コーポレートガバナンス、株式投資、企業価値、IRなどに関する投資家目線での実務ニュース ー 強い意志のある投資を目指して

コーポレートガバナンス、中長期での株式投資、企業分析、企業価値評価、IR等について、新聞記事を中心に投資銀行・東証1部事業会社での実務経験を通じて気づいた観点を踏まえて分かりやすく解説していきます

SBIと新生銀行の攻防(第19回) ー SBIが新生銀行へのTOBに関する機関投資家説明会を開催

11月25日に新生銀行の臨時株主総会が開催されますが、新生銀行の株主である預金保険機構の賛否の行方が気になるところですが、本日、SBI新生銀行に対する「建設的TOB」に関する機関投資家向け説明会を開催しました。説明会の様子が動画でホームページでも見れますが、説明会資料は以下のとおりです。

https://www.sbigroup.co.jp/investors/library/presentation/pdf/presen211112.pdf

内容としては、TOBの上限を48%と定めた理由のほか、新生銀行の臨時株主総会で買収防衛策議案が可決された場合にはTOBを撤回する予定であること、TOBが成功した後に想定される対応として、少数株主保護の仕組みなどを北尾社長が説明をしています。私は動画視聴は途中でやめてしまったのですが、資料後半には買収後の地域金融機関向けの新戦略なども記載されているので、時間のある方は聞いてみると参考になる情報を得ることが出来るかも知れません。

  •  9月 9日 SBI:株式公開買付(TOB)を公表
  •  9月 9日 新生 :TOBのお知らせを公表
  •  9月17日 新生 :取締役会決議で買収防衛策を導入
  •  9月17日 SBI:「新生銀行に対するTOBに関して」を公表
  •  9月22日 新生 :新株予約権無償割当ての発行登録のお知らせ
  •  9月24日 SBITOB期間の延長要請に対する対応を公表
  •  9月27日 新生 :TOB期間延長要請に対するSBI 回答状況のお知らせ 
  •  9月29日 SBITOB期間を延長(10月25日 ⇒ 12月8日)
  • 10月 1日 新生 :買収防衛策の発動を一時見送ることを公表
  • 10月 6日 新生 :独立社外取締役協議会組成のお知らせを公表
  • 10月18日 新生 :買収防衛策に係る取締役会評価期間の延長を決定
  • 10月21日 新生 :TOB への条件付反対を公表
  • 10月21日 SBI新生銀行の反対に対して反論公表
  • 10月21日 新生 :株主意思確認総会の開催(11月25日)を公表
  • 11月 5日 新生 :グラスルイスが買収防衛策に賛成推奨である旨を公表
  • 11月 8日 新生 :ISSが買収防衛策に賛成推奨である旨を公表
  • 11月12日 SBITOBに関する機関投資家向け説明会を開催

【株式投資】トヨタが12月の生産計画を公表 ー 80万台規模にとどまる

トヨタ自動車は先日の決算発表で2021年度の通期業績予想の売上高を変えず、自動車生産台数は900万台としているところですが、13日に、12月の生産台数の下方修正を次のとおり公表しました。

12月 生産計画について(11/12時点) | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

年間900万台の達成には、12月には100万台程度、1月~3月には毎月85万台程度の生産が必要になると少し前の11月5日の日経新聞記事に書かれていましたが、12月の段階でつまづいたようです。新聞報道によれば、計画達成には1~3月に過去最高水準の月産90万台が必要になる模様です。

半導体不足の影響は年明けから回復するとは言われていますが、本格回復は春以降であろうというような一部報道もあり、トヨタ自動車の今後の生産動向は注視が必要です。外国人労働者を中心に人手不足も原因の1つです。自動車大手で確保できても、サプライチェーンでの、特に中小の部品メーカーでの人手が完全に不足していることが完成車の生産にマイナス影響を与えているところかと思います。

ゼネコン株はアクティビスト天国 ー 今後も株主還元増を期待して「買い」か?

