中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

再生可能エネルギーとして地熱発電に今後期待

前回記事に書きましたストラテジックキャピタルの株主提案の分析を本日から開始しましたので、明日以降に記事を書く予定です。まずは文化シャッターへの株主提案の分析から行う予定です。

さて、本日は、4月23日に開催された経済産業省の第32回総合資源エネルギー調査会の資源・分科会の資料と会議の様子を途中まで動画で視聴していました。資料は次のとおりです。

中長期での株式投資の観点からの私の関心事項は、地熱発電と海洋鉱物資源の掘削ですが、地熱の政策の方向性については、報告書(案)の中で次のとおり記載されています。

③ 政策の方向性
(ⅰ)開発リスク・コストの低減
 地熱の探査や開発に伴うリスクやコストの低減のため、JOGMEC 自らが行う先導的資源量調査をより積極的に実施すべきである。また、地表・掘削調査事業への補助や出資・債務保証等のリスクマネー供給を通じ、事業化に向けた事業者の取組を継続的に支援すべきである。
 (ⅱ)地元理解の促進
地域と共生した持続可能な地熱開発を促進すべく、自治体主催の情報連絡会等の開催に対する支援や有識者の派遣、地熱シンポジウムの開催等、地元理解のための取組を継続するとともに、地熱資源を活用し、農林水産業や観光業等の産業振興に取り組む自治体を「地熱モデル地区」として積極的に選定・発信を行うべきである。
 (ⅲ)規制の運用改善
我が国の地熱資源の約 8 割が賦存するとされている国立・国定公園内については、これまでの規制緩和により、条件付きで地熱開発が可能となっているが、地域によっては過大な対応が求められるなど、未だに順調に開発が進んでいるとは言い難い状況である。引き続き、関係省庁が連携し、規制の撤廃や緩和、基準の明確化等を行っていくべきである。
 (ⅳ)革新的な技術開発
地表調査や掘削調査による高コスト化やリードタイムの長期化に対応するため、継続的な技術開発を実施していくべきである。加えて、地熱発電の抜本的な拡大を図るため、革新的な技術を利用した地熱開発(EGS:EnhancedGeothermal System)についても国内のポテンシャル調査や技術検討を行うべきである。
 (ⅴ)海外展開
国際的に見ると、アジア・アフリカ等においても地熱開発のポテンシャルは大きく、我が国と類似の海外の火山帯において地熱資源調査や大規模発電事業等を行うことで知見を蓄積し、国内の探査や開発に活かしていくことも重要である。また、我が国企業は、地熱発電設備の世界シェアにおいて約7割を占めており、我が国が強みを持つ脱炭素技術の海外展開や、それを通じた世界のカーボンニュートラルへの貢献という観点からも、地熱発電の海外展開を促進していくことが重要であり、JOGMEC の役割も含めて政策的支援の強化について検討すべきである。

再生可能エネルギーの中で、地熱はCO2を出さない、日本は世界で第3位の地熱資源量を有するなど、本来地熱発電は期待されるべきエネルギーです。しかし、開発リードタイムが長いほか、国立公園など開発の難易度が高く、環境庁はじめ関係省庁との折衝などが必要になることもあり、なかなか進んでいないのが現状です。そのような中、4月27日に時事通信社より次のニュースが配信されていました。

地熱発電所「倍増目指す」 温室ガス46%減へ―小泉環境相:時事ドットコム (jiji.com)

小泉進次郎環境相は27日の閣議後記者会見で、菅義偉首相が表明した2030年度の温室効果ガスを13年度比で46%削減する新目標の達成に向け、「地熱(発電所)の設置数の倍増を目指す」と述べた。現在、全国で稼働している地熱発電所は60カ所余り。倍増により再生可能エネルギーの活用を進め、温室ガス削減につなげる考えだ。

「地熱(発電所)の設置数の倍増を目指す」ようです。今後、地熱発電が加速することを期待したいと思います。地熱の他に原子力発電の加速も期待しているところです。

物言う株主であるストラテジックキャピタルが株主提案を公表 ー 今年は機関投資家はどう判断するでしょうか

物言う株主であるストラテジックキャピタルが株主提案をいくつかの投資先企業に対して行っていることを4月28日に公表しました。

4月28日に公表した企業数は5社で、浅沼組、世紀東急工業有沢製作所、文化シャッター、極東貿易になります。この中で文化シャッターへの株主提案を先ほど見たところ、買収防衛策の廃止、資本コストの開示、政策保有株式の売却などを求めているようです。

https://stracap.jp/wp2/wp-content/uploads/2021/04/17ff496381194ed2f56d5e627a2358fd.pdf

いずれの内容もコーポレートガバナンスの要請に沿った提案と言えます。文化シャッターをはじめ株主提案を受けた各社の取締役会は、株主提案に対する取締役会の意見、つまり、「~という理由で反対します」ということを今後公表することになります。

