中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ゼネコンがアクティビストに狙われる理由 - 政策保有株式が1年前に比べてたいして減っていません

本日はゼネコンの政策保有株式の縮減状況について書いてみたいと思います。

次のとおり、少し前にブログでゼネコンがアクティビストに狙われていることを書きました。ゼネコンはキャッシュリッチであるためアクティビストにとって「絶好のカモ」にされているわけですが、大手ゼネコン各社の政策保有株式数を2018年度と2019年度の各社の有価証券報告書(有報)で調べてみました(昨夜は友人と久々の飲み会があり、少しだけ酔った後に家でPCを開いて調べたのですが、まあ数値に誤りはないと思います)。

有報の「保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式」の中の「非上場株式以外の株式」(=上場株式)です。前者が2018年度の銘柄数、後者が2019年度の銘柄数になります(括弧は増減数になります)。

  • 大林組   149銘柄 → 129銘柄 (△20銘柄)
  • 大成建設  141銘柄 → 139銘柄 (△ 2銘柄)
  • 清水建設  180銘柄 → 174銘柄 (△ 6銘柄)
  • 鹿島    167銘柄 → 161銘柄 (△ 6銘柄)
  • 戸田建設  118銘柄 → 118銘柄 (増減なし)
  • 西松建設   75銘柄 →  64銘柄 (△11銘柄)
  • 安藤ハザマ  58銘柄 →  51銘柄 (△ 7銘柄)
  • 五洋建設   50銘柄 →  33銘柄 (△17銘柄)
  • 熊谷組    11銘柄 →  11銘柄 (増減なし)
  • 長谷工     6銘柄 →   6銘柄 (増減なし)

いかがでしょうか。コーポレートガバナンス・コードで政策保有株式の縮減が求められている中、依然として保有銘柄数がかなり多い状態になっています。2018年度から縮減を進めているゼネコンが多いですが、保有する絶対数は依然としてかなり多いと言えます。

政策保有株式=余剰資金ですので、アクティビストとしては、政策保有株式は売却して現金にして株主に還元せよと主張するわけです。アクティビストの主張は極めて合理的であり、資本市場関係者から見ても至極もっともな主張と言えます。

ゼネコン業界は、失礼ながらバリバリのドメスティックな「ザ・ジャパニーズ企業」と言えるので、今だに政策保有株式を持つことが取引の大前提であるという慣習があるのだと想像します。

戸田建設などはシルチェスターに狙われていますので、買収防衛策も本年継続更新し、安定株主比率を高めるべく、政策保有株式の削減が出来ていないのだと思います。自社が保有する政策保有株式売却すると、「お宅が売るならうちも売りますよ」ということで相手も自社の株式を売るので、結果、自社の安定株主が減るということになります。

ゼネコン各社は、同業の政策保有株式状況はウォッチしていると思います。同業の縮減があまり進んでいないと自社の縮減も「まあこの程度でいいや」ということになるのですが(「右へ倣え」の精神です)、同業だけでなく、資本市場の動きに目を向ける必要があります。

コーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた議論が始まっていますが、今度の改訂では政策保有株式についても更に一歩踏み込んだ話に発展するのだと思います。アクティビストはコーポレートガバナンス・コードの内容は自分たちの主張を正当化する材料にしているので、ゼネコンの担当者もしっかり改訂の議論の進捗を見た方がよいと思います。

ストラテジックキャピタルが京阪神ビルディング(8818)に敵対的TOB - 京阪神ビルの「政策保有株主」は理論武装が必要

昨日、アクティビスト(物言う株主)のストラテジックキャピタルが京阪神ビルディング(8818)に敵対的TOBを開始することを公表しました(本日の日経新聞にも掲載されていました)。TOB価格は1株当たり1,900円、取得株式数は下限・上限ともに10,206,100株です。

ストラテジックはこれまで京阪神ビルに株主提案をしてきましたが、今般、TOBの運びとなったわけです。京阪神ビルの取締役構成は社内取締役の過半数三井住友銀行出身者という大きな問題があり、私も6月13日にブログで次の内容を書いています。 今回のTOBを受けて京阪神ビルの株価は昨日の終値から大きく上昇しています。今回のTOBの取得予定株式数は発行済株式数の20%で、ストラテジックは9.4%の株式を既に保有しているので、TOBの成功により約30%の株式保有となります。

京阪神ビルの経営権を支配する予定はないのでしょうが、30%超の保有比率ですと株主総会の特別決議事項を否決することが可能であり、ストラテジックの説明文にもその旨が記載されています。京阪神ビルが定款変更、事業再編をする場合、ストラテジックはこれを否決することができるのです。

TOBの成功のポイントは1つで、TOBに応募する株主が京阪神ビルにいるかどうかですので、株主構成を見る必要があります。上場企業の株主構成は有価証券報告書(有報)、株主宛に発送する事業報告書、中間事業報告書に掲載されていますが(有報への記載は義務)、ストラテジックの公表資料に株主構成が詳細に記載されています。

大きい順に①事業法人41.6% 金融機関28.3% 外国人16.9% 個人9.8%です。金融機関には商業銀行と国内機関投資家が含まれますが内訳は不明です。外国人株主は、1,900円に満足するのであれば、TOBに応じる可能性は高く、個人株主も恐らく応じると思います。逆に絶対に応募しないのは➀の事業法人です。

