中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

アルプスアルパインが政策保有株式45銘柄を削減 - たしかに銘柄数は多いが、1銘柄当たりこの程度の株数で政策保有目的とは?

本日の日経新聞の1面に上場企業が政策保有株式の削減を進め、この9年で18%減という記事がありました。2019年度の政策保有株式の削減率は2010年度以降で最大ということです。コーポレートガバナンス・コードにおいて政策保有株式の削減が求められているところであり、それが浸透していることと思います。

この記事の中で、電子部品のアルプスアルパインがこの1年間で45銘柄を売却したととありました。1年間で45銘柄売却ということは、とてもすごいことです。

というのも、政策保有株式の売却に当たっては、保有に至る過去の経緯や取引関係もあるので、通常は市場で勝手に売却するわけにもいかず(大量に売ると売られた銘柄の株価も大きく下落するので)、1つ1つ先方への事前承諾をとるのが解消の場合の実務手続かと思います。いわゆる「仁義を切る」というやつです。

とすると、アルプスアルパインの実務担当者は大変な苦労をされたのであろうと想像しました。アルプスアルパインは、アルプス電気アルパインが数年前に統合した会社ですが、たしかアルパイン株を海外のアクティビストが保有しており、経営統合株式交換でしたね)の際にアクティビストの対応で大変苦労した経緯があります。

現状、アクティビストがどの程度の株数を保有しているかは不明ですが、恐らくアクティビスト対策か、またはアクティビストの要請があって売却を進めたのだろうと想像しました。

そこで、2019年度のアルプスアルパイン有価証券報告書を見たのですが、驚いたというか、あきれてしまいました。たしかに売却銘柄数は多いのですが、1銘柄当たりの保有株数を見ると100株~1,000株程度がほとんどです。そして、有報では政策保有株式については銘柄別に保有目的を記載する必要がありますが、有報を見ると保有目的として「営業政策(経営情報の入手)」「資材購買政策(経営情報の入手)」といった言葉がたくさん並んでいるのです。

この言葉の意味が全く不明であるし、仮に意味があるとしても、まるで50万円程度で株式投資をしている一般個人株主であるかのように保有株数が数百株から数千株程度で「政策的に保有する」意味が理解できませんでした。1,000株の保有がどう政策的なのでしょうか、社長に質問をしたいくらいです。多分理解されていないでしょう。

この会社は、今の社長はサラリーマンですが、その前は2代目のオーナー社長の会社であり、色々と過去の経緯があって1,000株程度でも、世間には理解できない社長にしか分からない何らかの意義があったのかも知れません。しかし、記事を見た時には、1銘柄当たり数十万株を保有していて、それを1年間で40銘柄超も売却したアルプスアルパインは「すごい」と思いましたが、詳細を見ると、がっかりしたというか、呆れてしまったという話です。そもそも減少銘柄数だけを取り上げて「45銘柄を売却」などと記事を書く記者のレベルもどうかとは思いますが。