本年6月以降に有価証券報告書で改正される各社の役員報酬を理解できるよう、役員報酬制度について少し勉強をしていますが、約1ヵ月前の4月28日の日本経済新聞でESG評価を役員報酬を算定する基準に組み入れる企業が世界的に広がってきたとの記事がありました。
ESGを重視する投資家が増えているということで、報酬にESG目標を組み合わせる主な企業としてオムロン、コニカミノルタ、日本航空、フェイスブック、ロイヤル・ダッチ・シェル、ユニリーバなどがあげられていました。
海外企業は詳細を調べるのが少し面倒なので、オムロン、コニカミノルタの報酬について、各社のコーポレートガバナンス報告書でざっと眺めてみました。
役員報酬の開示は表現が細かいので、大まかな内容のみごく簡単に紹介します。
オムロン:
業績連動部分の株式報酬は、中期経営計画に基づき設定した売上高、EPS、ROEの目標値に対する達成度、および第三者機関の調査に基づくサステナビリティ評価を組み入れる(サステナビリティ評価 Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)に基づく評価。DJSIは長期的な株主価値向上の観点から、企業を経済・環境・社会の3つの側面で統合的に評価・選定するESGインデックス)
執行役については、「固定報酬」の他、年度経営計画のグループ業績及び担当する事業業績を反映する「年度業績連動金銭報酬」と中期経営計画の業績達成度を反映するとともに中期の株主価値向上に連動する「中期業績連動株式報酬」で構成。年度業績目標は、業績に関わる重要な連結経営指標(営業利益・営業利益率・ROA等)とし、執行役の重点施策にはESG(環境・社会・ガバナンス)等の非財務指標に関わる取組みを含める。
とりあえず、ESGを業績評価の指標に入れているようです。
さて、ここからが問題ですが、報酬の全体割合でどの程度がESGが占めるかです。これは私の推測ですが、恐らくESGの評価が報酬に占める割合は非常に小さいのではないでしょうか。
ESGの取組みでお給料が大きく左右されるとなると役員は困りますよね。学校の勉強で、国語・算数・英語(=会社でいう本業)の成績が悪いけど、道徳(=ESG)の成績が良ければ、それが大いに評価され偏差値の高い高校に入れるというようなものです。
しかし、ESGという言葉は何かにつけて開示するのは重要ではあります。
最近流行りのSDGsもそうです。そういう言葉を開示資料に入れていることが評価に大きく関連するのです。どういうことかというと、ESGインデックスに組み入れられるためには、ESG等の文言を開示資料に入れておくことが有用ということです。
ということで、ESGについて、世間に自慢できるほど真剣に取り組むつもりなどなくとも、ひとまず報酬について、顧客満足評価、環境評価などを変動報酬の指標に入れていますというこにしておけば、この会社はESGに取り組んでいるという良い印象を与えますので、大事です。
勿論、入れることで投資家からは非財務情報のエンゲージメントの際に「この内容は何?」ということは聞かれる可能性はありますので、適当にお茶を濁した回答程度は出来るようにしておく必要はあります。
もっともアナリストは決算数値にしか興味なく、役員報酬とESGなど関心ゼロですので、アナリストとの面談しかしていない会社には関係のない話かとは思います。