浅沼組、世紀東急工業有沢製作所、文化シャッター、極東貿易の株主構成や株主提案内容の詳細はまだ調べていませんが、今週末からのゴールデンウィーク中に株主提案の内容と併せて分析をして、興味深い内容であれば何件かブログでも分析結果等を掲載したいと思います。

ストラテジックキャピタルの株主提案は昨年はほとんど(全て?)株主総会を通らなかったと認識していますが、今年はどうなるでしょうか。株主総会で株主提案が可決されないとしても、どの程度の賛成率を取得できるのか、機関投資家はどう判断するのかなど興味深いところです。機関投資家の議決権行使基準は昨年より厳しくなっており、また株主提案への明確な賛同要件を行使基準で規定する機関投資家もずつ増えてきています。買収防衛策の廃止を求める株主提案などは、ほとんどの機関投資家は賛同するのだろうと想像します。

株主還元方針は配当性向ではなくDOEが今後の主流になるでしょう

4月24日の日経新聞アステラス製薬の株価低迷について、製薬大手が重視する株主資本配当率(DOE)で比較すると、配当性向で見劣りしていることがアステラス株の上値を抑える一因になっているという記事がありました。

DOEについて本日は簡単に説明したいと思います。製薬業界ではDOEが定着しているようですが、製薬業界以外でも最近DOEを掲げる企業も増えています。

DOE=配当総額÷株主資本=ROE×配当性向で算出されます。なお、ROE=売上高当期純利益率×総資産回転率×財務レバレッジです。

配当性向は、配当金額 ÷当期純利益 (%)で、会社が1年間で儲けたお金(当期純利益)からどれだけ配当として株主に還元されるかを示す指標で、配当方針として「配当性向20%以上」「配当性向30%以上」といったことを公表する企業も多いと思います。しかし、配当性向の問題は、分母である当期純利益は毎年の変動幅が大きく、結果配当性向は毎年大きくブレるという点にあります。1年間の配当総額に変更がなくても、当期純利益が減少すると配当性向は大きく増えたります。

DOEは、利益を積み上げた株主資本に対してどの程度を配当に回すかを示す指標で、株主資本は変動は少ないため、より安定的に株主に還元する姿勢を市場に示すことができるとされています。

第一三共の先日公表した中期経営計画では、「株主還元のKPIとしてDOEを採用し、2025年度時点で8%以上を目標とする」と書かれています。1年ほど前に調べた時は、資生堂ファンケル、JALなどがDOEを基準にしていたかと思います。DOEを強く意識している企業はまだまだ少ないと思いますが、今後はこれが主流になっていくと思います。

2030年度の新しい電源構成 ー 再生可能エネは30%台ですが、原子力も20%と高いです

明日から緊急事態宣言です。私の自宅は東京都大田区にあるのですが、明日からは近辺の大型施設や週末に中学生の娘と泳ぎを競い合っている大田区のプールも閉鎖されるようで、昨年に引き続き、つまらないゴールデンウィークに突入となりそうです。明日は新聞等の情報整理と週明けからの仕事の準備程度しかすることがないと思っていたところ、アマゾンで注文をしていた森・濱田松本法律事務所執筆の「ルール・チェンジ 武器としてのビジネス法」日本経済新聞出版)が届きましたので、これを明日は読みたいと思います。

さて、本日の日経新聞に2030年度の新しい電源構成の記事がありました。温暖化ガス46%減へ向けての構成の見直しになります。

2030年度に占める構成は、再生可能エネルギーが30%台、原子力20%、水素・アンモニア10%以上、火力(石炭・LNGなど)40%程度ということのようです。この中で私が関心が高いのが、原子力です。現状は6%程度ですが比率を20%に引き上げることになります。

原子力は火力発電の比率を下げるに当たり、必須の重要電源と言われています。そもそも原子力は安定的に供給でき、コストも低く、温室排出ガス効果も少ないと言われています。CO2を排出しないということでは、再生可能エネルギー以上のメリットがあるとも言われています。重複しますが、以前にもブログで書きましたが関西電力のホームページに原子力のメリットについて詳しく書かれています。1つ目は、燃料の安定的供給です。ウランは石油に比べて政情の安定した国に埋蔵されていると言われています。2つ目にCO2を排出しないということです。つまり発電の過程においてCO2を排出しません。3つ目に、年間を通じてフル出力で運転が可能ということです。

原子力の比率が増えるということは、将来は高レベル放射性廃棄物の処理が発生するということですので、この関連銘柄が長期で期待が高まると思っています。政府は次期エネルギー計画を今年夏頃に公表する予定ですが、それと併せて正式な電源構成を示すようです。

旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが大豊建設株(1822)を買増し ー ゼネコンは2020年度は政策保有株式の縮減は進んだのでしょうか?

