガバナンス改革の経済産業省の複数の研究会の動きを整理しました。人材版伊藤レポート2.0のドラフトが公表されましたが、他にCGS研究会が継続開催されているほか、人権デューディリジェンスに関する研究会も開催されているようですね。

各研究会が今後公表するであろう成果物に上場企業は従う必要はありませんが、物言う株主がこれらの成果物を企業攻撃の材料にする点は注意が必要です。上場企業の経営トップ、コーポレート担当役員は各種研究会の動きや成果物は、今後注視して理論武装をしておく必要はあります。ブログでも最近の動きは記事を書く予定です。

さて、インフロニアHDが東洋建設にTOBを行っている最中ですが、旧村上ファンドのレノが2月3日付けの大量保有報告書によれば、約7%の東洋建設株を保有していましたが、その後の変更報告書によれば、持株比率を減らしたようですね。四季報オンラインでの3月30日の変更報告書によれば、レノの保有比率は1.89%まで低下したようです。

かわりに、ダブリューケイ・ワン(英国領・ケイマン諸島)なる投資家が保有比率を高めているようですね。これも四季報オンラインの東洋建設のページでの情報ですが、4月5日に変更報告書を出しており約10%保有し、保有目的は「純投資」となっているようです。東洋建設株の本日の終値は840円で、TOB価格を上回っています。今後、ダブリューケイ・ワンが何が動きに出るのか要注視ですね。前回の東洋建設株のTOBの記事を再掲します。

物言う株主(アクティビスト)の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第2回)ー まずは5原則です

本日から、物言う株主の視点からコーポレートガバナンス・コードをどう考えるべきかということについて、連載を進めます(時々、別の記事も書いていきます)。前回、第1回ということで次のとおり簡単に掲載しましたので、本日が第2回となります。

ブログですと1回の文章量が多いと読む気が失せるという方も多いと思いますので(私もそうですが)、文章自体を簡潔にするとともに、読みやすいよう、1つのテーマについても何度かに分けて掲載するようにしたいと思います。

コーポレートガバナンス・コードは5つの基本原則で構成されており、各原則の下に数多くの原則・補充原則が規定されています。まずはこの5つの基本原則を見たいと思いますが、次のとおりです。

  1. 株主の権利・平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

各基本原則の下にある原則・補充原則が物言う株主の恰好の材料になるわけですが、まずは基本原則の考え方を理解するのが大事かと思います。骨子ですね。その骨子の下で各原則・補充原則は規定されているからです。

ところで、コーポレートガバナンス・コードにおいて、「コーポレートガバナンス・コードについて」ということで冒頭に次の記述があります。

本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。

つまり、このコードに規定した原則・補充原則を実践することは、会社、投資家、ひいては経済全体の発展に寄与するとされています。逆にいうと、このコードを遵守しないことは、経済全体の発展にマイナスとなる可能性があるということを言っているわけです。ですから、物言う株主がコードの趣旨に基づく、主張や株主提案を会社にすることは基本的に合理的があるのです。

機関投資家は、スチュワードシップ・コードの下で、投資先企業の株主総会での議決権行使結果の個別開示が求めれています。つまり、ガラス張りになっているのです。これまでは「会社の社長と仲が良いから会社に賛成しよう(=株主提案には反対しよう)」ということが可能でしたが、これが難しくなったということです。だって、株主提案が企業価値向上に繋がるものである場合には、それに賛同しないということはアセットオーナーの資産アップに反する行為ということになるのです。物言う株主の主張がコードに基づく合理性のあるものである場合には、賛成をしないと、アセットオーナーから資金運用を任せてもらえなくなってしまいます。

ということで、物言う株主が合理的な株主提案をする上で、コーポレートガバナンス・コードを武器としてどう利用するのか、次回から、1番目の基本原則の「株主の権利・平等性の確保」から、物言う株主にとっての武器(企業側から見たら防御すべきポイント)となる点を分かりやすく解説します。

