中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

ゼネコン各社の2019年4-6月期決算纏めと今後の見通し

以前にゼネコン数社の決算を紹介しましたが、残りの主なゼネコンの2020年3月期の第1四半期の決算が出揃いましたので、紹介します。

以下は前年同期からの増減になります。また、括弧の数値は今期の予想数値に対する進捗達成率を示します。

          売上高      営業利益       経常利益 

  • 熊谷組  +11%(21%) + 80%(13%) + 90%(14%)
  • 五洋建設 +24%(25%) + 25%(27%) + 20%(28%) 
  • 安藤ハザマ△ 2%(17%) +  4%( 9%) +  0%( 9%)
  • 戸田建設 +33%(23%) +138%(27%) +103%(30%)
  • 鹿島建設 + 3%(21%) △ 36%(16%) △ 33%(27%)
  • 三井住友 +13%(21%) +  4%(17%) +  6%(18%)
  • 大林組  + 2%(22%) + 10%(17%) +  8%(18%)
  • 前田道路 + 3%(22%) △  2%(13%) △  2%(14%)

各社のFY19(2020年3月期通期)の予想を見ると次のとおりです。    

        売上高   営業利益    経常利益   純利益 

  • 熊谷組  +10%   + 6%   + 5%   + 53%
  • 五洋建設 + 7%   + 4%   +11%   +  3%
  • 安藤ハザマ+16%   +27%   +32%   +128%
  • 戸田建設 + 2%   △11%   △13%   △ 11%
  • 鹿島建設 + 3%   △17%   △22%   △ 18%
  • 三井住友 + 3%   △ 9%   △13%   △ 15%
  • 大林組  △ 1%   △ 4%   △ 4%   △  3%
  • 前田道路 + 2%   + 5%   + 4%   + 59%

大林組を除き増収予想ですが、営業利益については、各社違いが見られます。

各社の決算短信を読むと、その中で熊谷組が比較わかりやすく今後の見通しを掲載しています。一部抜粋すると次のとおりです。

熊谷組の1Q決算短信から)「建設業界におきましては、企業の建設投資は企業収益の改善や成長分野への対応等を背景に増加を続け、公共投資も2019年度予算には、消費税増税に対応した臨時・特別予算措置として「防災・減災、国土強靭化対策」等が盛り込まれるなど、事業環境は引き続き良好な状況で推移すると思われます。(途中省略)現下の建設市場は、激甚化する自然災害に備えた防災・減災対策事業や高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化対策事業の拡大に加え、2020年東京オリンピックパラリンピック開催に伴う関連投資など、中期的には一定の需要が見込まれる環境にあります。」

私見ですが、ゼネコン業界の今後の見通しとしては、当面は好調が続くが、人件費の高騰による利益へのマイナス影響リスクがあり、大手ゼネコンは、技術獲得のM&A(省人化)を検討するなどコスト削減が課題といったところかと思います。また、長い目で見ると国内市場はシュリンクするので、海外のM&Aも視野に入れるというところかと思います。

さて、話は変わりますが、私が気になるのは、安藤ハザマです。同社はアクティビストである香港の投資ファンドであるオアシスが数パーセントの株式を保有しています。

安藤ハザマの進捗率が極めて低い点がとても気になります。第2四半期以降で大案件の受注があるなどない限り、単純に数値だけ見ると、今後、下方修正をする可能性もあるように想像します。しかし、一方、政府の国土強靭化対策の中で、安藤ハザマの強みはダム・トンネなので今後プラスの期待もできます。

安藤ハザマは、潤沢なキャッシュ(政策保有株式含む)を保有しています。2019年3月末の有報で私が試算した結果は、ネットキャッシュが1,410億円で、総資産の40%になります。

一方で、過去5年の配当性向を見ると、19年3月期の69.4%を除くと、10%台~23%と低いですので、短期的には、保有意義のない政策保有株式を全株売却して、株主還元を増やすことを期待します。