11月12日の日経新聞でも掲載されていましたがが、大手ゼネコンの安藤ハザマが2022年3月期と2023年3月期の2年間で350億円以上を株主還元に振り向けると発表しました。次のとおりです。

https://www.ad-hzm.co.jp/ir/pdf/pre/irnews/ir_20211111_04.pdf

自社株取得と配当を組み合わせた目標総還元性向は100%以上になり、この間稼いだ純利益の全額以上を株主に配分することになるようですね。

安藤ハザマと言えば香港のアクティビストのオアシス・マネジメントが株式を保有していますね。西松建設がシティインデックスイレブンスの要求により自社株買いを実施するなど、ゼネコンはアクティビスト天国ですね。おもちゃにされているようでです。

ゼネコンは古い体質で、解消が進んでいるとは言え、今だに多くの政策保有株式を抱えています。これが解消されるまでアクティビストにはいいようにされるのだと思います。今後の株主還元が期待できるので、アクティビストの投資するゼネコン銘柄は買いですね。

少し古いですが、2年前に安藤ハザマとオアシスの件をブログに記事に書いています。情報が古いのでアップデートが必要かと思いますが、ご参考までに再掲します。

富士興産と投資ファンドの攻防 ー アスリードキャピタルが買い増し

来週から仕事でマクロ経済指標のまとめと分析をすることになり、本日はこの1週間の日経新聞記事の経済関連記事の読み込み・整理とともに、ツイッターでの色々な情報整理をしていました。

富士興産の筆頭株主である投資ファンドアスリードキャピタルですが、11月11日に大量保有報告書を提出しており、それによれば、富士興産の保有株式比率は0.75ポイント増加し、16.02%となったようです。保有目的は「投資及び経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」です。

以前にアスリードは富士興産にTOBをかけていましたが、富士興産の株主意思確認総会で買収防衛策が可決されたことを受けて、アスリードTOBを撤回しています。けど、アスリード筆頭株主であることに変わりはなく、アスリードは買い増しているということです。

富士興産は8月25日付のプレスリリースで対抗措置としての新株予約権の無償割当を中止していますが、アスリードの買い増しが20%近くなった時点でまた買収防衛策に基づく対抗措置の発動を検討するかも知れませんね。当時のアスリードによるTOB価格は1,250円でしたが、富士興産の11月12日の株価終値は1,089円です。

SBIと新生銀行の攻防(第18回) ー 議決権行使助言会社のISSが買収防衛策に賛成推奨

11月25日に開催予定の新生銀行の株主意思確認総会で付議される新生銀行の買収防衛策に対して、議決権行使助言会社のグラスルイスが賛成推奨していることは以前に記事に書きましたが、本日、ISSも賛成推奨したことを新生銀行は次のとおり公表しました。

https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2021/211108_announcement_j.pdf

これにより議決権行使助言会社2社が賛成推奨ですね。新生銀行の外国人株主の多くは株主意思確認総会では買収防衛策議案に賛成票を投じることになります。あとは、預金保険機構の賛否の行方が気になるところです。

  • 9月 9日  SBI:株式公開買付(TOB)を公表
  • 9月 9日  新生 :TOBのお知らせを公表
  • 9月17日  新生 :取締役会決議で買収防衛策を導入
  • 9月17日  SBI:「新生銀行に対するTOBに関して」を公表
  • 9月22日  新生 :新株予約権無償割当ての発行登録のお知らせ
  • 9月24日  SBI TOB期間の延長要請に対する対応を公表
  • 9月27日  新生 :TOB期間延長要請に対するSBI 回答状況のお知らせ 
  • 9月29日  SBITOB期間を延長(10月25日 ⇒ 12月8日)
  • 10月 1日 新生 :買収防衛策の発動を一時見送ることを公表
  • 10月 6日 新生 :独立社外取締役協議会組成のお知らせを公表
  • 10月18日 新生 :買収防衛策に係る取締役会評価期間の延長を決定
  • 10月21日 新生 :TOB への条件付反対を公表
  • 10月21日 SBI 新生銀行の反対に対して反論公表
  • 10月21日 新生 :株主意思確認総会の開催(11月25日)を公表
  • 11月 5日 新生 :グラスルイスが買収防衛策に賛成推奨である旨を公表
  • 11月 8日 新生 :ISSが買収防衛策に賛成推奨である旨を公表

