中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

外資規制の強化の動き

5月11日の日本経済新聞で、財務省経産省がIT分野での外資による投資規制を強化する方向の動きとの報道がありました。

米欧と歩調を併せてサイバーセキュリティーを高めるとのことです。新聞報道によれば、追加される主な業種として、次があげられています。

  • 半導体モリーメディア製造
  • 集積回路製造
  • 光ディスクや磁気ディスクなど製造
  • 携帯出電話製造
  • パソコン製造
  • 有線通信機器製造など

 対内投資規制とは、日本の場合、外為法で規制されているもので、一定の種の企業を海外資本が10%以上の株式を取得するときに事前に国の認可を得る必要があるというものです。

これに反して取得した場合、取得者に対して株式売却命令が出来ます。欧米でも中国企業による投資規制を念頭に投資規制の強化の動きにあります。海外と日本の投資規制の詳細比較はしておりませんが、日本の場合には欧米の投資規制よりかなり緩いといことが言われております。

今回はIT分野を対象に加えるということですが、それ以外の分野に関する投資規制について、経産省はどのように考えているのか知りたいところです。

最近、買収防衛策を廃止する企業がとても増えています。

背景は、買収防衛策について、海外機関投資家の反対に加えて、国内機関投資の反対が強くなってきたことがあります。本年6月の株主総会で更新期限を迎える企業の中、私が認識する限りで、現時点で少なくとも35社ほどが廃止しています。

 この場合、何が今後起こるかというと、海外企業や海外の投資ファンドによる敵対的買収やアクティビズムが増えることが想像されます。

経済産業省の方針としては、企業は、事業ポートフォリオを見直し、不採算事業は売却して、利益を向上させ、ひいては株価向上を求めているところです。株価が上がれば、買収リスクも低くなるであろうというところかと思います。

しかし、事業ポートフォリオの見直し、つまり事業の売却・整理は、一定の時間を要するものです。事業は人が行うものであり、収益が悪いから即座に人ごと売却すると簡単にパッパと判断できるものではありません。

とすれば一定の検討期間を企業に与え、その間は外資投資ファンドなどにより日本企業が翻弄されることのないように政府は法整備などを行うことを検討する必要があるようにも思えます。

そうしないと政策保有株式の縮減や買収防衛策の廃止の中で、投資ファンドが株価向上施策を強引に提案することで、企業の株価は向上しますが、整理された事業はどこかが引き取るわけですので、事業自体が衰退するものであれば、引き取った企業の株価はかえって下がることにもなりかねません。

とすると日本市場全体として株価がどうなるかということを考えると必ずしも明るい話にはならないような気もします。