いわゆる持ち合い株式で、安定株主といわれているところです。この「事業法人」の内訳は不明ですが、大きなところは2019年度の京阪神ビルの有報を見ると推定できます。有報によれば、「政策保有株式」は上場企業が27銘柄(12,286百万円)となっており、各銘柄の欄に相手方が京阪神ビルの株式を保有しているか否かが「有・無」で記載されています。「有」と記載されている主な会社は次のとおりです。

ダイキン工業きんでん、三精テクノロジーズ、ダイビル、クボタ、丸一鋼管、三井住友フィナンシャルグループ三井住友トラスト・ホールディングスレンゴー、ニチハ、大和ハウス工業能美防災鹿島建設 など

これらが京阪神ビルの政策保有株主です。

各社の京阪神ビル株式の取得価額が不明ですが、京阪神ビルの過去の株価推移をみると1990年以降1,900円を超えたことはなく、1989年の1,850円が最高株価で(89年12月29日は日経平均が39,000円です)、2000年以降は1,000円を大きく下回っています(300円~800円程度)。

では、京阪神ビルの政策保有株主は、今回のTOBに当たりどのように対応する必要があるのでしょうか?

京阪神ビルとの付き合いを考えるとTOBに応じるということは100%ないのでしょうが、「応募しない」ことの合理性をきっちりとつめておく必要があります。1,900円でTOBに応じれば確実に売却益が出るところ、これに応じないということは、民間企業の存在意義である営利追求に反することになり、株主から説明が求められる可能性があります。

つまり、「TOBに応じれば50億円の株式売却益が出るところ、これをしないということは京阪神ビルの株式を保有することが50億円以上の利益を生むことだと考えているのだと思うが、この理由を明確に示せ」という質問が出る可能性があります。従い、自社の取締役会又は経営会議あたりで経営トップを交えて方針を固めておく、つまり理論武装をしておく必要があるのだろうと思います。

大戸屋ホールディングスの件、島忠の件など敵対的TOBの案件が少ないながらも確実に増えています。敵対的TOBの場合に買収される企業の政策保有株主は、自社の株主に対しての説明義務が今後益々求められていくように思います。

フィットネスクラブの2社が2020年度第2四半期決算を発表―フィットネス銘柄の株価は今後回復するのか?②

週末に続いてフィットネスクラブの今後の見通しについて書きます。株価が低迷したフィットネスクラブ銘柄の株価回復の可能性を考えるには、フィットネスが流行った理由を整理する必要があります。

テレビ東京での過去のニュース番組などを見ると、流行した理由が良く分かりますが、要するに「人生100年時代」のキーワードで伸びてきたのがこの数年のトレンドで、日本では、フィットネス人口に占める50代~70台の割合が非常に大きくなっています。高齢者が長生きのためにフィットネスに通っているというのがフィットネスの流行の根底にあります。ルネサンスの2019年度の決算説明会資料を見ると、同社の売上高の50%を占めるフィットネス会員の50%は50代以上の高齢者となっています。

それでは、コロナが終息した後にフィットネスを利用する人が元のように戻るかということがフィットネス銘柄の回復において極めて重要になりますが、私は戻らないと思います。

ワクチンが開発されたとしても、ワクチンの副作用が分かるにはまだ先になるので、であれば、高齢者が「ワクチンが開発されたのでこれで安心だ。さあジムで皆で汗をかこう!」ということを考えるとは思えません。コロナのワクチンが開発されてから、数年経過してようやくコロナが過去のものになった頃にフィットネスに通い始めるのだと想像します。そもそも運動などはジムなどに行かずとも外でウォーキングしていれば事足りるものです。

2、3年前のテレビ東京ワールドビジネスサテライトなどを見ているとフィットネス業界は「人生100年時代に必須」と言われて、70代、80代の高齢者が一生懸命に集団でジムで汗を流している姿が映っていたり、フィットネスビジネスとかいう雑誌の編集長が喜々として明るい表情で未来を語っていますが、今やなんとも悲しい状況です。当時、この編集長は「高齢者は病気になりたくないからフィットネスに行く」ということを言っていましたが、今は「病気になりたくないからフィットネスに『行かない』」です。

なお、20代から40代の社会人にとって大人の習い事としてフィットネス需要があるのかということもポイントになりますがが、「ケイコとマナブ」が以前に調査した結果によれば、習い事について女性の1位は英語、2位がヨガ・ピラティスで、3位がフィットネス、男性では5位あたりがフィットネスで、社会人の習い事としてフィットネスの順位は決して高くはないです。

ということで、フィットネス関連の業績見通しは今後かなり厳しいものになると思います。これまでの需要増に対応すべく設備投資を積極的に進めたことによる固定費の回収も今後は難しく、利益低迷も続くでしょう。オンラインでのフィットネス事業をはじめた企業も増えていますが、オンラインであれば利用料金も低く設定せざるを得ず、また大きな投資が不要のため参入障壁も低く、新たな参入業者が増え競争が激化します。などなど考えると、関連銘柄がコロナ前の株価に戻る可能性は極めて低いと私は思いますので、今が割安としてフィットネス銘柄を買っても今後の中長期での株価上昇は期待できないと考えます。