衛生陶器の中堅メーカーのアサヒ衛陶(5341)が株主提案を受け役員が全員辞任

東証二部でトイレや洗面化粧台など住宅設備機器を取り扱い、衛生陶器においてはTOTOLIXILに次ぐ中堅メーカーのアサヒ衛陶(5341)が11月下旬に臨時株主総会を開催することを公表しました。

https://www.asahieito.co.jp/application/upload/ir_tradepaper/syouken_20211104_1.pdf

プラスワンホールディングス株式会社及び劉巍氏という株主の請求による開催するようですが、驚いたことにアサヒ衛陶は役員全員が辞任するようですね。社長も辞任するようです。

https://www.asahieito.co.jp/application/upload/ir_tradepaper/syouken_20211104_2.pdf

提案を受け入れた理由は次のとおりです。

当社取締役会は、今回の本株主らの提案内容を検討し、本株主らが提案する取締役候補者の経歴等に照らし、その知見を活かした新たなビジネスへの取組み、海外事業の拡大展開への役割が期待でき、加えて現業務執行取締役の事業への継続関与により既存ビジネスの更なる展開を継続することが可能となると判断した結果、本株主らの事業戦略に賛同し、当社の今後の更なる成長と発展のために、本株主らが提案する取締役候補者を受け入れることとし、現在の取締役は本臨時株主総会における当該取締役候補者の選任時をもって全員辞任することといたしました。したがいまして、当社取締役会は、本株主提案に賛同いたします

四季報の大株主の記載によれば、プラスワンホールディングスの保有株式比率は2.8%となっています。なお、アサヒ衛陶の個人株主の何名かが保有比率を減らしており、大量保有報告書を出しています。

外資規制の事前審査対象企業リストが更新 ー コア業種該当企業はなんと約800社になりました

財務省が、11月2日に外資規制の事前審査の対象になる企業のリストを更新したことを次のとおり公表しました。

「本邦上場会社の外為法における対内直接投資等事前届出該当性リスト」の改訂について : 財務省

ブログでも過去に何回か掲載していますが、この外資規制ではコア業種に認定されるのが1つのポイントになります。今回の更新では、レアアース関連業種がコア業種に追加されました。

上場企業各社には、東証経由で財務省から該否の調査要請が事前に来ており、その回答を踏まえての更新となっていますが、今回の更新でコア業種該当企業は、直近715社だったのが801社に増加しました。

コア業種に該当することで、海外投資家等の海外企業が対象企業の1%以上の株式を純投資目的以外で取得する場合で、かつ一定の場合には事前に財務省への届出(審査)が必要になります。ただ、このコア業種に該当したからといって「政府が守ってくれるので安心」ということはならないので、コア業種に該当する企業の経営トップの方は、きちんと整理しておいた方がよいかと思います。過去にブログでコア業種の詳細について説明しておりますので、ご覧頂ければと思います。

知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 (第5回 ) ー 投資家がR&D投資について重視する内容

知財投資・活用戦略の有効な開示及びガバナンスに関する検討会 が10月15日に第5回会議が開催されており、事務局資料が次のとおり公表されています。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/tousi_kentokai/dai5/siryou3.pdf

この検討会は前回の会議での意見が冒頭に記載されるのですが、今回も前回会議の意見が結構な分量記載されています。

今回の第5回会議では、投資家が企業の研究開発(R&D)に期待する情報として、知財・無形資産の投資・活用に関する指標の在り方、IRの観点からの開示のあり方が議論されたようです。

投資家がR&D投資について重視する内容は、ビジネスモデルに関連付けたR&D情報、セグメント別R&D費用、投資回収時期の判断材料のようです。けど、これがきちんと開示できている企業は非常に少ないかと思います。ほとんどの企業は「売上高のm〇〇%をR&D投資費用とします」という開示にとどまっているのが現状かと思います。今回の会議の事務局資料では、好事例として日立製作所コニカミノルタのケースが紹介されています。

