経済産業省のCGS研究会(第2期)でこれまで議論が進められてきた「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」が6月28日に策定・公表されました。
2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂は、単体としての在り方に重点が置かれていましたが、今回の実務指針(ガイドライン)はグループとしてのガバナンスの在り方について規定されています。
その中で、上場子会社に対するガバナンスのあり方も規定されています。
2018年度に支配株主がいる上場企業は628社で、親会社が上場企業である上場子会社は311社とのことですが、このガイドラインでは、上場子会社のあり方について規定されています。上場子会社は欧米では極めて少ないところ、日本では上場子会社の数が多いところ、上場企業でありながら、少数株主の意見が経営に反映されないことが批判を受けているところです。
ガイドラインでは、親会社における対応の在り方と上場子会社におけるガバナンス体制のあり方について次のとおり規定されています。
<親会社における対応の在り方>
- 上場子会社として維持することが最適であるか定期的に点検するととともに、合理的理由や上場子会社のガバナンス体制の実効性確保について取締役会で審議し、投資家に情報開示をする
<上場子会社におけるガバナンス体制の在り方>
- 上場子会社の独立社外取締役は、親会社からの独立性も求められる
- 上場子会社の独立社外取締役は、10年以内に親会社に所属していた者を選任しないこととすべき
- 一般株主の利益を保護するという重要役割を担える人物であるかを確認の上、指名・選任が行われるべき
- 取締役会における独立社外取締役の比率を高めること(1/3以上や過半数等)を目指すことが基本。これが直ちに困難な場合にも、重要な利益相反取引については、独立社外取締役(又は独立社外監査役)を中心とした委員会で審議・検討を行う仕組みを導入することを検討すべき
上場の意義は資本市場からの資金調達ですが、ガイドラインによれば、企業アンケート結果として、上場企業としてのブランドやステータス維持などをあげる企業が多く、資金調達目的は少数とのことです。
私は、これに加え、上場子会社は親会社の幹部クラス社員の受け入れとしての要素も強いのではと考えます。
親会社で役員になれず、部長クラスで昇格がとまった一般従業員が、役員に昇格した同期や後輩に不満を持たないよう、子会社の中でも上場している子会社の役員又は理事ななどの肩書きを与えて不満を解消させるということです。
しかし、資本市場の論理から、このようなくだらない理由が上場子会社を有する意義として認められるかと言えばもはや難しいでしょう。
上場維持するということは多大なコストがかかります。上場先の証券取引所に費用を払うほか、IRや決算、総会準備などの社内の人件費がかなりの額になります。上場廃止すればIR、決算関連業務、総会関連業務にかかわる人員は全て不要になり、リストラできるのです。
役員になれず出世から外れた一般従業員の受け入れ先とする、単にブランドを維持する(意味不明です)という理由は、投資家には全く説明はつかないと思います。
結局のところ、このガイドラインでは経済産業省は上場子会社の非上場化を求めていいることと思います。
いずれにせよ上場子会社を持つ場合には一定の対応が求められることになります。
このガイドラインでは、事業ポートフォリオの見直しについても詳細な内容が規定がされました。営業利益率の低い事業を持つ複数事業セグメントのある企業は、不採算事業の見直しについて、ガイドラインを根拠に今後は、機関投資家から厳しく問われるケースが増えます。
今週末はこれについて紹介したいと思います。