フィットネスクラブの2社が2020年度第2四半期決算を発表 ― フィットネス銘柄の株価は今後回復するか?①  

この1週間は仕事が多忙で株式投資の関連銘柄の決算の詳細分析ができませんでしたので、本日は、この1週間でQ2(7-9月期)決算を発表した企業の決算短信、決算説明会資料の分析作業をしています。

ある理由からスポーツクラブ等の総合フィットネスクラブ銘柄の決算及びプレスリリースを以前からウォッチしているのですが、今週はスポーツクラブのルネサンス(2378)と東祥(8920)が第2四半期決算(Q2決算)の発表をしました。ルネサンスはフィットネスクラブ国内大手でリハビリ施設も併営しています。東祥はホリデイスポーツクラブを運営し、ホテル、賃貸住宅も併営しています。

ルネサンスのQ1決算は売上高38億円、営業利益△20億円、営業利益率△51.7%と大きな営業赤字になっていましたが、Q2決算では売上高87億円、営業利益△9億円、営業利益率△10.8%となっています。依然として営業赤字ではありますが、売上高は大きく増加し、赤字幅も縮小しています。季節的要因をどう考慮するかはありますが、4-6月に比べて業績は回復しているといえそうです。

ちなみに、企業の第2四半期決算短信には4-9月期の6ヵ月の累計期間の数値が掲載され、Q2(7-9月)の3ヵ月の期間の数値は公表されませんので、3ヵ月の期間の数値は自分で算出する必要があります。特にコロナの影響が大きい環境下では3ヵ月毎のトレンドを見ることがとても重要と思いますので、エクセルで銘柄の3ヵ月毎の決算数値を時系列に整理すると分析の精度があがるかと思います。

東祥の方は、Q1決算では売上高29億円、営業利益△7千万円、営業利益率△2.5%となっており、こちらも営業赤字になっていましたが、Q2決算は売上高50億円、営業利益5億円、営業利益率10.6%と回復しています。ルネサンスの2020年度の通期見通しに対する6ヵ月の売上高進捗率は39%で、東祥の進捗率は売上高44%、営業利益23%、経常利益26%と芳しくありません。

ルネサンスの1月下旬の株価は約1,750円だったのが昨日の終値時点では747円、東祥は1月下旬に2,200円程度であったのが、昨日の終値で1,208円と大きく下落したままです。では、フィットネスクラブの今後はどう予想すべきでしょうか?

フィットネス業界を深く分析しているわけではないのですが、分析の考え方としては、これまでフィットネスが流行った理由に立ち返ることが重要なのだと思います。

各銘柄の決算説明会資料を丹念に読むことで分析ができますが、テレビ東京オンデマンドを見ると過去2015年~2019年までの間に複数回にわたりワールドビジネスサテライト、モーニングサテライト、日経プラス10でフィットネスクラブの特集がされていますので、これらの番組を「頭を使って見る」とコロナ前のフィットネスクラブの状況などが分かります。

本日はここまでとして、先ほどのメディアの番組特集の内容なども踏まえて、明日、フィットネスクラブのざっくりとした今後の動きの予想についてブログに書きたいと思います。

社長・CEOの後継者計画は投資家にとって重要です ー 取締役会はきちんと関与しているか

大塚家具が大塚久美子社長が退任することを公表しました。大塚家具は業績低迷のため家電量販店のヤマダホールディングスが資本参加をしていますが、ヤマダの社長が兼務するということです。また、三菱ケミカルホールディングスの社長に外国人が就任することの公表もありました。外国人が社長に就任した例は日産、オリンパス等あることにはありますが、非常に珍しいことです。

このように社長・CEO(纏めて「社長」とします)が交代する際には投資家的な目線からは何を考えるべきでしょうか?

それは、その後任社長が、取締役会の関与する後継者計画に従い適切に育成された上で選任されているのかが考えるポイントになります。後継者計画については、コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-1③で次のように規定されています。 

「取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。」 

この原則は2018年の改訂の時に変更されました。改訂前は、「取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである」となっていましたが、改訂により、取締役会は、①後継者計画の策定に主体的に関与すること、②計画に従い適切になされていることを監督することが求められています。

会社経営において一番大事であるのは社長であり、誰が社長に就任するかというのはとても重要です。しかし、これまでは、社長は現社長の好みで選定されるケースが多く、必ずしも能力で選任されていないケースが多いと言われていました。要は自分と同じ大学を出ているだとか、自分の言うことを何でも聞くような人物を自分の一存で社長にしていたということです’。しかし、これはコーポレートガバナンス・コードでは、許されていません。

社長が交代するということは、株価にも大きな影響を与える重要なことですが、それ以上に中長期で株式投資をする場合、その企業が今後も成長を続けることが出来るか否かということにも繋がります。特に、株式時価総額が数百億円規模の創業オーナー社長の企業においては、会社の存続におけるオーナー社長への依存度が高いという現実がありますので、どういう人物が次期社長になるかは極めて重要な事項です。

ということで、個人投資家の方は、投資先銘柄の社長が高齢であるような場合には、どういう内容の後継者計画があり、またそれについて取締役会はどう関与し、後継者計画にそって複数の後継者候補が適切に育成されているかなどを株主総会などで聞くことも重要と思います。