無形資産が企業の中長期的な企業価値向上において重要ということは分かるのですが、R&Dが企業の収益にどう結びついているかを明確に把握するのは難しいところであり、企業側も悩んでいるところは多いと多います。R&Dには基礎研究も含まれるし、基礎研究などは研究の過程でどう発展し、また、どの用途に使えるのかが分かってくるのであり(回収できないで終わるケースも非常に多い)、当初から企業の課題と明確に紐づけすることはできません。一方、投資家としては売上高の数パーセントを毎年企業が投じるR&Dの詳細は知りたいところではありますが、文章での開示ということを考えると、悩ましいですね。

とはいえ何もないと、情報の非対称性から投資家も不安で投資が出来ないということになるので、企業サイドとしては何らかの幹となる大きな指標を開示して、細かいところや今後の考えについては、機関投資家との対話でお互いの理解を深めるというのが妥当な気がします。年内に開示のガイドラインが出るようですが、引き続き注視してブログでも紹介したいと思います。

最後にこの検討会についての前回と前々回のブログの記事を再掲します。

オアシス・マネジメントが北越コーポに大王製紙株の売却要請 ー 他の製紙メーカーもこの提案書をしっかりと読むことをお薦めします

10月28日の日経新聞に掲載されていましたが、香港の投資ファンドのオアシス・マネジメントが北越コーポレーションに対して大王製紙株の売却要請をしているとのことです。オアシスの提案書は次のとおりとなります。

https://static1.squarespace.com/static/615e4cdaa4c5b26d3e5dd8b7/t/61766e5b0d878d509438731c/1635151472434/A_Better_Hokuetsu_J_vF.pdf

大王製紙の政策保有株式の売却のほかに、次なる中核事業としてのバイオマス発電への投資なども要請しているようですね。提案内容として以下が記載されています。

  1. 次の成長ドライバーとしてのバイオマス発電事業への投資(バイオマス発電所北越の成長ドライバーとなる)
  2.  既存の製紙事業のコスト構造改善とパッケージ事業への注力(紙パルプ事業のコスト見直し、 プラスチックの代替としての紙パッケージング業界における競争力の強化、 東南アジアにおけるパッケージング事業は成長ドライバーとなりうる
  3. ROEの改善およびバランスシートの効率化(政策保有株式の売却(大王株式を含む)、北越は競合他社と同様のクレジット・レシオを用いればROE7.2%の達成が可能、 社債の発行、 自己株式の取得)
  4.  コーポレート・ガバナンスの改善-今こそ変革の時( 13年間CEOをつとめた岸本氏の後継者育成、 取締役会の多様性・独立性の向上(現状は女性ゼロ)、 買収防衛策の廃止、 株式報酬割合の増加)

事業面についてかなり踏み込んだ分析をしている印象を受けます。恐らくどこかの投資銀行または戦略コンサルティング会社も起用して作成しているのだと思います。ESGなどにも踏み込んだ提案をしているようにも見えます。

また、北越コーポのCEOの岸本氏と言う方を徹底して批判しているのも興味深いですね。「岸本氏は自身のワンマン体制を維持するため、他のすべての取締役を解任してきた」という記載もあります。この文面だけを見ると、この岸本という方は「どういう人なの?」という興味がわいてきます。

製紙メーカー各社はこの提案書をしっかりと読んだ方がよいかと思います。オアシスが業界再編を提案するようなことになった場合、他の製紙メーカーの株式も取得して、北越コーポとの提携等も提案することも可能性としてはあるかと思います。

また、この提案書を読んで他のアクティビストが他の製紙メーカーに同様の提案をする可能性もあると思います。そういう可能性を考えると、製紙メーカー各社はこの提案書を読んで、自社に同じような提案があったらどう反論するか、どう対応するかを分析しておくことが重要です。

しかし、オアシスは電気興業、北越コーポともに事前警告型の買収防衛策を有している企業に果敢に攻めていますね。大量の株式を買増して買収防衛策の効力を争うのか、それとも株式取得は20%を下回る比率にとどめて、合理性のある提案をして、他の機関投資家の賛同を求めるの狙いがあるのでしょう。恐らく後者の狙いかとは想像しますが、今後が興味深いところです。

