中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

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コクヨがぺんてるの経営陣刷新の意向を公表-今後が面白い

11月26日の日経新聞コクヨ社長の黒田社長が敵対的買収後にぺんてるの経営陣を刷新する(入れ替える)考えと書かれていました。

私がブログで経営陣はクビにする意向であろうと書いていましたが、当然と言えば当然のことかと思います。

一方で、従業員の中から優秀な人を抜擢すると書いてありました。普通に考えると、ぺんてるの役員は株式を売ると社長の怒りを買いサラリーマン人生がそこで終わりますが、部長課長含む一般従業員は、それほどの怒りを買うことはないはずなので、TOBに応じて下さい、そしてコクヨ支配下となったあかつきには皆様を幹部に抜擢しますとことかと想像します。

この記事の中で、コクヨぺんてる従業員への呼びかけが情報漏洩の教唆に当たるとぺんてるが声明を発表したと書かれていました。気になったので、調べてみました。

コクヨのホームページの最初の画面にぺんてる株式の従業員の皆様へという文章があり、その文章の下の方にぺんてるの従業員の想定質問とそれに対する回答が丁寧に準備されており、次のような内容が記載されています。

 

 Q.コクヨの子会社化とは何か?ぺんてるはどうなるのか?従業員へどんな影響があるか?

A.ぺんてるのブランド、ならびに従業員の雇用の継続を前提としています。経営陣と現場の間の信頼感を高め、風通しが良く、自由で果敢なチャレンジがしやすい組織風土作りに取り組みます。そのために、執行役員や幹部の方からの抜擢による経営陣の若返りに取り組みます。

Q.子会社化と聞くと乗っ取りや支配をイメージしてしまうが?

A.コクヨには乗っ取りや支配をするような考えは一切ございません。コクヨの子会社運営のポリシーは、子会社の自主性を尊重し、コクヨからの一方的な押し付けはせず、常に両社のオープンな対話を前提としている運営です。その実績として、インテリア事業のアクタス社やインドにおける文具事業のカムリン社等、多くの子会社の運営において自主性を尊重し、共感し合いながら成長を図っております。ぺんてるとの取り組みにおいても、両社による対話のもと、共に成長できる関係を築いてまいります。

Q.会社側からコクヨに売るな、という強圧的な指示があり困っている

A.ぺんてるのすべてのステークホルダーの共同利益の代表として、当社はぺんてる企業価値の核心である従業員の皆さまの自主的、経済合理的判断を無視するような強圧的な指示はハラスメント行為として受け止めており、そうした指示があるならば断固として抗議します。もしそのような場面があれば、会話や文面を下記相談窓口にご提出頂ければ、匿名において当社が責任を持って、取り組みを進めてまいりますので、どうぞご安心して情報をお寄せください。

日経新聞で問題であるとぺんてるが騒いでいるのは、3つ目のところかなと思います。しかし、これを読む限りですと、必ずしも営業秘密を持ちすことをコクヨは唆しているようには読めません。

営業秘密の無断持ち出しは、不正競争防止法等で従業員やコクヨも処罰されますが、そもそもコクヨが欲しいのは株式であって、営業秘密まで欲しがっているのではありません。営業秘密など買収後はコクヨのものになるのですし。

ところでコクヨ敵対的買収といった大胆な戦略を判断したなと思っていましたが、新聞記事に社長の顔が掲載されていたこともあり、コクヨの有報で株主構成等を見たところ、コクヨの大株主は黒田家であり、社長はオーナー一族なのですね。

2019年3月末の大株主状況では、第5位に黒田緑化財団 3.05%、第8位 黒田耕司氏1.60%で、会長、社長、副会長が黒田氏一族です。

サラリーマン社長であれば、自身のサラリーマンという立場を考えると、世間の批判を浴びる可能性のある敵対的買収という大胆な戦略は普通できないと思いますが、オーナーであれば一族や自分の信念に戻づいて大胆な戦略が出来るということの証かと思います。

ところでコクヨは政策保有株式が潤沢のようですね。オーナー企業であるが故に、自社のガバナンスは必ずしも目が行き届かないのかも知れません。コクヨ有価証券報告書コーポレートガバナンス報告なども見てみたいと思います。