本日は1週間に1回のテレワークの日ですので、インプットに時間を使うために昨日気合を入れて大量の資料を自宅に持ち帰りましたが、結果、鞄が重すぎて、少し腰を痛めてしまいました。今後は資料はコピーして予め少しずつ自宅に置いておく必要があるなと感じるとともに、週末は文具店に行き、ファイルを揃えるなど自宅のオフィス化を進めようと思った次第です。

さて、本日の日経新聞に旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスが大豊建設株を30.08%まで買増したことが書かれていました。4月22日付の変更報告書が出されており、保有目的に「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」となっています。

大豊建設の直近の四半期決算短信を見ますと、現金預金240億円、短期借入金91億円、長期借入金32億円、投資有価証券86億円となっています。同社の2019年度の有価証券報告書を見ると、政策保有株式として上場株式を20銘柄保有し、バランスシート計上額が48億円となっています。

ゼネコン各社は、村上ファンドが次々と買増しています。政策保有株式を大量に抱えるなどの古い体質が狙われる要因だと思います。昨年11月頃に2019年度のゼネコン各社の有価証券報告書から政策保有株式について調べ、次のとおり記事を書いたことがあります。

結果として、コーポレートガバナンス・コードで政策保有株式の縮減が求められている中にあって、2018年度から縮減を進めているゼネコンも多いのですが、依然として保有する銘柄の絶対数はかなり多いということになっています。

2020年度は各社どうなっているでしょうか。物言う株主からの水面下での指摘を受けて解消が進んでいるのだと思いますが(日経平均株価も上昇しており2020年度は売却の絶好のタイミングかと)、6月下旬に各社の有価証券報告書が開示され次第、ゼネコン各社の政策保有株式の過去3年の数値についてアップデートしたいと思います。

企業規制の仕組みはハードローからソフトローに変化しています ー ESGの取組みはソフトロー

本日の日経平均株価終値は前日比591円安の28,508円でした。2日連続で大きく下げています。株を買うのに絶好の機会かと思います。企業のファンダメンタルズに変化がない中にあっては、「大きく売られたら買い」というのは中長期投資の鉄則かと思っていますので、明日、もう1段下げたところで保有銘柄の買増しをしたいと考えています。

さて、最近、ESG投資などを調べる中で、世の中の規制の仕組みが「ハードローからソフトローに変化」しているということを時々耳にします。ソフトローのルールは、規範自体が公表されてからそれが伝播され、更に社会に広く受容されるまでに一定の期間を要し、どのタイミングでルールとなるのか判断が簡単ではないと言われています。ハードローは、違反すれば刑事責任や損害賠償を負うものであるところ、ソフトローにはこのような懸念はない。しかし、ソフトローに適切に対応しないと企業価値や株価の毀損を招き、ひいては経営陣の責任が問われることがある。そしてESG課題やSDGsへの取組みはソフトローになりつつあるというものです。

というようなことをこの2~3週間の間にぼんやりと考えていたところ、本日の日経新聞の夕刊に森・濱田松本法律事務所(日本の四大法律事務所の1つ)の石綿学という弁護士が書いた記事が非常に的を得ており、しっくりきましたので紹介します(太字は私が強調した箇所です)。

近年、わが国の企業社会において、ソフトローの重要性が増している。「ソフトロー」とは法規範ではないが、国や企業などが何らかの拘束感を持ちながら従っている諸規範をいい、ハードロー(制定法)と対置される。もともとは国際機関の決議などに用いられることが多かったが、昨今は行政機関や国内外の団体などが策定するガイドラインや指針、コードなどを指すことも多い。ここ数年大きく変貌したコーポレートガバナンスやM&Aのルールの進化は、まさにコードや指針といったソフトローがわが国の企業社会によって受容されたたまものだ。法令のみならず社会規範の遵守を求めるコンプライアンスに対する意識の高まりが、ソフトローの遵守を促しているともいえる。ソフトローは、国内外の最先端の議論を迅速かつ大胆に取り込みやすいという利点を有している。諸説ある事柄をふわっと取り込む柔軟性もある。一方で、立法府における民主的なプロセスを経ているわけではないから、バランスを欠く内容であると過剰規制につながる危うさもある。ゆえにソフトローの作り手には適切な方向にバランスよく誘導していく能力と心構えが求められる。他方、受け手の側には環境変化に応じて持続的に成長すべく、日進月歩していくソフトローに対する感性を磨き、必要なものは自発的に受け入れていく柔軟性が必要だ。

短い記事ですが、的を得ており、非常にしっくりくる内容です。これを読んで、久しぶりに妙に納得をしました。森・濱田松本法律事務所は「ルール・チェンジ 武器としてのビジネス法」日本経済新聞出版という書籍を昨年の12月に出しています。最近の法改正の動きなどビジネスを取り巻くルール(ハードロー、ソフトロー)の最新状況を国内・グローバルの双方の視点から書いているようです。ソフトローという考えをあらためて一度しっかりと理解したいと思っていましたので、早速アマゾンで注文をしました。週末に読んで見たいと思っています。