そして、きちんとした後継者育成がなされているということであれば、社長が交代した後もその企業の株式を安心して継続保有できるということになります。

アクティビストがゼネコンの株式を買い増し ー ゼネコンはキャッシュリッチ

本日は早朝から諸々の作業をする中でブログを書いていますが、本日の日経新聞に「物言う株主、建設株買い増し」という記事が出ています。

アクティビストが中堅ゼネコンの株式を相次ぎ買い増しているという内容です。ゼネコンはキャッシュを貯め込んでおり株価も低くアクティビストに狙われているということです。

ゼネコンは中長期の成長が期待しにくということもあり、アクティビストは業界再編を狙っているというのだと想像されます。昨年の7月に以下のとおり2018年度のゼネコン各社のキャッシュの度合いをブログで掲載しましたが、その時は各社潤沢なキャッシュを保有していました。総資産に占めるネットキャッシュ(=現預金+政策保有株式-有利子負債)の比率も結構あります。

keieikikaku.hatenablog.com

 その後、2019年度の有価証券報告書をベースにキャッシュ状況のアップデートをしておりませんでしたので、週末に余裕があれば、アップデートしたいと思いますが、2018年度とあまり状況は変わらないのかも知れません。

いずれにせよ、アクティビスは来年の株主総会に向けて色々と提案を練っていると思います。ゼネコンでは戸田建設が買収防衛策を有していますが、アクティビストが20%超の株式を取得する可能性があるのであれば、戸田建設以外のゼネコン各社も、外国人株主比率が高いとなかなか難しいところはありますが、買収防衛策の導入を検討した方がよいのかも知れません(通常、買収防衛策は、市場内外で20%を超える株式の取得が発動のトリガーとなっています)。

島忠の争奪戦 - 旧村上系ファンドが関与して面白くなってきました

ホームセンターの島忠に対してDCMホールディングがTOBの最中ですが、これに対して、家具大手のニトリが島忠をTOBする意向との報道が先日ありました。この報道に対して、ニトリは10月21日付で「決定した事実はない」旨のプレスリリースを出しています。

その内容は、「当社は、当社のロマンと中長期ビジョンの達成に向けた経営戦略を策定しており、その一環として、株式会社島忠も含め、M&Aを通じた成長の可能性を日々検討していますが、現時点で決定している事実はございません。」というものです。「当社のロマン」という表現が興味深いですね。プレスリリースではあまり見ない言葉ですが、オーナー社長であるがゆえに言える言葉ですね。オーナーならではの思いがつまっている言葉かと思います。

さて、今回のニトリTOB意向に関連して出てきたのが旧村上系ファンドのシティインデックスイレブンズです金儲けのチャンスと見るや即座に行動をしてくるあたりがさすがプロフェッショナルです。シティインデックスが10月21日付で「株式会社島忠について」という書面を公表しています。それには次のような内容が書かれています。

  • DCMによる島忠株式に対する公開買付けに関する島忠の意見表明報告書には、島忠がDCM 以外に広く買い手を募り島忠の株主価値の最大化を模索した旨の記載がなく、この点について非常に疑問に思っている
  • 島忠の取締役会及び特別委員会は、島忠の全ての株主に対して最も高い株主価値を実現する義務がある。島忠の取締役会及び特別委員会において島忠の買い手候補を広く募った上で、その中からベストプライスを追求すべきである。一旦、売りに出されてFor Sale となった会社は、それ以外の選択肢はないはず

いかにももっともらしいことが書かれていますが、島忠はビット方式でより高いTOB価格を提示する会社に買収されるべきであり、ニトリがDCMより高い値段を提示するのであれば、島忠はニトリTOBに賛成すべきであるということをいっています。

結果、村上ファンドは、これに応募すればより高い儲けが得られるということです。まるでニトリと旧村上ファンドが裏で通じあって連携しているようにも見えます。勿論そんなことはないですが。

DCMのTOBは1株4,200円で期間は10月5日から11月16日となっていますが、本日現在においては、ニトリTOBを公表しておりません。

ニトリが島忠にTOBを行った場合、TOBが成功するか否かは、島忠の株主構成を見る必要があります。島忠は8月期決算ですので、2020年8月末の株主構成はまだ有報で公表されていませんが、直近の有価証券報告書での株主構成(2019年8月末時点)では、外国人:37.3%、金融機関:29.2%、個人:23.2%です。金融機関は、商業銀行と国内機関投資家に分かれますがこの内訳は不明です。

ニトリがDCMより高いTOB価格を提示した場合、外国人と個人はこれに応じるように思います。島忠の本日の株価終値は4,745円です。ニトリTOBは11月頃には公表されるように思いますので、島忠の株主の方はウォッチする必要があります。

 

ISSが2021年の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案を公表

知っている方も多いかも知れませんが、10月14日に議決権行使助言会社のISSが2021年の議決権行使助言方針の改訂案を公表しました。改訂案は本日10月26日までコメント募集期間としてコメントを募集していますが、これまでISSは改訂案を変更したことはないので、改訂案で確定すると思います。

今回の改訂のポイントは、政策保有株式を過度に保有する企業の経営トップに反対するとしている点です。具体的には純資産の20%を超える政策保有株式を保有する企業の経営トップの取締役選任議案に反対推奨するというものです。