新しい資本主義実現会議 ー 第1回会議が開催(10月26日)

岸田首相が目指す「成長と分配の好循環」をどう実現させるのか議論する「新しい資本主義実現会議」の初会合が本日開催されたようです。この会議は「新しい資本主義実現本部の下、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、それに向けたビジョンを示し、その具体化を進めるため」の会議とされています。

報道によれば、11月上旬に緊急提言として取り纏めることを首相が指示した模様ですが、本日の第1回会合で論点とされた内容は次のとおりです。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai1/shiryou3.pdf

「新しい資本主義を巡る識者の論点の整理」として次の資料も公表されています。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai1/shiryou4.pdf

ブラックロックのラリーフィンク会長の見解、東大の田中教授の見解など色々と参考になる情報が書かれているようです。明日、あらためて詳細を読んでみたいと思います。今後の機関投資家との会話などでも話題になりそうな内容ですので、ブログでもこの新しい資本主義実現会議の進捗は随時、記事に書いていく予定です。

シティインデックスイレブンスが東亜建設工業株を買増し

アクティビストである投資ファンドのシティインデックスイレブンスが東亜建設工業株を買増しています。

10月18日、シティインデックスイレブンスら計2名は、東亜建設の保有株式に関して変更報告書を提出し、9.35%で、保有目的は「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」とされています。

東亜建設工業はどういう対策をとるでしょうか?少し前のケースですと、西松建設は自社株買いを行い、シティインデックスに退場頂きました。東亜建設に関する前回の記事をご参考までに再掲します。

ニッチツ(7021)が買収防衛策の導入を公表 ー 個人株主が16%保有

本日は仕事が休みのため株式ニュース、新聞、株価ウォッチをしています。以前に購入した書籍「千年投資の公理」もまだ読めていないので、本日はさっと読む予定です。

さて、舶用ハッチカバーで高シェアのニッチツ(7021)ですが、植島幹九郎氏という個人株主が10月14日に大量保有報告書を出し、16.27%を保有しているところです。保有目的は「純投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為などを行うこともありうる」となっています。ニッチツは株式時価総額100億円以下の小型銘柄です。

これを受けてニッチツは、本日、買収防衛策を導入したことのプレスリリースを次のとおり公表しました。

140120211019413475.pdf (shikiho.jp)

次の記載のとおり臨時株主総会に諮るようですね。

当社は、直近での急激な信用取引の増加など当社株式の市場における取引状況や上場会社との協議等を経ずに株式を大量に取得する事例が増加している昨今のわが国の資本市場の状況等を踏まえ、現時点で本プランを導入することが当社の企業価値及び株主共同の利益に資するものと判断いたしました。なお、本プランは、当社取締役会の決議により導入され、本日付けで効力を生じるものですが、後述のとおり、本日付け「臨時株主総会招集に係る基準日設定に関するお知らせ」にて別途開示しているとおり、2021年 12 月下旬頃に開催予定の当社臨時株主総会(以下「本臨時株主総会」といいます。)においてその更新を議案としてお諮りさせていただくことを予定しており、本臨時株主総会において上記議案につき、株主の皆様のご承認が得られない場合には、本プランは直ちに廃止されます

富士興産、東京ソワール東京機械製作所新生銀行のケースと同様に、先に取締役会決議で導入して、後日株主意思確認総会で株主の賛同を得る予定のようです。

11月12日が株主総会の基準日です。つまり、この日に議決権を持つ株主が議決権を行使できます。この個人株主の方は今後どうするでしょうか?

