7月11日の日経新聞に「コロナTOB不満の渦」という見出しの記事がありました。コロナの影響で上場企業の株価が1月21日時点から大幅に下がっている中、TOB価格に対して株主の不満が高まっているという趣旨の記事です。
最近は、コロワイドによる大戸屋HDへの敵対的TOB、伊藤忠商事によるファミリーマートへの友好的TOBがあります。TOB価格は市場株価に対して30%、40%のプレミアムを乗せた価格とするのですが、市場価格がコロナの影響で低下しているので、その低下した市場株価をベースにプレミア30%、40%を乗せても、ベースが低いので対象会社の株価が納得しないケースが増えてきているということです。
ニチイ学館のMOB(マネジメントバイアウト)においては、5月8日に公表のTOB価格は1,500円ですが、アクティビストがTOB価格の上昇をニチイ学館に求めたこともあり、ニチイ学館の株価は1,500円を超え、市場株価がTOB価格を超えている以上、TOBに応じる株主は少ないため、ニチイ学館はTOB期間を延長したようです。
伊藤忠商事によるファミリーマートのTOB価格は、2,300円ですが、7月10日のファミリーマートの株価終値は2,306円です(7月8日 1,754円(場が閉まった後にTOB公表)、7月9日の終値が2,154円、7月10日が2,306円です。
TOB価格を上回る市場株価がついていますが、これはどうしてでしょうか。TOBの場合対象会社はTOBに対する会社の意見を表明する法的義務があり、ファミリーマートの東証開示において、ファミリーマートは次の内容を表明しています。
「当社は、・・(途中省略)・・賛同する旨の意見を表明しておりますが、本公開買付けの 買付け等の価格である2,300 円は、当社の一般株主に投資回収機会を提供する観点では一定の合理性があり、妥当性を欠くものとは認められないものの、一般株主に対し本公開買付けへの応募を積極的に推奨できる水準の価格に達しているとまでは認められないことから、株主の皆様に対して本公開買付けへ の応募を推奨することまではできず、本公開買付けに応募するか否かは株主の皆様のご判断に委ねることとしております。」
つまり、TOBには賛同するが、TOB価格が妥当とは思えないということです。このことから、伊藤忠商事はTOB価格を今後引き上げるのではないかということで、市場株価が上がっているということです。ただし、TOBを行う側としてもTOB価格を上げるということは、買収にかかるコストが増大するということを意味しますから、簡単にTOB価格を引き上げるということはありません。
ニチイ学館のMBO、コロワイドによる大戸屋の敵対的TOB、この伊藤忠商事の件は株価の動きなども含めて色々と勉強になる事例ですので、ブログでも時々あげて行きたいと思いますが、個人投資家の方も自分の投資銘柄がTOBの対象になった時にどう行動すべきか、これらの3事例をウォッチして、TOBの流れを理解するとよいと思います。