人材版伊藤レポート2.0(案)が公表

本日は1週間に1回の在宅での仕事の日です。色々と資料をプリントアウトして自宅に持ち帰りました。IR部門と一緒に統合報告書の骨格作りをしているので、本日は、社外取締役インタビュー(最近、これを記載する企業が多いです)などの骨子を考える作業に重点を置く予定です。「物言う株主の視点でのコーポレートガバナンス・コードの読み方」も次回あたりからブログで記事を連載して行きます。

さて、本日は簡単に情報紹介いたします。

経済産業省で「人的資本経営の実現の向けた検討会」が開催されていますが、3月18日開催の第9回会議で「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書」(案)が次のとおり公表されました。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinteki_shihon/pdf/009_02_00.pdf

「人材版伊藤レポート2.0」ということです。例の伊藤教授が座長の検討会ですのでこの名称になったのでしょう。71ページありますが、文字が大きく、何故か行間もかなり広いので、実際のところ文章量は40ページ程度といったところでしょうか。

まだ内容が読めていないのですが、中長期投資の機関投資家は最近人的資本に対して関心が高いところですので、それに関する内容も記載されているのだと思います。目次を読むと、「社員エンゲージメントを高めるための取組み」という内容もあり、社員の意識向上を図ることについても触れられています。

東芝の臨時株主総会の議案の賛成率が公表されました

3月24日の東芝の臨時株主総会で第1号議案である会社提案の「戦略的再編を進めることに関する株主の皆様のご意見確認の件」が否決されたことは報道のとおりですが、本日、議案の賛成率が開示されました。

EDINETに開示された臨時報告書によれば、賛成率が39.53%だったようです。つまり反対率が6割超ということです。たしか、東芝の株主構成は外国人株主が約50%だったと記憶していますが、それを超える反対があったということになるかと思います。

やはり議決権行使助言会社であるISSとグラスルイスが会社提案に反対推奨をしたことが大きな要因の1つかと思います。これによって国内機関投資家も判断に迷ったところも多いのではないでしょうか。国内機関投資家の賛否の結果が気になるところです。

ちなみに、3月24日の東芝の臨時株主総会の議案の内容は次の東芝のプレスリリースに詳しく記載されています。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20220214_2.pdf

私は、業務上、東芝の臨時株主総会議案を分析する必要が急遽発生し、本日の午前中の2時間集中して東芝の臨時株主総会の招集通知及び各種開示資料について、某大手法律事務所の弁護士(この4~5年いつも案件で一緒にしている方です)と電話で話をしながら確認・分析作業をしました。おかげで東芝の今回検討していたスキームの概要を短時間で理解できました。

今回、否決されたことで東芝は戦略の策定を大きく変更する必要がありますね。そもそも報道によれば、先日、社長になった方は臨時株主総会の議案の策定に関与していないということですので、新体制であらたな戦略策定をするのでしょう。

四半期決算開示書類の一本化の検討 ー 四半期報告書は無駄な開示資料でしょうね

本日の日経新聞に政府が決算開示書類の一本化の検討に入ったとの記事が掲載されていました。以下は3月26日の日経新聞電子版です。

決算書類の一本化を検討: 日本経済新聞

四半期毎に上場企業の財務部門が中心になり作成・開示している書類には、四半期決算短信と四半期報告書があります。前者は東証に提出する資料であり、後者は財務局に提出する資料です。この2つの資料の開示を1つにまとめることを検討するようですね。

とても良いことだと思います。四半期決算短信が四半期報告書に先行して開示されますが、四半期報告書の内容は、四半期決算短信と重複し、また、重複しない情報(四半期報告書のみに掲載される情報)も一部ありますが、これは正直なところ投資家にとってどうでもよい内容がほとんでです。投資家にとって最大の関心事項である四半期の財務数値は四半期決算短信に書いてあるので、後日遅れて四半期報告書に掲載されても誰も読みません。

上場企業で決算・開示実務を担当している方(マネジメント含め)は「四半期報告書は無駄な開示資料だよな」と思いながら作成しているケースが多いかと思います。四半期報告書は無駄なので廃止することに上場企業の多くは賛成し、機関投資家も困らないのだと思います。