議決権行使助言会社であるグラスルイスは、従前より純資産の10%超の政策保有株式を保有する場合には経営トップに反対するとしていますが、今回、ISSも政策保有株式について数値基準を打ち出したということになります。ただし、純資産の20%超の政策保有株式を有する企業数は少なく、これが適用される企業は数パーセントにとどまるとは思います。

10月下旬に再開した金融庁のフォローアップ会議でも政策保有株式はコーポレートガバナンス上の課題としてあげられています。今後どのような方向に進むのでしょうか。私は、おそらく縮減よりも、議決権行使結果の開示に焦点が当たるような気がします。政策保有株式の保有自体が問題のような風潮にありますが、そもそもの議論のはじまりは、投資先企業の問題のある議案に賛成する結果、その議案に反対行使をする少数株主の意見が通らないことにあります。逆にいうと、問題のない議案に賛成することは何ら非難される筋合いはないのです。

とすれば、企業が適切に政策保有株式の総会議案について議決権を行使したということが外部からもガラス張りになっていれば良く、であれば、議決権行使結果を公表することが求められるような気もします。機関投資家が投資先企業の総会議案に対して議案毎に賛否悔結果を個別開示するように事業会社にも同じようなことが求められる可能性が考えられます。政策保有株式として保有する企業に不祥事があった場合などは悩ましくなります。

金融庁のフォローアップ会議の今後の動向を注視して行きたいと思います。

書籍紹介「伝説の7大投資家」(角川書店)

本日は簡単ですが、書籍を1冊紹介します。フリーの経済・経営ジャーナリストで桑原晃弥という方の書いた本です。この方は、元業界紙記者の方で、特に知名度が高いわけでもなく、また、投資の世界にいたわけでもない投資の素人の方ですが、著名な米国の投資家7名の経歴や投資スタンスなどをさらっと簡潔に紹介した本になります。

出てくる投資家は、ジェシー・リバモア、ジョージ・ゾロス、ジム・ロジャース、フィリップ・フィッシャー、ピーター・リンチ、ウォーレン・バフェットベンジャミン・グレアムです。いずれの方も、プロの機関投資家であれば誰でも知っている米国の著名投資家ですね。

前述のとおり著者は、投資の素人の方ですので、内容は薄い本ですが、個人投資家の方にとっては、著名なプロの投資家の投資に対する考えや姿勢を広く浅く知るには良い本と思います。ただ、この本は深みは全然ありませんので、各投資家の投資の考えを深く知るには、各人の代表的な著書を読む必要があると思います。

この7名の方の書いた本で有名なところをいくつかあげると、ピーター・リンチの「ピーターリンチの株で勝つ」「ピーターリンチの株式投資の法則」、フィリップ・フィッシャーの「株式投資で普通でない利益を得る」、ベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」などでしょうか。

「賢明なる投資家」は株式投資の古典書と言われており、日本の著名な機関投資家の方でも読んでいる方はとても多いと思います。勿論いずれの書籍も米国の株式市場の話であり、日本市場にそのまま当てはまるものでもないと思います。

これらの7名の方たちは皆さん頭脳明晰な方ばかりで(特に理数系に非常に秀でた頭脳の方)、しかも機関投資家として巨額の資金を運用していたので、この本を読んで一般の個人投資家が数十万から数百万円程度のわずかな自己資金で富を築くことはまず無理ですが、いくつか参考になるところはあるかと思います。

私は、ピーター・リンチの「株で勝つ」しか読んだことはありませんが、「億」の資産を築いた個人投資家の方でこれらの書籍を読んでいる方も多いようですので、ベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」あたりは、明日からの第2四半期決算分析がひととおり落ち着いたところで、読んでみたいと思います。

昭和電工に買収された日立化成のリストラは今後加速すると思います - 上場子会社のサラリーマンの方は他人事と思ってはいけません

昨日、日立製作所が上場子会社である日立建機の売却に動いているという報道がありました。少し前には同じく上場子会社である日立金属も売却方向に動いているという報道もありました。日立製作所は上場子会社のリストラを加速していますが、本年6月には日立化成を昭和電工に売却しております。日立化成は、10月1日付で昭和電工マテリアルズという社名に変更しており、現在は昭和電工の100%子会社(非上場会社)です。

私の近い親戚の方が日立化成の本社に勤務していたこともあり(もう高齢で20年近く前に定年退職していますが)、親近感を持っており、その後、日立化成の売却報道なども興味をもって見ているのですが、10月23日の日経新聞昭和電工の社長のインタビュー記事がありました。

その中で、昭和電工と日立化成の両社が手掛ける事業を成長性等の観点で4つに区分して、不要なものはリストラするということが書かれていました。また、日立化成は現在、東京駅前の超高層ビルであるグラントトウキョウサウスタワー(賃料がかなり高額)に本社があるのですが、賃料を減らすために本社を昭和電工に集約する方向で検討するということです。

証券会社時代にいくつかの会社を見てきましたが、買収後、買収された会社は現状の状態が1年程度は維持されるのですが、その後に買収された会社の本社が買収会社のオフィスに移転することが良くありますが、ここからリストラは本格的に加速することが結構多いです。