買収防衛策など無視して、買い増しを進めて、11月12日まで保有割合を増やして株主総会での否決を求めることになるでしょうか。もし、そうであれば、ニッチツは東京機械と同様に(裁判所の決定はまだ出ていませんが)この個人株主の方の議決権を株主総会での算定前提から外したいところかと思います。

本年12月以降頃から機関投資家とのエンゲージメント(対話)を開始する企業も多いかと思います。特にプライム上場会社は投資家との建設的な対話が求められています最近の事例に鑑みると、事前警告型の買収防衛策導入企業は機関投資家から廃止することが強く求められることは必須かと思います。一方、企業としては、有事導入型の買収防衛策について機関投資家がどう考え、どう判断するかを知る機会とも言えます。

私は証券会社の勤務時代から、かれこれ通算すると10年近く、買収防衛策には関与してきた経験がありますが、10年間で投資家の考えや世の中の動きも大きく変わったなとつくづく感じます。企業の実務ご担当者、投資ファンドの方はじめ買収防衛策で何か気になる点などあれば、いつでも問い合わせ先からご連絡をいただければ、一緒に議論など出来れば嬉しいです。

オーケーの関西スーパーへのTOB ー 議決権行使助言会社の反対推奨に関西スーパーが反論

来週から保有銘柄及び関連銘柄の7~9月期決算(2Q決算)が始まります。自分の株式投資だけでなく、仕事上の必要もあり、今回も全部で30社程度の短信短信と決算説明会資料(2Qは上期のため各社充実しています)の分析に集中することになります。自動車の生産台数は、半導体の影響でカーメーカー各社減産のためFY21の通期見通しの上方修正は期待できないかと。半導体不足の影響が薄れるのは年明けからとも言われていますので、10~12月期の3Q決算も厳しい状況が続くので、場合によっては、下方修正が2Q又は3Qあたりであり、株価の下げたタイミングで買い増しをしようかと思っています。ただし、こんなことは機関投資家は百も承知ですので、アナリストカバレッジの乏しい中小型銘柄が買増しの対象です。

さて、前置きが長くなりましたが、関西スーパーエイチ・ツー・オー リテイリングとの経営統合に関する臨時株主総会は10月29日に開催予定のところ、議決権行使助言会社のISSとグラスルイスが経営統合議案に対して反対推奨をしているところですが、関西スーパーはこの反対推奨に対して反論をしています。

http://www.kansaisuper.co.jp/upimages/irinfo/irnews_647.pdf

ところで、関西スーパーの株主構成を見ると、外国人株主は3%程度で、国内機関投資家も10%以下と思われます。大きな比率を占めるのは、「その他法人」で47%です。ここには政策保有株主等の取引先事業法人が含まれます。

とするとISSやグラスルイスの賛否推奨は、機関投資家のためのものですので本来影響はないはずなのですが、事業法人等の株主も上場企業である場合には、自社の株主への説明責任があるので、ISSやグラスルイスの反対推奨を無視するわけにはいかないというのが最近の世の中の動きかと思います。

SBIと新生銀行の攻防(第14回) ー 新生銀行が取締役会評価期間を10月21日まで延長

新生銀行の取締役会はTOBに賛同するか反対するか、反対する場合に対抗措置を発動すべきかの評価をするための取締役会評価期間を9 月17日から10月18日と定め評価を行っている最中ですが、本日、次のとおり評価期間を延長する旨を公表しました。

https://www.shinseibank.com/corporate/news/pdf/pdf2021/211018_announcement_j.pdf

評価のための検討に時間を要することから、取締役会評価期間を10月21日まで3日間延長するようです。独立社外取締役協議会も並行して評価を進めているところです。新生銀行の買収防衛策スキームでは、取締役会評価期間については次のように規定されています。

当行取締役会による上記の評価・検討については、本日以降可及的速やかに実施しますが、評価・検討のため必要な資料の準備等に要する時間も考慮し、十分な検討ができるよう、30日程度の期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)を見込んでおります。なお、当行取締役会が取締役会評価期間内に本公開買付けへの賛否及び対抗措置の発動又は不発動に関する決議に至らないことにつきやむを得ない事情がある場合、当行取締役会は、必要な範囲内で取締役会評価期間を最長 30日間(当初の取締役会評価期間の満了日の翌日から起算します。)延長することができるものとします(なお、当該延長は 1 度に限るものとします。)。当行取締役会が取締役会評価期間の延長を決議した場合、当該決議された具体的期間及びその具体的期間が必要とされる理由について、適時かつ適切に株主の皆様に情報開示を行います。