気候変動への株主圧力の高まり ー 同業と比べて見劣りしない程度に取り組むことが肝要

本日の日経平均株価終値は前日比+2円でしたが、一方、東芝の株価は▲200円と大きく下げています。理由は言うまでもなく、CVCキャピタルの買収提案がなくなる可能性大との報道によるものです。報道によれば、CVCキャピタルからの買収提案は初期的なもので本格的な提案ではないため検討する必要はないということを東芝は考えている様子です。「TOBで売り抜けられる」、「物言う株主が存在するため、TOBがあった場合、TOB価格はつり上がるかも」と期待して東芝株を購入した株主は、元社長の車谷氏に相当腹が立っているかも知れません。

さて、本日は、少し前になりますが4月3日の日経新聞の記事「気候変動 株主圧力一段と」について触れます。記事の内容としては、企業に気候変動に関する戦略策定や情報開示を株主が求めることが増えているということです。

住友商事に対しては、環境NGOのマーケット・フォースが次のとおり気候変動対策の改善を求める提案をしています。

また、三菱UFJフィナンシャル・グループに対しても、環境NGOが次のような提案をしている模様です。

この1~2年で環境NGOなどが環境に関する株主提案をするケースが増えており、昨年は、ある環境NGOがみずほフィナンシャルグループに気候変動に関する提案をし、株主提案自体は否決されたものの、北欧の機関投資家 が賛同するなどして、当初の想定を上回る35%近い賛成がありました。

これらの環境NGOは、アクティビストのようなファイナンスのプロでなく、そのため企業に株価向上や株主還元の増加を求めるのが狙いではなく、純粋に「環境保護が大事」という真面目な団体かと思います。しかし、それだけに株式投資などの観点が頭にない、融通のきかない「環境大好き集団」とも言えますので、逆に扱いが面倒かも知れません。

とは言え、企業としては、環境開示・環境問題にあまりリソースを割くのは得策ではありません。環境の関心の高まりを背景に監査法人系の環境コンサルみたいな輩が環境対策の需要性を煽るケースなども最近多いかと思いますが、あまり真に受けない方がよいかと思います。監査法人系は、内部統制、IFRSなど新しい制度が出るたびに商売のため「御社このままではまずいですよ」といって企業を煽る傾向が非常に強いのですが、環境に取り組むコストが高く、結果、企業の営業利益にマイナス影響を及ぼすとなると本末転倒です。

コーポレートガバナンス・コードでもESG開示が重要になる中、環境の開示対応も重要になってきてはいますが、頑張り過ぎるとコストばかりかかるので、同業と比べて見劣りしない程度に取り組んでおくのが肝要かと思います。先進的な取り組みをして目立つ必要はないですが、対応が遅れて目立つのはNGといった具合でしょうか。

 

フィデリティ・世界割安成長株投信 ー 組み入れ日本株の紹介

本日は興味深い投信を1つ紹介します。フィデリティ・世界割安成長株投信です。私が以前より集中投資をしているある銘柄がこの投信に組入れられていることを先日たまたま知り、どういう銘柄が組入れられているのかと思いさっと調べてみました。

この投信の愛称は「テンバガーハンター」です。テンバガーの原石を世界中から発掘することが狙いです。米国の著名ファンドマネジャーであったピーター・リンチの愛弟子と言われているジョエル・ティリングハストが運用責任者です。

ジョエル・ティリングハストは、ウィキペディアによれば、「ピーター・リンチ同様『誰もが知っている身近な会社に投資する』というスタイルを踏襲。逆にいうと、『自分が理解できない銘柄には投資をしない』というのが哲学の一つである。得意な投資対象は世界中の中小型株(基本は小型株)」ということのようです。この投信の投資方針は、高い競争力と健全な財務を持つ会社、市場が見逃している割安な成長株としています。

第1期(決算日 2021年2月22日)の運用報告書に組入日本株が記載されており、148銘柄となっており、主な銘柄をいくつかあげると次のとおりです。

  • 8001 伊藤忠商事   1,060千株
  • 6670 MCJ       863
  • 9717 ジャステック    346
  • 1835 東鉄工業      276
  • 1879 新日本建設     222
  • 2735 ワッツ       220
  • 7619 田中商事      204
  • 1898 世紀東急工業    204
  • 1930 北陸電気工事    190
  • 7856 萩原工業      175
  • 6459 大和冷機工業    170
  • 5388 クニミネ工業    125
  • 3023 ラサ商事      120
  • 5357 ヨータイ      119
  • 1949 住友電設      113

この銘柄を見て気付く方もいるかも知れませんが、アクティビストが保有する銘柄もいくつかあるようです。株価上昇には、利益の成長は当然ですが、これに加えてカタリストが必要ですが、アクティビストの存在がカタリストとなる可能性も高いといえます。