買収会社の社員は、買収された会社の社員を「下に見る」のが常であり、物理的に距離が離れていれば買収された会社の社員の心理的ストレスは小さいのですが、これが物理的な距離が近くなることで、ストレスが非常に強くなり、負い目を感じるということが往々にしてあります。

リストラも加速する上に、強引なリストラをしなくても買収された会社の社員は毎日ストレスを感じ、自発的に退職するということになります(昔、私はこれを「暗黙の大人のいじめ」という表現を使っていました)。ただでさえ本社には収益に直接貢献しない管理部門のスタッフが多いところ、上場廃止株主総会、決算関係、IR・広報などの仕事に従事していた多くの人は全員余剰人員になります。これらの部門の方はまっさきにリストラされます。

日立化成のホームページを見ると役員構成の表示が消えたので、現在の役員構成が不明ですが、仮に買収前の構成としても、来年の株主総会においては社長以下の多くの役員はクビとなり、昭和電工出身者で占められるのだろうと証券会社時代での経験を踏まえて想像します。ただし、役員全員を昭和電工出身者にすると日立化成の一般社員の士気が大きく低下するので、ここ1、2年は半分程度までに抑えるのだと思います。

ということで、日立建機、日立金属もどこに売られるのか分かりませんが、売却され、しかも上場廃止となると、その会社一筋でやってきたサラリーマンには耐えがたい挫折となります。40代、50代で挫折を経験すると立ち直りも難しいと思います。現在、上場子会社に勤務している経営陣を含むサラリーマンの方は明日は我が身と考えて、自分の勤務する会社が売られることを想像して、リスクを軽減する方策を常日頃から考えておくことが大事と強く思います。こうしておけば、万一、そのような事態になっても挫折感は小さく済みます。

主要ゼネコンの2020年度通期予想 - 建設業界の長期見通しは?

ホームセンターのDCMホールディングスの島忠に対するTOB(島忠の取締役会の同意のある友好的TOB)に対して、先日、ニトリも島忠にTOBをする意向がある旨報道がありましたが、今度は、島忠株を旧村上ファンドが数パーセント取得し、島忠に色々と提案をしていることが報道されています。この数日間で面白い展開になってきましたが、本件は明日以降にブログで少し触れたいと思います。

さて、来週から企業の7-9月期の決算発表が本格し、その分析で私は忙殺されることになりますが、本日は主要ゼネコンの2020年度の通期業績見通しについて紹介したいと思います。前年度比較で、営利は営業利益、経常は経常利益の略です。

  • 大林組  売上高 △10.3%  営利 △22.1%  経常 △20.8%
  • 大成建設     △17.2%     △51.7%     △51.5%
  • 清水建設     △12.6%     △38.3%     △39.1%
  • 鹿島建設     △ 7.0%     △15.8%     △19.5%
  • 五洋建設     △14.1%     △16.9%     △16.9%
  • 戸田建設     △ 4.2%     △26.2%     △25.4%
  • 前田道路     △ 4.1%     △ 6.0%     △ 6.4%
  • 安藤ハザマ    △ 3.5%     △ 4.5%     △ 8.7%

ゼネコンは11月上旬から第2四半期決算発表が始まるので、業績予想が修正される可能性もあるので、またアップデートをしたいとは思いますが、建設業界の今後の見通しはどうでしょうか?

アナリストにより意見は違うかも知れませんが、長期的に見た場合、プラス成長が期待できるという意見が強い気がします。今後は老朽化したインフラや建物が更新期を迎え、公共工事は国土強靭化、民間工事は都心再開発等の大型プロジェクトもあるかと思います。

また、巣ごもり消費によるネット通販の増加による物流施設の増加、5G通信設備工事がプラス成長に寄与するという声も聞きます。東京五輪後は、しぼむのではという意見も前にはありましたが、決してそんなことはないように思います。Q2のゼネコンの決算は注意深く見て行きたいと思います。

クニミネ工業(5388)が2020年度通期業績予想を上方修正

ベントナイトの国内トップ企業であるクニミネ工業(5388)が2020年度の通期業績見通しを本日上方修正しました。

当初通期予想と比較して、売上高は+6.3%(135億円)、営業利益は+131.5%(15億円)、経常利益は+107.2%(16億円)となっています。上方修正の理由は、次のとおりです。

「売上高は、主にベントナイト事業部門の鋳物関係において、国内自動車用途向けの販売が想定より好調に推移したこと等により、前回予想を上回る見込みです。利益面におきましては、売上高の増加に加えて、利益率の高い復興関連の売上比率が高まったこと、また、コロナ禍において働き方の見直しを行ったことによる経費の削減等が寄与したことにより、前回予想を上回る見込みです。」

クニミネ工業は株式時価総額160億円(本日の終値ベース)の小型銘柄で、ベントナイト部門、アグリ部門、化成品部門で構成されており、主力はベントナイト部門です。ベントナイト部門は、鋳物、土木建築、ペット関連の3部門に分かれ、鋳物の65%は自動車向けで、社長(オーナー)はQ1の決算説明会では当期の見通しは厳しく、「コロナの終息まで3年はかかる」「100年に1度のピンチ」と危機的状況であると言っていました。