取締役会評価期間が延長でき、延長は1回に限るというのは買収防衛策を有するほとんどの企業のスキームですので、新生銀行の延長も何ら目新しいところではないです。独立社外取締役協議会は、決定内容を取締役会に対して勧告するのですが、同協議会の意見が纏まっていないことから、取締役会としても結論を決めかねているといったところでしょうか。

  • 9月 9日  SBI:株式公開買付(TOB)を公表
  • 9月 9日  新生 :TOBのお知らせを公表
  • 9月17日  新生 :取締役会決議で買収防衛策を導入
  • 9月17日  SBI:「新生銀行 に対するTOBに関して」を公表
  • 9月22日  新生 :新株予約権無償割当ての発行登録のお知らせ
  • 9月24日  SBITOB期間の延長要請に対する対応を公表
  • 9月27日  新生 :TOB期間延長要請に対するSBI回答状況のお知らせ 
  • 9月29日  SBITOB期間を延長(10月25日 ⇒ 12月8日)
  • 10月 1日 新生 :買収防衛策の発動を一時見送ることを公表
  • 10月 6日 新生 :独立社外取締役協議会組成のお知らせを公表
  • 10月18日 新生 :買収防衛策に係る取締役会評価期間の延長を決定

ESG評価と役員報酬 ー アピールするのは良いですが、報酬全体でどの程度の割合を占めるの?

本日の日経新聞で「セブン&アイ、CO2排出量で役員報酬変動」ということで次の記事がありました。

次の内容です。

セブン&アイ・ホールディングスは、役員に支払う株式報酬を二酸化炭素(CO2)の削減目標の達成度合いで変動する方式を採用した。役員報酬の2割を占める株式報酬と連動させ、経営幹部の環境意識を高める。2022年2月期に支払われる分から適用し、中長期的な脱炭素目標の達成につなげる。

最近、役員報酬にこういったESG要素を役員報酬に連動させる企業も少しずつ増えています。2年ほど前にブログで記事にしたときには、報酬にESG目標を組み合わせる主な企業としてオムロンコニカミノルタ日本航空フェイスブックユニリーバ などがありました。今は更に増えているのだとは思います。当時のオムロンコニカミノルタのESG報酬の内容は次のような内容です。

オムロン業績連動部分の株式報酬は、中期経営計画に基づき設定した売上高、EPS、ROEの目標値に対する達成度、および第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価を組み入れる( サステナビリティ評価 Dow Jones Sustainability IndicesDJSI)に基づく評価。DJSIは長期的な株主価値向上の観点から、企業を経済・環境・社会の3つの側面で統合的に評価・選定するESGインデックス)

コニカミノルタ:執行役については、「固定報酬」の他、年度経営計画のグループ業績及び担当する事業業績を反映する「年度業績連動金銭報酬」と中期経営計画の業績達成度を反映するとともに中期の株主価値向上に連動する「中期業績連動株式報酬」で構成。年度業績目標は、業績に関わる重要な連結経営指標(営業利益・営業利益率・ROA等)とし、執行役の重点施策にはESG(環境・社会・ガバナンス)等の非財務指標に関わる取組みを含める

各社ともESGを報酬に絡めることで、ESGへの取組みを世間にアポールしたいのだと思いますが、問題はこのESG評価が報酬の全体割合でどの程度を占めるです。恐らくESGの評価が報酬に占める割合は非常に小さいのだと思います。セブン&アイ・ホールディングスも「役員報酬の2割を占める株式報酬と連動」とあるだけで、この2割の中のどの程度がESGのインパクトがあるのか不明です。

連動させていますといっても、報酬への影響割合が小さいのであれば、全く意味はないですよね。ということで投資家はこういう開示をしている企業には、しっかりと株主総会で質問をして比率を確認することをお薦めします。

個人投資家としての立場からは、ESG評価などを入れるより、TSR(株主総利回り)を役員報酬に入れて欲しいところです。上場企業の最大のステークホルダーである投資家は儲けるために株を買っているのであり、とすれば役員報酬も株価の値上がり等に連動させるのは当然かと思います。