さて、今週も東芝の報道が日経新聞で掲載されると思いますので、これも引き続き注視したいと思います。

東芝買収の動きを分かりやすく解説します(第3回)ー サム・オブ・ザ・パーツによる株式価値の算出

本日は保有銘柄2社の決算発表がありました。1つは東京個別指導学院です。決算が好調だったこともあり、終値は前日比+24円でした。ただ、東京個別指導の四半期決算が好調であることはQ1からの決算関連資料を丹念に分析していれば予測できることで、それなのに好決算発表で株価が上がるということは、分析をしないで株式を売買している人がいかに多いかの証左であり、四半期ベースで銘柄の決算を丹念に分析すれば株式投資、特に機関投資家のあまり注目しない中小型株投資は確実に儲かるということだと思います。

さて、本題ですが、CVCキャピタルとアクティビストの考える東芝の株式価値に温度差がある模様ですが、本日は株式価値算定の手法であるサム・オブ・ザ・パーツ(SOTPといいます)について説明したいと思います。

4月9日の日経新聞で、キオクシア株の価値を加えた東芝の理論株式価値は2兆8,000億円程度である一方、4月6日時点の東芝の株式時価総額は1兆円7,400億円で大きく数値に開きがあるという報道がありましたが、この東芝の理論株式価値算定に当たってはサム・オブ・ザ・パーツを使用したということです。サム・オブ・ザ・パーツについては2年ほど前にブログでも紹介したことがありますが、事例をシンプルにしてあらためて説明します。

複数の事業セグメントを持つ企業の理論株価のバリューエーション手法になります。具体例をあげて説明します。甲会社という上場企業があり甲会社はA事業とB事業の2つの事業セグメントがあり、各事業のEBITDAは次のとおりとします。

A事業 EBITDA 100億円(=営業利益60億円+減価償却費40億円)

B事業 EBITDA  40億円(=営業利益30億円 減価償却費10億円)

これを前提として、算出を進めます。

まず最初に各事業の同業他社のEV/EBITDA倍率の平均値を算出します。

EV(事業価値)=株式時価総額+ネットデットです。A事業には同業他社が5社、B事業には同業他社が7社存在するとします。そして、EV / EBITDA倍率( EV ÷ EBITDA)のA事業の同業5社平均が7倍、B事業の同業7社平均が10倍であったと仮定します。ちなみに、7倍というのは、その企業をまるごと買収した際にかかった費用が7年分のEBITDAで回収できるということです。

次にこのEV / EBITDA倍率をベースにA事業とB事業の理論上のEV(事業価値)を算出します。

事業は700億円(=EBITDA 100億円 ×倍)でB事業は400億円(=EBITDA 40億円 × 10倍)となり、同業他社の平均倍率数値をベースに算出した甲会社のあるべきEVは合計して1,100億円(A事業+B事業)となります。

最後にここから理論株式価値を算出します。

EV=株式時価総額(株式価値)+ネットデットの公式から、株式価値=EV-ネットデット(純有利子負債)になります。甲会社のネットデット(=有利子負債-現預金)を仮に400億円とすると、株式価値は700億円(=1,100億円-400億円)となります。この700億円が甲会社の理論上の株式価値ということになります。

一方、甲社の株式時価総額が500億円となると、700億円あるべき株式価値が市場では200億円も低く評価されており、この原因はコングロマリット・ディスカウントであるということになります。これがサム・オブ・ザ・パーツによる理論株価算出の考え方になります。

こんな単純な方法でよいのかと言われると私はコーポレートファイナンスの学者でもないので良く分かりませんし、自分でもこれでよいのかという思いはあります。しかし、複数事業を持つ企業の理論株価を算出するに当たって良く使用される手法であり、そういうものとして理解するしかないと思います。

本日のヤフーニュースによりますと、香港の投資ファンドのオアシス・マネジメント東芝TOB価格5,000円は安く、6,200円が相当として早速噛みついてきたようですね。東芝の一般株主にとっては、TOB価格が6,200円とするととても美味しい話ですね。保有株数によっては、がっつりと金を儲けるチャンス到来ということかと思います。私は東芝株を保有していませんが、数千株程度購入しておけばよかったと今更ながら後悔していますが、後で後悔するのが株ですから仕方ありません。

日銀公表の全国の銀行預金残高 ー 3月は前年同月比+9.9%

4月12日に日銀が銀行の預金残高について公表しました。

3月の全国における銀行の預金平均残高は、前年同月比+9.9%の811兆8435億円でしたす。1月の残高が過去最高で806兆1633億円で、2月は若干減少したものの、3月は1月の過去最高を超える金額となっています。2020年8月以降の数値を並べると次のとおりです。伸び率は前年同月比です。

  •  8月   788兆6462億円  +8.8%
  •  9月   793兆3629    +9.0
  • 10月   792兆8973    +9.0
  • 11月   799兆5626    +9.0
  • 12月   802兆8673    +9.3
  •  1月   806兆1633    +9.8
  •  2月   805兆5614   +10.0
  •  3月   811兆8435    +9.9

