8月12日の日経新聞で、インターネット証券のマネックス証券がTOB代理業務に参画するという記事がありました。三田証券と提携して、敵対的TOBの代理人も引き受けるようです。
敵対的TOBにおいては、世間のイメージなどを気にして大手証券会社は敵対的買収者サイドの代理人を引き受けるケースは少なく(勿論、過去には大手証券会社が引き受けたケースもあります)、三田証券のような知名度の低い証券会社が引き受けると言われています。直近のケースですと、旧村上ファンドグループによる芝浦機械の敵対的買収の案件で三田証券が代理人を引き受けたかと思います。
敵対的買収の増加をマネックス証券は予想しているようで、たしかアクティビストファドのようなものを立ち上げたかと思います。たしかに敵対的買収の案件は最近目にすることが多い印象はあります。実現に至らなかったケースを含め、HOYAによるニューフレアテクノロジーの買収、コロワイドによる大戸屋の買収、前田建設工業による前田道路の買収ケースなどがあります。
しかし、敵対的買収の件数が大きく増加しているかというと決してそうではないということはしっかり理解する必要があります。たまに記事に出ると「日本でも敵対的買収が増加」という基調で書かれるのですが、案件数として見てみると年間数件程度に過ぎないのが現状であり、そこはきちんと理解する必要があります。敵対的買収は今だ稀なケースと断言できます。
一方、敵対的買収とはいえない数パーセントの株式を取得するアクティビストの活動が確実に件数が増えています。上場企業としては、自社が敵対的買収の対象にされるリスクの対応など万一のケースを考えることも重要ですが、それ以上に、数パーセントの株式を取得されて、事業のカーブアウト、増配、政策保有株式の売却、自社株の実施などの提案を受け、これに他の株主が賛同するリスクの対応準備をする方が圧倒的に重要です。
TOBに関しては、親会社が子会社を非上場化するというケースでのTOBが今後増加すると思います。おそらくマネックス証券は、稀にしか起きない敵対的買収としてのTOBではなく、上場子会社の非上場化のTOBの件数の増加を予想して代理業に参入するのだと思います。
以前にもブログに書きましたが、上場子会社銘柄は、将来における親会社によるTOBの可能性を考えると投資先として考えておくことは有用かと思います。