なお、期末に発行する決算短信(通期決算)と定時株主総会後に開示される有価証券報告書は記載されている内容が大きく異なりますので、これは今後も継続が必要であることは当然です。四半期報告書も継続するのであれば、記述情報(非財務情報)を厚くする必要がありますが、そうすると上場企業には負担が大きくなるので、これも悩ましいところです。

東芝の臨時株主総会が開催 ー 今後は戦略の見直しが必要になってきますね

既にマスコミで大きく報道のとおりですが、昨日の東芝の臨時株主総会で会社提案と株主提案のいずれも否決されたようです。昨日、東芝が次のプレスリリースを公表しました。

https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20220324_1.pdf?_ga=2.99925405.22346945.1648155088-2095180355.1646947406

東芝は今後、戦略の見直しが必要となりますね。こういう混乱に乗じて、社内外で色々な動きが今後出てくるかも知れません。経営にどういう影響が出てくるのか東芝の株主の方は注意が必要ですね。後日、株主総会の議決権の賛否比率について臨時報告書が提出されるはずですので、見てみたいと思います。

インフロニアが東洋建設にTOB ー 東洋建設には投資ファンドが株主にいますが今後の行方は?

将来の副業に向けた準備等でバタバタとしており、なかなかブログの更新に十分な時間が割けていないところですが、昨日の新聞記事から1つ。

インフロニアHDが東洋建設にTOBを行うことが3月22日に公表されました。東洋建設のプレスリリースは次のとおりです。

https://www.toyo-const.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/03/20220322-1.pdf

賛同表明しているようです。敵対的TOBではないので賛同するのは当然ではありますが、TOB価格は1株につき770円となっています。

プレスリリースの11ページから12ページあたりに株価算定の経緯が記載されていますが、ざっと読むと、当初は、PBR1倍にあたる株価水準(2021年12月31日時点の1株当たり連結純資産は約700円)を上回る価格とすることなどから720円とする旨の提案があったようですが、その後、何度か交渉を行い770円となったようなことが記載されています(正確なところはプレスリリースを読んで頂ければと思いまます)。

けど、TOBの公表を受けて、昨日の東洋建設の株価終値は788円とTOB価格を超えてしまいましたね。TOB価格が低いと投資家は判断したのでしょうか。

と思いつつ四季報オンラインで東洋建設を見たところ、2月3日付けの大量保有報告書が出ており、アクティビストである投資ファンドのレノが約7%の株式を保有しているようです。ゼネコンはアクティビスト天国ですが、東洋建設も結構な株数を持たれていますね。TOBの対象会社にアクティビストがいる場合、TOB価格が低いと判断する場合には、アクティビイストがTOB価格の見直しを求めることはこれまでも何度もありましたが、レノはTOB価格の見直しを求めるのでしょうか?今後、動きがあればブログでも書きたいと思います。

さて、週末あたりから「物言う株主視点でのコーポレートガバナンスコードの読み方」を書き始めたいと思います。

物言う株主の視点からのコーポレートガバナンス・コードの読み方(第1回) ー はじめに

3月18日に四季報が発売、四季報オンラインのデータが更新されたことを受け、明日からは、保有銘柄と関連銘柄の四季報データの読み込みをする予定です。中小型銘柄はアナリストレポートも発行されておらず、また、IRの情報開示に消極的(=時代遅れ)な企業も多いので、四季報の記事は参考になります。個人投資家の方は、四季報を読んだ上で、企業のIR部門にどんどん質問するとよいと思います(保有銘柄でない場合には躊躇することもあるかと思いますが、保有銘柄であれば個人株主は何の遠慮もなく、IR部門に何度も電話またはメールで質問することをお薦めします)。

本題ですが、連休明けから、業務上の必要がありコーポレートガバナンス・コードの全原則・補充原則を1つ1つ分析して、他社の対応事例を分析する作業を行う予定です。背景の詳細はお話が出来ないのですが、上場企業のコーポレートガバナンスの取組み状況の調査といったところです。

コーポレートガバナンス・コード(=CGコード)が制定されたのは2015年です。2015年当時にCGコードの実務を担当された方は、当時はかなり深く勉強されたのだと思います。しかし、そこから既に7年が経ちます。その間に2018年、2021年と2回の改訂がありました。企業では人事異動もあるので2回の改訂の時の実務ご担当の方は2015年には担当していなかったという企業もかなり多いのだと思います。