改訂コーポレートガバナンス・コード案のポイント ー アクティビスト(物言う株主)リスク回避のためには真摯に取り組む必要があります

本日の日経新聞の1面に「人権問題 投資家が圧力」という見出しでウイグルを巡る記事がありました。ESG投資において今後の重要テーマは人権になると言われています。日本企業は「人権」というと、同和問題パワハラ等に目がいきがちですが、グローバルの観点から企業に求める人権は少しレベルが違います。中長期投資を志向する機関投資家による企業の人権への取組みへの関心は、今後益々高まると思いますので、企業は「グローバル視点での人権への取組み」をしっかりと考える必要があるのだと思います。後日、ブログでも記事を書きたいと思います。

さて、3月31日に金融庁のフォローアップ会議で改訂コーポレートガバナンス・コード案が提示されましたが、本日は、この改訂のポイントについて紹介します。1点目は「取締役会の機能発揮」として次の事項があげられます。比較的重要であるかなと思う点は太字にしました。

  • プライム市場の上場会社における独立社外取締役3分の1(その他の上場会社においては2名)以上の選任
  • 経営戦略上の課題に照らして取締役会が備えるべきスキル等を特定して、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化した「スキル・マトリクス」をはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で社内外の取締役の有するスキル等の組み合わせの開示
  • 独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めること
  • プライム市場上場企業においては、指名委員会、報酬委員会の構成員の過半数を独立社外取締役が占めることを基本とし、委員会の権限・役割等を開示すること

2点目としては、企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保として次の事項があがられます。

  • 女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すること
  • 中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すること

3点目としては、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組みとして次の事項があげられます。

  •  取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すること
  • 人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うこと
  • 経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すること
  • 人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すること。特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めること

 最後にその他として次の事項になります。

  • 経営戦略等の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況について分かりやすく示すこと
  • プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うこと 

細かい点をあげると他にもありますが、大きな改訂ポイントは以上です。

コーポレートガバナンスについてしっかり取り組んできた時価総額3,000億円程度以上の企業には、今回の改訂はあまり大きなインパクトがあるとは思えませんが、時価総額が1,000億円以下の規模の上場企業にとっては、今回の改訂は結構インパクトがあるのだと思います。

私が投資している中小型銘柄は、有価証券報告書はじめ現状の開示資料を見ると今回の改訂対応は現時点では全く出来ておらず、今後どう対応するのか大変だろうなと思います。コンプライせずエクスプレインということも勿論できますが。

キャッシュリッチな財務状況である場合には、アクティビストに攻撃される材料が豊富ということになります。アクティビストの出現は大きな企業リスクです。このリスクをつぶすには、コーポレートガバナンス・コードで求められている事項に1つ1つ対応していくことがとても重要なのです。

中長期の株式投資:海洋鉱物資源 ー 経産省の鉱業小委員会(3月30日開催)

中長期観点での株式投資テーマについて紹介します。

私が注目している中長期での株式投資テーマの1つに海洋鉱物資源があります。経済産業省の資源・燃料分科会の中で鉱業小委員会というのがあり、ここで鉱物資源についても2014年5月から議論がされており、前から議論状況には注視しているのですが、直近では3月30日に第8回会議が開催されました。事務局資料は次のURLのとおりです。

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/kogyo/pdf/008_03_00.pdf

この中で海洋鉱物資源に関する記述があり、「国産海洋鉱物資源開発に向けた取組の更なる推進」として次のとおりです。

海底熱水鉱床とは、海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿してできたもので、コバルトリッチクラフトとは、海山斜面から山頂部の岩盤を皮殻状に覆う、厚さ数cm~10数cmの鉄・マンガン酸化物をいいます。前者は、沖縄、伊豆・小笠原(EEZ)の700~2,000mに、後者は、南鳥島等(EEZ、公海)の800~2,400mに存在するとされています。

また、「サプライチェーン上の政策課題と対応」として、次の記述があります。

我が国領海・EEZ内に確認されている海底熱水鉱床コバルトリッチクラストマンガン団塊レアアース泥等については、現在、既知鉱床の資源量評価や、新規鉱床の発見が進んでいる一方、民間事業者の参入判断に必要な資源量の把握が不十分であることや、海底の多様な鉱床性状に応じた生産技術の開発などが課題。資源量の把握、生産技術の確立等の国産海洋鉱物資源開発に向けた取組を一層推進していく

掘削の技術課題があり、まだ先の長い話になりそうですが、自動車の電動化等でレアアース等の需要が高い中、日本は輸入に頼らざるを得ない状況にあるのが現状ですが、将来的には自前でも調達できるよう政府は取り組みを進めているところかと思います。