Q1決算の数値が当初の通期業績予想で見ると進捗率が非常に高かったので、通期業績見通しは上方修正するであろうと確信していましたが、そのとおりとなりました。元々業績予想が保守的であると四季報でも書かれていましたのでサプライズ感はないですが、本日13時に見通しを開示して、本日の終値は昨日より+76円の1,119円となっています。

クニミネ工業は過去10年間において売上高は毎年増加しており、営業利益率も12%程度を維持しています。財務基盤はしっかりしており、株主資本比率は80%を超え、総資産に占めるネットキャッシュ比率は約30%となっています。クニミネ工業の過去10年分の財務は以前からエクセルで分析し、動向は注視していますが、健全経営の企業と思います。

2019年11月には日刊工業新聞山形大学との間でベントナイトの粒子の通電・蓄電勢を解明し、新たな電子デバイスの材料になることが期待できるとクニミネ工業に関する記事が掲載されました。

記事によれば、新しいタイプの蓄電デバイスの実現につながる可能性もあり、2023年の実用化に向けて開発に乗り出すということで、それまで株価が900円でしたが、記事の発表により1,400円まで株価が上がった経緯があります。

コロナの影響で3月19日時点で844円まで下げましたが、その後1,000円まで株価は戻しています。ちなみに「みん株」でのアナリスト(1名)予想株価は1,400円です。10月30日がQ2決算発表です。

使用済核燃料の処分でもベントナイトは使用されるようで、超長期の成長が期待できる銘柄かと思います。個人的には「強く買い推奨」銘柄と考えています。来年は出来れば定時株主総会に出席して社長に色々と質問をしたいと思っています。

 

書籍紹介「ピーターリンチの株で勝つ」(ダイヤモンド社) - 株式投資の初心者にお薦め

本日は休みのため自宅で諸々作業をしています。法律上、年間最低の年収取得が企業には義務付けられているようで、私の場合、その期限である10月末までに残り1日休みをとる必要があり、本日はお休みです。

さて、本日は1冊書籍を紹介したいと思います。中長期での株式投資をする方の多くは知っているかも知れませんが「ピーターリンチの株で勝つ」です。

ピーターリンチは、米国のファンドマネジャーです。1944年生まれで、ボストン大学を出て、ペンシルべニア大学ウォートン校でMBAを取得、1977年に1,800万ドルにすぎなかったフィデリティ・マゼラン・ファンドの運用資産を1990年には140億ドルに育てあげた凄腕のファンドマネジャーです。米国のタイム誌は「全米1のマネー・マネジャー」と評しています。高齢ですが存命です。

この本は、2001年に出版され、プロの機関投資家個人投資家の方が読んでいるかと思いますが、個人投資家株式投資をする上での心得が書かれています。

1980年代にはプロでないと得られない企業情報が沢山あり、個人投資家は不利な立場にありましたが、今や企業の開示情報は非常に細かいものとなり、個人投資家はアナリストレポートも手にすることも出来、また、インターネット取引で株価の動きも瞬時に分かるので、プロと個人の間に大きな差はないということが書かれています。だからこそ、個人投資家も頭を使えばプロに負けない運用成績をあげることが出来るということをピーターリンチは言っています。

ここ数年を見る限りでも、企業の開示資料のレベルは年々向上しており、決算説明会資料も大変に詳細で分かりやすく(ただし、たいていは企業がお化粧をしているので少し注意は必要)、統合報告書、アニュアルレポートなどもかなり洗練されてきました。有価証券報告書の記載内容も充実してきています。

機関投資家は企業の経営トップと面談できるという利点はありますが、フェア・ディスクロージャー・ルールの下、企業の経営トップも機関投資家のみに限られた情報を語ることは今はできなくなっており、結果として、機関投資家個人投資家がアクセスできる情報に差はなくなっています。

また、個人投資家は不明点があれば何ら遠慮せずに、投資先企業のIR部門に電話をすればよいのです。私の場合、買い増しをして、その銘柄に対する投資金額が数百万となる場合には、気になる事項があれば、投資先企業の代表番号に電話をしてIR部門に質問をするようにしています。その際には、「株主として当社を大変評価しており、今後更なる買い増しをして、中長期で保有したいのですが、それに先立ち、開示情報を見て1、2点どうしても不明な点があるので、差し支えない範囲で教えてください」というスタンスで電話をすればよいかと思います(株価の動向などを聞く方もたまにいるようですが、聞いたところで誰も回答できないので「ど素人」と思われ馬鹿にされるだけですので、そのような質問はやめましょう。)。

ということで、経営トップに個人株主が質問するのは難しいですが、IR部門に電話で質問すれば、開示されていない情報を探ることも可能であり、機関投資家が得る情報と大差はないとも言えます。

ピーターリンチは個人投資家は投資をする上で、個人ならではの視点を生かし、身近な銘柄に注目すること、機関投資家保有せずアナリストがフォローしない会社であること、ニッチ産業であることなどをあげています。中長期投資を志向する日本のファンドマネジャーで同じようなことを本で書いている方もいますが、ピーターリンチなどの投資方針がベースにあるのだと思います。

この本は細かい株式指標の見方などは書かれていませんが、株式投資をする上での基本的な考えがしっかりと書かれている良書かと思います。

コーポレートガバナンス・コードの改訂 - 金融庁のフォローアップ会議が本日開催

本日よりコーポレートガバナンス・コード改訂を議論する金融庁スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議が開催されることになりました。

