中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス・アドバイザー / 長期での中小型株の割安株投資情報

最近のコーポレートガバナンスと資本市場の動向を踏まえ、上場企業実務の視点から中長期での企業価値向上に役立つ情報分析・発信をしていきます。個人投資家のコーポレートガバナンス力の向上による「意思のある投資」に役立つ情報発信もしています。また長期での割安株投資の情報も

CEOのしっかりとした後継者計画が必要な企業は?

コーポレートガバナンス改革において、上場企業は社長・CEOの後継者計画を指名委員会、取締役会を関与させて策定・監督することが求められています。

しかしながら、まだ計画の策定中という企業も多く、そもそもどうやって策定すべきか迷っている企業も多いと思います。コーポレートガバナンス報告書においても、後継者計画について規定しているコーポレートガバナンス・コードの原則4-3①のコンプライ率(「遵守しています」という率)は約69%と低い数値になっています。

 本日考えるべきことは、そもそも明文化したきちんとした後継者計画は、全ての上場企業に果たして必要なものなのでしょうかということです。

 この点は、何故、後継者計画が必要であるのか、経産省のCGSガイドラインでの記載事項を見る必要があります。

CGSガイドラインの33ページの「4..1社長・CEOの指名と後継者計画」に明確に書かれています。その内容を紹介します。

  •  社長・CEOは、企業経営の舵取りを行い、その持続的成長と中長期的な企業価値向上を果たす上で中心的役割を果たす。誰が経営トップになるかにより、企業価値は大きく左右される。経営トップの交代と後継者の指名は企業経営における最も重要な意思決定の1つ
  • 日本経済がグローバル化やデジタル化等に伴い「革命的」とも言える経営環境の非連続で破壊的な変化の進む今の時代においては、経営課題は複雑化し、既存路線の単なる継続や延長線上の対応では足りず、慣性の力に抗して大胆な経営改革を行うことも求められる。こうした経営改革はトップダウンで行うほかなく、「トップの経営力」が成否の鍵を握る
  • こういうことは、特にグローバル展開の進む企業において顕著であり、経営トップの役割は一層重要性を増し、同時に、そのような役割を担うことのできる優れた後継者を確保することの重要性も増している。

 後継者計画の策定・運用については、CGSガイドラインの別紙4にかなりのページを割いて書かれています。

 さて、上の内容でいっていることは、社長・CEOは経営の舵取りを行うところ、既存路線の継続や延長だけでは足りない業界においては、後任のCEOはきちんとした後継者計画に沿って適切な能力ある者を選任せよというものと思います。

 ここから、後継者計画の準備が必須な企業はどういう企業かといいますと、技術変化等の経営環境の変化の激しい業界にある企業とオーナーが社長を努める企業の2つであると思います。詳細は次のとおりです。

 

経営環境の変化の激しい業界にある企業

  • これは前述のCGSガイドラインで規定されるとおりです。不連続な変化の起こる業界においては、CEOの先を読む力、その上での大胆な投資等の経営判断が必要とされます。このため、CEOには高い能力と経験が求められるのであり、そういうCEOを育成して、選任することが必要になります。

オーナー社長の企業

  • 前者のケースと異なりオーナー企業ではCEOは超重要です。オーナー企業においては、CEOの権限があまりに強大で、それ以外の役員は、会社法上の役員とっいっても、その実体においては、多くの案件についてCOEにお伺いをてたるケースが多いかと思います。
  • となると、役員といいながらも、その実態においては部長クラスの従業員と変わらないケースも多く、こういう「なんちゃって役員」からCEOを選任するとなると企業の存続が危うくなります。勿論、オーナ企業であれば、息子や娘婿が次のCEOになるケースも多いとは思いますが、今の時代、株式の数パーセント程度しかもっていないオーナー一族というだけでCEOが勤まるはずもなく、サラリーマン社長がCEOになるケースも今後は多いと思います。

  一方、上のいずれにも当らない企業のサラリーマン社長の企業には、それほど精緻な後継者計画が必須とまでは言えないように私は思います。

経営環境が大きく変化することのない業界では、サラリーマン社長は数年で定期的に交代するという前提でしっかりとした堅固な組織体制が出来ており、もし、現CEOの好き嫌いで、CEOが選任されたとしても、そのCEOは一定の能力があり、かつ、組織もしっかりしているので、現実には大きな問題は起きることはないと思います。

オーナー社長等の有名経営者が退任すると株価が下がるケースもありますが、それ以外の多くの企業では、サラリーマン社長が交代しても株価が大きく変化することはないかと思います。

それはCEOの後継者が誰であるのかにさほど資本市場は敏感になっていないことの証でもあります。

 従って、まとめますと、経営環境の変化の激しい企業やオーナー社長の企業の後継者が誰であるかは株価に影響を与えるので、機関投資家は、その企業の後継者計画に関心がありますので、これらの企業はきちんと後継者計画を策定し、機関投資家に納得していただく必要があります。