海洋鉱物資源の国内調達が可能になった場合、関連銘柄は株価の上昇が期待できるかと思いますので、関連銘柄をスクリーニングし、注視しておくと良いかと思います。

コーポレートガバナンス・コード改訂案が公表されました

昨日の日経平均株価終値は前日比+210円の29,388円でした。先日の日経新聞報道によれば、昨年12月末の日本の上場企業の手元資金は101兆円と過去最高になったようです。昨日公表の日銀短観によれば、2020年度の設備投資は前年比マイナスでした。IMFは世界経済成長率を来週4月6日に上方修正で公表する模様ですし、米国ではバイデン政権が今後8年間で2兆ドル規模のインフラ投資を議会に諮る報道があり、今後、企業の業績改善とともに株価上昇は続くのだと思います。

さて、3月31日に金融庁のフォローアップ会議が開催され、コーポレートガバナンスコードの案が公表されました。

https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20210331/02.pdf

3年前の改訂と比べて大きな改訂はありませんが、ESGに関する取り組みの開示が求められており、環境等にあまり取り組んでこなかった上場企業は取り組みの加速が求められるかも知れません。今回の改訂事項の中で企業に開示が求められる事項のうち、いくつかポイントと思われる事項をあげます。

2-4① 上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきである。

今回新設された補充原則です。ダイバーシティー(女性だけでなく)の目標値を開示せよというものです。

3-1② 上場会社は、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、合理的な範囲において、英語での情報の開示・提供を進めるべきである。
特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである。

太字の箇所が今回盛り込まれました。「必要とされる情報」の解釈が各社考えが分かれるところだと思いますが、プライム市場企業はグローバル企業たるべきという方針の下、英語の開示は今後強化されるのだと思います。

3-1③ 上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。

統合報告書等で既に開示している企業も多いかと思います。

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、プライム市場上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきである。

今回の目玉と言われている社外取締役の員数の箇所ですね。

4-11① 取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。

スキルマトリクスですね。要は機関投資家が総会の集中する時期に短時間で数百社の取締役選任議案の賛否を判断する上で、一目で分かるスキルマトリクスを開示して欲しいというのが元々の話かと思います。

今回の改訂では政策保有株式に対する改訂はありませんでした。社外取締役3分の1をコードに盛り込むことを認める代わりに、経団連からの要請もあり、政策保有株式は今回は論点から外したのだと想像します。

ということで、3年前に比べると改訂事項は少ないのですが、今回改訂されなかった事項であっても、自社の開示内容が資本市場の求める内容になっているかは確認する必要があるかと思います。「3年前の改訂の際に社内で検討をして開示をしたが、今回は改訂されていないので、開示内容は変える必要はないな」と安易に考えると、自社の開示内容が時代遅れになっていることに気付かない可能性もあります。だだの時代遅れであればたいして気にする必要はないかも知れませんが、アクティビストからつっこまれる材料になるリスクがあります。

上場企業各社は、今回の改訂をタイミングとして開示内容の全体について他社の開示内容と比較して確認をすることが必要になるのだろうと思います。

社外取締役を選任しない理由 ー サイボウズ(4776)の説明がとても参考になります

先週末に海洋鉱物資源の掘削関連、地熱発電関連でのウォッチ銘柄の整理をしました。2050年の再生可能エネルギー5割に向けて今注目を浴びているのは風力発電ですが、日本は欧州との自然の違いもあり、また、風力発電(浮体式)の技術的課題も多く、どこまで風力発電が実現可能か疑問視する声もあるかと思います。

そもそも政策を立案した役所のコアメンバーの大多数も、あと20年もすれば、サラリーマンの定年退職を迎えており、その時点では実現の可否の責任を負う立場にないことなどを考えると将来、「風力発電はやっぱり駄目でした」ということも可能性としてはあるので、地熱・原子力発電の動向にも注意を払うべきかなと考えています。

さて、前置きが長くなりましたが、先日、サイボウズが取締役候補者を社内公募で選定し、株主総会で決議されたようです。報道によれば新卒入社2年目の社員が取締役に選任されたりしたようですが、入社2年目では取締役の法的意味の理解は出来ないし、コーポレートガバナンスで求められている取締役の機能は果たせないように思います。サイボウズの規模では採用は出来ない(であろう)東大や東工大など一流大学卒のエンジニア人材が将来欲しいということもあり、学生へのアピールもあってこういう公募制度にしたのかなと想像しています。

さて、そんなサイボウズですが、株主総会の招集通知などを読むと社外取締役はゼロのようですね。そして、その理由を見て「なるほど」と思いました。「社外取締役を選任しない理由」として、次の4点をあげています。

  • 社内で徹底的に情報を共有していると同時に「質問形式」の文化を形成しており、社員同士で監視して意見を言い合える状態にある
  • キャリア入社や複業経験者が多く、社外からの視点を持ち込めている
  • 様々な部門で社外の方にアドバイザーを務めていただいており、社外からの意見を日常的に取り入れている
  • 取締役会に諮る前に、すでにオープンに議論がなされている