本日の資料は、金融庁のホームページで公表されていますが、その中に事務局資料があり、事務局資料に「フォローアップ会議で議論頂きたい事項」として、これまでのフォローアップ会議等でのコーポレートガバナンスの課題として、以下の5つの事項があげられています。

  • 資本コストを意識した経営(現預金保有、政策保有株式の在り方等)
  • 取締役会の機能発揮(社外取締役の質・量の向上、ダイバーシティ等)
  • 中長期的な持続可能性(サステナビリティ、管理職等におけるダイバーシティ等)
  • 監査の信頼性の確保(内部監査部門から経営者及び取締役会等に直接報告を行う体制の構築等)
  • グループガバナンスのあり方(グループ全体としての経営の在り方、上場子会社の一般株主保護等)

いずれも最近のコーポレートガバナス改革の中で言われていたことで大きく驚く内容ではないかと思いますが、これらの事項を中心に今後、会議でコーポレートガバナンス・コードにどう規定していくかが議論されます。

政策保有株式の縮減は一定程度進んでいますが、今後、更なる縮減を求めていくのか、それとも機関投資家と同じように政策保有株式の株主総会の議決権行使の賛否結果を開示することまで要求されるのか関心のあるところです。会議の議事録は、後日、金融庁ホームページで都度公表されるので、関心のある方はフォローアップ会議の議事録を読むこととお薦めします。

このブログでも都度取り上げ、このブログを読めばポイントは分かるという程度に要点を纏めて行きたいと思います。

香港のファンドであるオアシスマネジメントが東京ドームの役員解任請求 - プレスリリースのサマリー

海外のアクティビストであるオアシスマネジメントが東京ドーム(9681)に対して取締役3名の解任を目的に臨時株主総会の招集請求を行いました。10月19日に東京ドームがプレスリリースを出していますが、プレスに記載のオアシスの招集理由等のポイントをまとめると次のような内容です。

(以下はプレスリリースのまとめ)

  • オアシスは、当社が東京ドームの好立地を充分に生かせていないとして、当社の業務改善計画を詳述した「より良い東京ドームへ」を公表し、①東京ドームの運営の劇的な改善、②東京ドームホテルの運営改善または外部マネージャーの導入、③顧客体験を向上させるための、東京ドームシティアトラクションズの提携先の模索、④ノンコア資産の整理、⑤企業統治の改善という重要な業務改善項目について具体的なかつ詳細な改善策を提案している
  • しかし、これらの業務改善策を実現するための当社代表取締役社長をはじめとする経営陣らとの建設的な対話が繰り返し拒絶されたこと、オアシスが当該「より良い東京ドームへ」の中で指摘した問題と課題に対応する具体的な工程と計画を当社が策定していないこと、当社が 2020年7 月 20 日付けで公表した「東京ドームでの新たな取り組みについて」における改善策も抜本的な業務改善策というにはほど遠く、オアシスが「より良い東京ドームへ」で提案したような、電子看板システムについての言及があるものの、33年越しの計画となっておりスピード感が欠けていること、コロナ禍の中で営業規模を縮小せざるを得ない状況を寧ろ好機として抜本的な業務改善策を実行し、コロナ後の将来の収益機会を拡大すべきという問題意識を経営陣が持っていないこと、オアシスは当社に対して十分な時間の余裕をもって提案に対する具体的な回答を待ち続けていたが、経営陣から何ら意味のある回答がなされていないことなど、これらの経緯に鑑み、当社の問題は、非効率な経営を続け抜本的な業務改善策をタイムリーに実施できない経営陣と、そのような経営陣を監督すべき義務を果たしていない社外取締役を含む取締役会に起因するとし、現在の経営陣と取締役会に引き続き会社の経営を託することは、当社が本来有する企業価値を著しく毀損する結果を招くことになると考えている
  • そこで、速やかに当社の臨時株主総会の招集を請求し、そのような問題を抱えた前記の取締役 3名の解任を提案
  • 解任対象取締役の 3名のうち、長岡勤氏については、長期に亘り当社の保有資産を有効活用できないまま潜在的企業価値を引き出せなかったことや、オアシスからの業務改革の提案に対して対話を回避してきたことへの責任があることから取締役として不適任であり、森信博氏については、長期に亘る在任期間や当社と出身母体の関係性から独立社外取締役としての適格性に疑問があり、秋山智史氏については、長期に亘る在任期間から交代が必要な時期にあるとオアシスは主張

2020年1月31日の変更報告書を見るとオアシスの東京ドーム株の保有比率は9.61%となっています。また、東京ドームの有価証券報告書で1月31日時点の東京ドームの株主構成を見ると、金融機関(商業銀行+国内機関投資家)が33.54%、個人が29.78%、外国人が29.10%となっており、この数値だけを見ると、海外の投資ファンドによる解任請求に対して、個人や国内機関投資家が賛成にまわる可能性は小さいようにも思います。

しかし、オアシスはプロですので、こういう状況であることを知っての上で提案をしているので、国内機関投資家がオアシスの提案に「反対することを躊躇する」ような合理的な提案を今後公表してくるように想像します。今後、動きがあれば都度ブログで紹介していきたいと思います。