そういう企業は要注意です。何故ならば、アクティビストはCGコードをかなり細かく分析しており、今や企業を攻撃して、他の機関投資家の賛同を得る上での材料にしているからです。このため、上場企業の実務担当者は、株主総会の時期も近づいていることもあり、CGコードを深く読むことが必要だと思います。2018年からはじめてCGコードを担当したという方であれば、2018年の改訂の箇所には精通しているものの、全体の理解が不十分というケースもかなりあると思います。

そこで、このブログでは、コーポレートガバナンス・コードを詳しく連載形式で解説して行きたいと思います。ただし、単なる解説ですと面白くないかと思います。そこで、物言う株主の視点から解説を加えていきたいと思います。

つまり、物言う株主の視点から、CGコードのポイントを説明します物言う株主活動をされるプロの機関投資家個人投資家の方に参考になるような内容にしたいと思います。個人投資家コーポレートガバナンス・コードの理解を深めることが企業価値の向上にも繋がるのだと私は思っています。

先日、「コーポレートガバナンス報告書の読み方」をブログで今後掲載する予定であること以下記事に書きましたが、「物言う株主の視点からのコーポレートガバナンス・コード」の方に統合して、こちらで記事を書いていきたいと思います。

次回は、まずはCGコードの5つの基本原則である「株主の権利・平等性の確保」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主との対話」について大きな観点についてポイントを解説したいと思います。是非、ご関心のある方は今後も連載記事をご覧頂き、また、お気づきの点などあればご質問を頂ければと思います。

株主提案に対する議決権行使助言会社の賛成推奨分析が今後大事

先日、東芝の分割案の株主総会議案に対して議決権行使助言会社のISSが反対推奨したことが新聞で大きく報道されました。ISSの賛否推奨に海外機関投資家はどうしても頼らざるを得ません。日本企業のコーポレートガバナンスはじめ法制の詳細を知ることには限界がありますので(外国人が日本法制に精通していないことは当然と言えば当然)、ISSの賛否推奨に頼るところが大きくなります。ISSの判断がその企業の施策を決定するというのは、巨大な権限を持ち過ぎであり、問題であると私は考えますが、しかし、この状況がこの数年で改善されるとは思えません。

では企業として何をなすべきかといいますと、株主提案についてISSが賛成推奨をした案件をきちんと分析することが大事になるのだと思います。

最近の事例ですと、3月29日に株主総会の開催を予定している鳥居薬品に株主提案がなされていますが、それについてISSが賛成推奨をしました。次のプレスリリースに詳細が記載されています。

https://www.torii.co.jp/release/2022/20220310_1.pdf

賛成推奨した株主提案は、定款一部変更の件(日本たばこ産業からの天下りの禁止)、定款一部変更の件(資本コストの開示)などです。ISSの賛否推奨レポートは英文であり、かつ、一般には入手できないので(有料)詳細全文は私は読めていませんが、プレスリリースを読むと、ISSの賛成推奨のポイントが記載されています。

当然、鳥居薬品は反論をしていますが、個人的には「資本コストの開示」などの株主提案の内容は極めて合理的であり、その点をISSは評価して賛成推奨したのだと思います。機関投資家と会話をすると株主資本コスト、資本コストの開示を求める声も強いです。ブログでは今回の株主提案の詳細分析まではしませんが、上場企業は他社での株主提案の事例を「自社のこと」と考えて分析することが、今後、より大事になってくるのだと思います。

ところで、「鳥居薬品への株主提案の可決の行方はどうか?」というと、定款変更は株主総会の特別決議であるため68%程度の株主の賛同が必要なところ、鳥居薬品の株式の過半数は日本たばこが有しおり、日本たばこは株主提案に反対するのだと思いますので、株主提案が可決される可能性は極めてゼロなのだと想像します。

大事なのは否決・可決ではなく、今回の株主提案に賛同する株主がどの程度出てくるかを企業は分析する必要があります。総会後に臨時報告書が開示されますので、後日、賛成率を記事で書く予定です。