つまり、日頃から社員全員が取締役の機能を果たしており、あえて社外取締役を置く必要がないということのようです。株主総会の書き起こしを見ると、株主総会で議長の次のような発言があります。

ほとんど全ての情報が共有されて、日々議論されている。こういう組織を作っている。こういう組織を作ると、敢えて社外取締役は必要ないよねっていうのが、私たちの考え方です。むしろ、取締役会を密室で作って、社外から何人か、社外取締役を連れてくる。それで本当にガバナンス、効かせられますか。月 1 回の限られた取締役会の時間、限られた人、限られた情報の中で、本当にいい助言ができますか。これぐらいオープンにしたほうが、もっと効率いいんじゃないですか。それが、私たちがイメージしている世界なんです。これが、サイボウズ社外取締役を置かない理由です。

社内のことを知らない社外者を増やして意味はあるのかという議論は昔からあります。経団連もたしか2010年頃には社外取など不要であるという意見をいっていたかと思います。経済産業省金融庁コーポレートガバナンス改革で社外取締役は増やせという方向になっていますが、社外取締役を増やす必要の要否は企業の規模感・業種によるのだと思います。

サイボウズのように社外取締役は不要と思う上場企業も数多くあると思いますので、そういう企業は、是非ともサイボウズのこの考えを参考にすると良いかと思います。コーポレートガバナンス・スコードで社外取締役3分の1以上ということが求められても、「3分の1が必要ない」ということであれば「エクスプレイン」すれば足るのです。

書籍紹介 「梟の城」(新潮文庫 / 司馬遼太郎) ー 自分の習熟した職能に生きることを人生の支軸におく

最近、買収防衛策に基づく対抗措置の発動の事例が相次ぎ、この関連記事の掲載が続きましたが、本日は書籍紹介をしたいと思います。

この本は、歴史小説家の司馬遼太郎産経新聞文化部に勤めていた1960年に執筆し、同年に直木賞を受賞した小説です。1990年後半には俳優の中井貴一主演で映画化もされております。司馬遼太郎の小説は私はこれまで一度も読んだことはありませんでしたが、2週間ほど前に書店で小説コーナーで本を眺めていたところ目にとまり、購入した次第です。

内容は、長編の歴史小説で、豊臣秀吉の暗殺を狙う伊賀忍者と、伊賀を捨てて武士として出世しようとする者の生き様を描いた内容で、伊賀忍者の人生感、何を信念に生きるかが書かれており、面白い小説でした。特に興味深かったのは、伊賀の者の生き方としての次の文章でした。

かれら(※隠しの国である伊賀に棲む郷士たち)の多くは、不思議な虚無主義をそなえていた。他国の領主に雇われはしたが、食禄によって抱えられることをしなかった。その雇い主さえ選ばなかった。報酬をくれる者ならいかなる者の側にもつき、仕事が終わると、その敵側にさえついた。(中略) かれらは、権力を侮蔑し、その権力に自分の人生と運命を捧げる武士の忠義を軽蔑した。諸国の武士は、伊賀郷士の無節操を卑しんだが、伊賀の者は、逆に武士たちの精神の浅さを嗤う。伊賀郷士にあっては、おのれの習熟した職能に生きることを、人生とすべての道徳の支軸においていた。おのれの職能に生きることが忠義などとはくらべものにならぬほどに凛冽たる気力を要し、いかに清潔な精神を必要とするものであるかを、かれらは知りつくしていた。

現代におきかえると、専門的な深い知識と習熟した経験をもって業務に当たるプロフェッショナルということだと思います。外資系金融機関の投資銀行部門で勤務する方、戦略コンサルティングファームコンサルタント、弁護士、公認会計士といった職業がイメージしやすいかと思いますが、私はこの文章は、メーカーはじめごくごく一般的な事業会社に勤務するサラリーマンこそが参考にすべき文章と思います。

より具体的には、自分の勤務する会社において常務や専務といった地位には手が届かず、50代半ば~後半で役職定年を迎えることが分かっている40代のサラリーマンが役職定年を迎える今後の10年間における仕事の姿勢の参考指針になると考えます。

残念ながら、自分の現在の出世の度合いから、高い役職の役員の地位は今後得られないことが分かった40代半ば時点でこれまでのサラリーマン人生を振り返り、「社内の人脈は相当あるが、仕事の方は、浅く・広く様々な業務をやってきたな」という方は、社外で通用する、つまり、社外の人がお金を払ってでもその人にアドバイスを求めたいと言えるような「高い専門的な実務能力はない方」といえます。従い、そういう方はおのれの習熟した職能に生きることを、人生とすべての道徳の支軸において」という言葉を念頭におき、役職定年までの期間、1点に集中して専門性を極める姿勢で業務に取り組むことが大事になってくるのだと思います。